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プログラミングでメシが食えるか!?

GIGAZINEの記事を読んで考えたこと:業務命令?

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Twitterでも話題になっていましたが、GIGAZINEの「【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します」の記事の話題です。他の方が書いた内容に関する評論をするのは好きでないので、単に私がこの記事をきっかけに考えたことを書きます。

考えさせられたポイントはいくつかあるのですが、一番のキーワードは「業務命令」です。

業務命令というのは、労務契約上の会社側の権利な訳ですが、その意味合いは幅が広く、それこそ制服の着用というようなレベルから、上司・リーダーの考え方に従わせるようなレベルまで、幅があります。基本的には、労働者側は正当な理由がある場合にはこれに従う必要がありますし、従わなければ懲戒処分となることもあります。
考えさせられるのは、いわゆる「決まり」に従うかどうかということではなく、「思考の強制」の部分です。単純労働のような仕事であれば、決まり通りに仕事をさせることで一定の成果が得られるわけですが、クリエイティブな仕事では、本人のやる気によって成果は大きく変わります。やる気は業務命令ではコントロールできません。リーダーがいくら「やる気を出せ!」と怒鳴ったところで、メンバーのやる気はまず出ないでしょう。

GIGAZINEの記事がどうのこうの、ということではなく、やる気を出させるためにはどうすればよいか、ということの難しさを、この記事を読んでいて、あらためて感じたわけです。

この記事を書いた方の本心はもちろん私にはわからないのですが、リーダーとしてメンバーに欲していることという意味では、非常に的確に書かれていると思います。「仕事もプライベートも分け隔てなく、みんなで良い仕事をしよう!」という熱い思いが書かれています。やる気がないメンバーのやる気を出させるよりも、こうやってリーダーの熱い思いを語って、やる気溢れるメンバーに来てもらうというのも一つの手でしょう。

でも、そういう「自発的に動きたい人」にとって「業務命令」という表現があると、結局「指示に従わせられるのか?」というイメージを持ってしまうかも知れないわけで、実際、私は指示されるのがとても嫌いな人間なのですが、この記事をつらつらと読みながら、真っ先に引っかかったのが「業務命令」の文字だった訳です。

私が今の会社で入社3年目で事業部を立ち上げたのも、ソフト開発関連の事業を選択したのも、製品開発販売に取り組んでいるのも、いずれも「指示通りにやりたくなかった」からです。自分が得意なことで勝負したいからです。やりたい仕事をさせてもらう代わりに会社側あるいはオーナーに対しては「ノルマを上回る」という約束をしているわけで、極論すれば、命令されているのは「きちんと稼げ!」ということだけです。

私が命令されるのが嫌なので、基本的にはメンバーにも命令はしたくありません。従って、私はメンバーに「業務命令だから私の言うとおりにしろ!」と言ったことはありません。当社のメンバーには様々なタイプがいますが、基本的には自分の理想を考えられるメンバーが多く、メンバー同士で完全に意見が一致しているわけではありませんが、考え方が近いメンバーたちによってチームが形成され、自主性を尊重しながら仕事をしています。そういうメンバーたちに「業務命令だ!」と言うのはやる気を削ぐだけであり、むしろ「君たちならできる。任せた!」と言った方がやる気になるわけです。

もちろん、組織・会社によって状況が違うわけですし、仕事の内容によっても全くやり方は違うのですが、私は自分自身がそういうやり方を好み、そういうやり方が好きなメンバーたち(こんな連中こんな連中)が集まった、いやいや、そういうメンバーたちが集まってくれるように私が動いてきたから、今の状態になっていると思っています。表向きは格好良いことを書いてますが、実際は業績がいまいちであったり、チャレンジがなかなか上手くいかないこともたくさんある状態です。しかし、私も「こうすれば絶対に儲かる」という答えは知りませんし、命令したとおりにやったところで上手くいくとは限りませんから、メンバーたちと一緒に試行錯誤したほうが良いということであり、私の意見もいいますが、メンバーの意見も尊重したいのです。私同様、メンバーたちも一人一人思いの違いはあるでしょうけれど、一度きりの人生をかけて仕事に取り組んでいるわけですから。

会社側と労働者側という、ある意味全く逆の立場ではありますが、目標に向かって突き進むという面では思いをともにする関係でもあります。私の場合、雇われ社長という立場ですので、ますます両方の思いが複雑に絡み合っているわけですが。。いずれにしても、今の時代、楽をして簡単に稼げる時代ではありませんから、やっぱり程度の差はあれ、本気で取り組まないとうまくいきません。本気は強制しても出せないもの、というのが私の考えです。本気にさせるのがリーダーの大切な役目だと考えています。

私がリーダーはこうあるべき、という思いを書いた「ドジっ娘リーダー奮闘記:記事書籍」を見ていただくと、「強制する」というような行動は勧めていません。「任せる」「その気にさせる」ことを書いてます。10人集まって、10人分の結果しか出ないのでは組織の価値はない、といわれています。指示通りにやるのでは、最大で10人分でしょう。メンバー一人一人が自発的に創意工夫してがんばることにより、相乗効果が生まれて、大きな成果に結びつく、これが組織の理想だと思っています。当社もまだまだですが、そんな組織を目指すという思いをあらためて考えるきっかけになった、刺激的な記事でした。

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