グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育(第2回)

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この春(2018年)まで中学校で教諭をされておられた望月陽一郎 先生に教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺ってきました。今回からは、小学校で 2020 年から必修となるプログラミング教育が教育にどのような影響を与えていくのか、等をお聴きしたいと思います。

【望月陽一郎先生・略歴】
元中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経験されています。

〇小学校で 2020年から必修となるプログラミング教育

-先日、勤務先の中学校を退職されて、今は子どもたちにプログラミングを教えられているとのことですが、もう少し詳しくおしえていただけますか。

望月先生:現在民間の塾で子供たちにプログラミングを教えています。以前は先生方にプログラミングの研修をしたり、理科の授業でプログラミング活動を取り入れた実践をしたりした経験があります。

教育版 レゴ マインドストーム EV3 基本セット【ソフトウェア付】 45544 ※注)学生/教育機関向け限定販売条件付 ロボティクス E31-7700 【国内正規品】

レゴロボット(https://education.lego.com/ja-jp/product/mindstorms-ev3 参照)を使った、少人数のコースです。

-少人数でプログラミングを学べるのはいいですね。一斉授業だと、どうしても講師の目が届きにくくなるので。

望月先生:こういったロボットを使うプログラミングの場合、組み立て方によりうまく動作しない場合もあるので、ソフトだけでなくハードに対してもある程度経験が必要となります。

-教育版のレゴの話は、教育関係者のコミュニティでよく耳にするようになりました。アイコンを並べれば、簡単なプログラミングができるとのこと。レゴはプログラミングを通して、子どもたちの考える力・思考力を育てようとするツールなのかな、と感じています。

さて、いよいよ2020年から小学校でプログラミング教育が必修になりますね。読者の皆様に向けて、概略のご説明をお願いできますか。

望月先生:まず学習指導要領で、どう変わるのかを見ると、

  • 新学習指導要領(平成29年3月31日公示)から。
  • 中学校では旧学習指導要領から必修、高等学校では選択により。
  • 小→中→高とつながるスタートに。 などになります。

  現行学習指導要領     → 新学習指導要領

  小学校

  ・必修なし        → すべての教科等で必修

  中学校

  ・技術家庭科(計測・制御)→ 双方向性のあるプログラミング追加

  高等学校

  ・選択必履修(情報の科学)→ 情報Ⅰを必修

中学校では、現学習指導要領(2000年度~)ですでに必修、高等学校では、選択によりプログラミングを含めた内容を履修している子供たちがいます。実際授業では、中学生の子供たちが技術・家庭科でプログラミングを行っていました。

小学校で必修化、高等学校で必修化されることにより、小学校から段階的にプログラミングを学ぶようになります。しかしプログラミング教育については移行措置(事前に前倒しして取り組む内容)に入らなかったため、2020年から実施される予定です。

  ・道徳の教科化→前倒し(30,31年度から)

  ・外国語科→前倒し(30,31年度から)

  ・プログラミング教育(移行措置に入らず)

すでに移行措置としていくつかの項目が前倒しで行われています。

【例】

  • 道徳の教科化
  • 外国語科(小5・6 外国語活動→外国語科、小3・4 なし→外国語活動)

プログラミング教育は、移行措置に入らなかったため、まだ実施しなくてもよいとなってしまっています。

-移行措置に入らなかったのですね。

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画像出典:移行期間中の授業時数調査【外国語教育】(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/__icsFiles/afieldfile/2018/05/08/1404606.pdf
)を加工して作成

望月先生:文部科学省の移行措置実施時間数調査結果でも、移行措置に示された時間数以上に外国語科・外国語活動の授業を実施している学校が半数くらいあります。つまり+アルファの授業をしているので先生方は大変だと思います。

-先生方は教科だけでなく校務や部活の顧問など様々なお仕事をかかえていらっしゃるのに、「+アルファの授業をしている」というのは非常にキツイ状況のように思えます。もちろん、プログラミングの取り組みなどが推進されているなど、メリットはあるかと思うのですが。

望月先生:その反面、プログラミング教育への取組は遅れています。

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画像出典:図表5 プログラミング教育の取組状況(地域別ステージ分類)(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/22/1370024_1.pdf )を加工して作成

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画像出典:図表3 取り組み状況のステージ分類(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/22/1370024_1.pdf )を加工して作成

文部科学省が調査した全国の教育委員会へのアンケート結果では、地域別にグラフで示されています。私の住んでいる九州などは取組がまだまだで、関東・近畿など都会部で進んでいる感じがします。

分類でいうとステージ0「特に取組をしていない(プログラミング教育の情報を収集している、もしくは特に取組はしていない)」が九州では64%。移行措置に入っている外国語科の取組とはかなり違います。

〇プログラミング教育必修化のねらい

 ・小学校プログラミング教育の手引き(H30.3)

 ・未来の学びコンソーシアム(H30.7)

 ・ICT CONEECT21(H30.7)

望月先生:30年3月末に文部科学省から「小学校プログラミング教育の手引き(第一版)」が公開されました。これは4月からの新年度の実践に間に合わせるためだと思われます。

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画像出典:小学校プログラミング教育の手引(第一版)の表紙(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/1403192.htm )を加工して作成

また7月にたてつづけに「未来の学びコンソーシアム小校プログラミ教育必修化に向けて」パンフレット、「ICT CONEECT21 小学校プログラミング教育導入支援ハンドブック」が公開されました。

