グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

【改訂版】不登校と発達障害 -キャリアカウンセラー・荒尾俊樹さんに伺いました-

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はじめに

もしお子さんが不登校になったら・・・。家族や担任の先生等を含むまわりの人たちは「この子の将来のために、今、私はどのようにしたら良いのだろう」と考え、悩み、戸惑われることがあるのではないかと思います。

もしお子さんの発達に凸凹が大きくある(なんらかの発達障害がある)場合は、不登校と発達障害の関係性についても知っておいた方が良いのではないか、と考えました。

たとえば環境への不安が大きかったり自分への自信をなくしたりして不登校になっている場合と、なんらかの発達障がいが影響して環境に対応できず不登校になっている場合では、対応が変わってきそうだからです。

お子さんの将来のために、最善の対応をするにはどうしたらよいのか。

実際に不登校児や発達障害児・者の支援をされてきたキャリアカウンセラー荒尾俊樹さんに、発達障がいがあるお子さんが不登校になったときの支援・対応方法を伺いました。

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筆者 :荒尾 俊樹 キャリアカウンセラー 
NPOの職員として発達障害や不登校の支援に携わっている。

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荒尾さんがまとめてくださった以下の点を意識しながらお読みただきますと、さらに理解が深まると思います。

  1. そもそも「発達障害」とは何なのか
  2. 発達に特性のある子どもが不登校になったとき、まず気をつけないといけない点
  3. 将来の見通し(将来はどうするのか)

以下、荒尾さんの解説です。

【不登校と発達障害】

発達障害とは

日本における発達障害の定義は発達障害者支援法によって定められています。

・発達障害者支援法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO167.html

基本的には、先天的な脳機能の障害であり、低年齢において発現するものを言います。

主に、対人関係の苦手さと強いこだわり持つ、自閉スペクトラム症(ASD)、多動性・衝動性・不注意などを特徴とする注意欠陥多動性障害(ADHD)、読む・書く・計算するなどの能力が知的発達に比べ極端に苦手な特異的学習障害(LD)があります。

診断は、発達の特性を持っていること、それに加え社会生活を送るうえでの困難が想定される場合に出されます。

近年は不登校の要因として発達障害の可能性を指摘する声もあります。

発達障害の子どもは、集団生活に適応することが苦手であることが多く、結果として不登校になりやすい場合があります。

もちろん全ての不登校の子どもが発達障害というわけではありません。

また発達の特性を持っていても障害※1にならない人たちもいます。

発達に特性のある子どもの不登校支援

発達に特性のある子どもが不登校になったとき、まず気をつけないといけない点としては、不登校になるまでの過程で多大なストレスを受けてきた可能性が高いということです。

いわゆる定型発達の人たちとは異なる認知特性を持っているため、一般的な価値観では特に問題と感じないことでも、本人にとっては非常に辛く苦しい体験になってしまっていることがあります。そして、その辛く苦しいと感じていることが周りに理解されないことで自尊心の低下や孤立感を強めてしまうことがあります。

また、視覚優位な傾向がある場合、いじめなどの経験が場面記憶として強く残る場合があり、将来にわたりフラッシュバックを抱えるリスクにもなります。

発達の特性への理解なく学校への登校を刺激することは、いわゆる二次的な問題(二次障害)を抱えてしまう原因にもなりかねないため、そのような支援は行わないほうが良いでしょう。

学校側に発達の特性を理解してもらい本人が安心して学ぶことのできる適切な環境を作っていくことが必要ですが、現実的に難しい場合は、学校外の学び成長の場を検討することも、ひとつの選択肢になります。

将来の見通しは?

発達に特性のある子どもが不登校になった場合、計り知れない心配を抱える保護者は多くいます。人間関係を築くのが苦手であるにもかかわらず、思春期に他者と関わる機会が大幅に減ってしまうわけですから、将来に対して悲観的になってしまうのです。

しかし本人の立場から見るとどうでしょうか?学校生活での無理をして人と関わらないといけない環境から解放され、自分の興味関心に沿って物事に取り組むことができるわけですから、周囲からのプレッシャーがかからなければ、本人にとっては良い環境と言えそうです。こんなことを言ってしまうと「では将来はどうするのか?」という声があがってきそうです。

発達に特性のある人の将来を考えるとき、ひとつの方法として福祉的なサービスを受けるというやり方があります。

とくに知的な遅れがある、自閉症の特性が強い、他の精神疾患を合併しているなど、様々な要因によって、将来においても社会生活を送るうえで支障を抱えることが想定される場合、福祉的な支援を受けながら安定的な生活を目指すことは、現実的な方法になります。

受給者証を活用したサービスの利用や、障害年金の受給、手帳※2を取得しての就労なども選択肢に入ります。

一方で発達に特性があっても大きな困難を抱えることなく社会参加をしていくことができる人たちもいます。

発達の特性における苦手な領域は簡単に克服できるものではありませんが、逆に得意な領域は一般の人よりも上手く伸ばしていくことが可能な場合があります。

得意な領域を伸ばすことができ、なおかつ二次的な問題を多く抱えなければ、自分の能力を活かした仕事に結び付けられる可能性も上がります。

学校教育の多くは平均的に能力を育てることに関してはノウハウを持っていますが、発達に特性のある人の得意な領域を伸ばしていくことに関しては必ずしも上手ではありません。不登校などで好きなことに没頭できる環境や時間的余裕があることは結果として、自分の得意な領域を伸ばすことにもつながります。

ただし、すべての人が自分の得意な能力を仕事に結び付けられるわけではありません。そのため自分の得意な領域を活かしてチャレンジしていくのか、状況に応じて福祉的なサービスを受けていくのか、その両方をバランス良く取り入れていくのか、様々な選択肢を残しておくことが重要になります。

サバイバルな人生を生きている本人にとっては「この道しかない」「この方法しかない」と人生の選択に強いこだわりを持ってしまうことが多くあります。上手くいっている時は良いですが、上手くいかなくなると大きな困難に直面します。

どのような選択をしても本人が自己否定的にならなくても良いように、また状況に応じて軌道修正ができるように、周りが多様な価値観と生き方を柔軟に認めていけることが大事なポイントなります。

※1

障害については様々な考え方がありますが、本文では行政用語としての障害、生活上の支障のことを指しています。

※2

発達障害児者が取得する手帳としては、知的に遅れがある場合は療育手帳、そうでない場合は精神障害者保健福祉手帳が一般的。自治体によって名称が異なる場合もあります。

おわりに

今回まで3回にわたって、荒尾俊樹さんに「お子さんが不登校になったときの考え方・対応法」についてお伺いしました。最終回となる今回は「不登校と発達障害」についてご説明いただきました。

  1. 【改訂版】子どもはなぜ不登校になるのか
  2. 【改訂版】親子関係から見る不登校
  3. 【改訂版】不登校と発達障害(本作)

2012年に公開した「不登校と親の対応」については年間一位のアクセス数になるほど反響が大きかったです。

そのため、「保護者の皆さまに役立つテーマ」を大事にしたくて、「不登校と親の対応」「発達に特性のある子どもが不登校になったときの支援」という切り口でご解説をお願いしました。ありがとうございました。

荒尾さんによる「不登校シリーズ」が読者のみなさまのご参考になりますように願っています。

謝辞

お仕事でお忙しい中、三回にわたって「不登校になったお子さんへの支援」について解説してくださいました荒尾俊樹さん、この記事を含む荒尾さんの不登校シリーズを読んでくださった皆さまにお礼を申し上げます。

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