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技術で勝って、商売で負けていませんか?

F1レースの変化に見る時代背景

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f1.jpeg世界最高峰の自動車レースであるF1(フォーミュラ1)は、英国で始まったのですが、その歴史は1950年まで溯るということは、あまり知られていないのかもしれません。

このF1レースに今年からホンダが7年ぶりに復帰を果たしました。ホンダが他の好調な国内自動車メーカーと比べて元気がないことはまたの機会に触れるとして、今日はF1自体について書いてみたいと思います。


ホンダが一度は参戦への費用負担を重荷に感じてF1から撤退したのにも関わらず、再び復帰してきたことには目的があります。

それはF1に参戦することによって、自社のエンジンを中心とした技術を、高いレベルの最先端の水準まで引き上げることができるからです。

理由は以前とは違いF1レースに出場する車両のエンジンに求められる要件が、すっかり変貌したからです。

具体的には、F1への参戦車両の基準が2014年から環境性能重視になったことです。それによって、いかに小さいエンジンで効率的に大きな馬力を出すことができるかが、レースで勝利するために必要となり、同時に燃料使用量制限をクリアできる高い燃費性能が求められます。

車両にはダウンサイジングという技術が採用され、小さなエンジンに取り付ける過給器によって700馬力という大きなパワーを引き出すようにします。

レース車両のあらゆる走行動作から得られる熱も逃さずキャッチして、効率的に加速するために漏れなく使うのです。

これら一連のF1参戦カーがレースに勝つために求められる、時代最先端の技術の開発や試行を繰り返すことによって、結局は市販車向け製造にも得られる知見、ノウハウが引き継がれて役に立っていく、という訳です。

ホンダが昔みたいにF1レースで表彰台の常連になる日までは、まだしばらく時間がかかるかもしれませんが、もし遠からず再びスポットライトを浴びる日がやってくるのなら、自動車製造という実業の方でも、再び世界の上位を伺う革新力あふれる国産メーカーとして、存分に存在感を発揮することでしょう。

このように、以前はとにかく化け物のようなエンジンを開発して、華や派手さだけを競ったF1レースという舞台でさえ、環境技術を競わせる時代に入ったことが筆者にとても強い示唆を与えてくれたのでした。

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