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画像出典:「未来の学びコンソーシアム小校プログラミ教育必修化に向けて」パンフレット表紙(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1406866.htm )を加工して作成

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画像出典:「ICT CONEECT21 小学校プログラミング教育導入支援ハンドブック」パンフレット表紙(ICT CONNECT 21)
https://ictconnect21.jp/news_180712_003/ )を加工して作成

それだけ小学校プログラミング教育について注目が集まっている、実践が望まれているということでもあります。

プログラミング教育必修化のねらいを見ていくと、

・中央教育審議会の議論(小学校プログラミング教育の手引きより)

情報化の進展により社会や人々の生活が大きく変化し、将来の予測が難しい社会においては、情報や情報技術を主体的に活用していく力や、情報技術を手段として活用していく力が重要であると指摘されています。さらに、子供たちが将来どのような職業に就くとしても、「プログラミング的思考」などを育んでいくことが必要であり、そのため、小・中・高等学校を通じて、プログラミング教育の実施を、子供たちの発達の段階に応じて位置付けていくことが求められると指摘しています。

・「未来の学びコンソーシアム小学校プログラミング教育必修化に向けて」

我が国の競争力を左右するのは何か。それは「IT力」です。ヨーロッパでは、「IT力」が、若者が労働市場に入るために必要不可欠な要素であると認識されています。現に、90%の職業が、少なくとも基礎的なITスキルを必要としていると言われており、多くの国や地域が学校教育のカリキュラムの一環としてプログラミングを導入しています。一方で日本では、2020 年までに37 万人ものIT 人材が不足すると言われています。今後、国際社会において「IT力」をめぐる競争が激化することが予測され、子供の頃から「IT力」を育成して裾野を広げておかなければ勝ち抜くことはできません。そのような思いから、小学校におけるプログラミング教育の必修化は実現されたのです。

とあり、必修化のねらいについて違いがあるのがわかりますが、これはそれぞれの立ち位置の違いからと思われます。実際に授業をする先生方は、こういった違いをどう捉えていくか難しく感じるかもしれません。

-丁寧にご解説くださり、大変ありがとうございました。

〇micro:bit サンプルプログラミング

-前回、望月先生はプログラミング教育講座で使用されているmicro:bitについて、お話しくださいました。小学校でのプログラミング必修化とも関連性が出てくるのではないかと考えています。micro:bitについても、もう少し詳しくおしえていただけますか。

micro:bit サンプルプログラミング

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望月先生:micro:bitは、手のひらサイズの基盤に

  • 光センサー、温度センサー、磁気センサー、傾きセンサーという入力
  • LED、音、電流という出力

を持っているマイクロコンピュータです。

イギリスの11~12歳のすべての子供たちに無料配布されたというニュースで話題になりました。

【参考】

▼BBCのMicro:bitがイギリスのすべての11歳と12歳の子どもたちに無料配布される
http://makezine.jp/blog/2015/08/new-bbc-microbit-is-free-preteens-uk.html

そこで私も手に入れて、使ってみてとても可能性があると感じました。

-望月先生は「micro:bit を学校で教材として採用するとよいのでは」とおっしゃっていました。その理由・根拠がありましたら、教えてくださいますか。

  • 安価である。
  • ブラウザだけでプログラミングできる。
  • ブロックプログラミング
  • オプションパーツ

望月先生:私がmicro:bit を学校で教材として採用するとよいのでは、という理由は、

  • スターターキットでも3.000円ほどである。
  • 特別なツールを必要とせずに、Microsoftが提供しているサイトにアクセスするだけでプログラミングできる。
  • コードではなく、ブロックを組み合わせるだけでプログラミングできる。進んでいくとJavaScriptで複雑なプログラミングができる。
  • micro:bitに接続してセンサー等を拡張するオプションパーツが販売されているので、応用していくことができる。

など、学校の授業に適しているところが多いからです。

実際のプログラミング画面は、

 https://makecode.microbit.org/

にアクセスして行います。

このサイトにアクセスするか、専用アプリ(Win10のみ使用可)で作成したプログラムを、USB接続したmicro:bit にデータ保存することで動作させます。事前にシミュレータで確認も可能です。

microbit-makecode.png

https://makecode.microbit.org/ )画面

望月先生:右にある「作成画面」でプログラミングしますが、この画面をJavaScript画面に切り替えることができます。また、作成したプログラムをダウンロードしてローカルに保存したり、保存したプログラムをファイル読込して再編集したりすることもできます。

-それでは、次回以降、先生が作成されたサンプルプログラムを使って、ご説明していただくことは可能でしょうか。その方が読者の皆様にわかりやすいかな、と思います。

望月先生:では次回から自作サンプルプログラミング集をもとに説明していきましょう。

おわりに

今回は望月先生のスライドを見せていただき、それをもとに内容の要点を表示するなど、いつもと違う試みをしました。いかがでしたでしょうか。

夏休みでお忙しい中、小学校でのプログラミング必修化についてなどわかりやすく解説してくださった望月先生と、この記事を読んでくださっている読者の皆様に大変感謝しています。今回もお読みくださり、ありがとうございます。

第1回目の記事内で紹介されている「micro:bitを使った小学校プログラミング教育講座」は、8月20日にも第2回が大分市情報学習センターで行われるそうです。関心がある方はぜひ。

>>「micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育(第3回)」(9月15日公開予定)につづく

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