【書評】和田裕美『「私は私」で人間関係はうまくいく』
ビジネス書作家・和田裕美さんの新作は、『「私は私」で人間関係はうまくいく』。「いい人なのに、誰かに遠慮をして損をしている人」が、自分を出しても人間関係をうまく築くコツを書かれています。
参考:和田 裕美『「私は私」で人間関係はうまくいく』
この本をオススメしたい理由
本当はやりたいことがある。自己主張したい。だけれども、自己中だと思われるのが怖くて、遠慮しすぎる人になってしまうのもムリはありません。
- 自分を出そうとすると、なぜか浮いてしまう。
- 場の空気を読もうとして、遠慮しすぎてしまう。
- 自分の気持ちややりたいことを遠慮してしまうので、自分がなんだかいやになってしまう。
- 波風を立てない"いい人"だけど、自分がいやになってしまう。
「あるある」という事例が多く、私は身につまされる所が多かったです。
この本のいいところは、「他人に遠慮しすぎないで、"自分"を表現する方法」「人間関係で悩んだときにどう乗り越えたら良いのか」が具体例&解決策入りで書かれている点。自分の認知の癖に気がつき、行動を変えることができます。
本書で紹介されている事例
- 第一章 まわりの空気を読もうと、がんばりすぎているあなたに
- 第二章 このしんどい世界の中にも、私の居場所は必ずある
- 第三章 「私は私」でいるために
- 第四章 人づきあいは力を抜くくらいがちょうどいい
- 第五章 どうしても苦しいとき、やり過ごす方法は必ずある
- 第六章 今日から変わる! 強くなる!
【第一章の概要】
第一章は、いい人なのに、自分を出せない人がどうしたらよいのか、がテーマです。
いい人なのにダイエットに失敗つづきだった白キューピーさんが様々な本を読んでも変われなかった理由は、「単なる知識としていて、自分のこととして考えることから逃げていた(前掲書NO.209/1790 より引用)」から。変わろうとした白キューピーさんは、その後どうなったのかが見所です。
【第二章の概要】
第二章は、「私は私」をするために、自分の居場所を見つけるにはどうしたらいいのか、がテーマです。「打算的で、自分の本質を見てくれない人といるよりも、自分の本質を認めてくれる人と一緒にいた方がいい(前掲書NO.475/1790 より引用)」を貫くことが「私は私」でいるということだそうです。
【第三章の概要】
第三章は、本当の自分を出すための方法がテーマです。自分に自信がなくなるのは、相手が自分より格上だと認識してしまったとき。そんな場合は、話し始めるときに「私」はを付けると良いそうです。確かに「私は~がいいと思うのですが」だったら、相手に意見を押しつけているわけではありません。
できないことに目が向いて焦りが焦るとき、「私は~」というだけでも認知は変わっていきます。
【第四章の概要】
第四章は、人付き合いが苦手でもいい、がテーマです。苦手な人との付き合い方(こっそりあだ名を付ける、など)、わずらわしい人間関係は割り切ってもいい、など考え方が紹介されています。
他人の悪口を聞かされたときは、「悪口を言わされている人と、自分との関係がおかしくならないこと、に意識を向けることの方が、すごく大事(前掲書NO.1140/1790 より引用)」とのこと。参考になりました。
【第五章の概要】
第五章は、どうしても苦しいときにどうしたらよいのか、がテーマです。
「絶対に●●する」と思うのをやめるだけでも、楽になります。過去がどうであろうと、人間の脳みそは過去の記憶を再構築できるそうです。「今、不幸なのは過去に●●があったせい」と想いがち。ですが、自分がどう認識するかで、幸せにも不幸にも書きかえできる点が興味深かったです。
【第六章の概要】
第六章は、謙虚を言い訳にしない、がテーマです。「~。だから●●できないんです」は、アドラー心理学だと「人と関わりたくない目標のために、感情表現できない人になった(前掲書NO.1380/1790 より引用)」と考えるそうです。
失敗を前提にした計画をたててしまうと、うまくいく方法を採れなくなる場合があります。「怖いからがんばる」「失敗をしないように」と思い込むのではなく、産みの苦しみを味わいながら「まあ、いいよね」と自分を肯定することが大事と和田さんは指摘しています。
本書から学んだ事
身近な人に、自分をどう扱われるかで"私"自身への認識・評価が変わってしまう、と言うのは強い印象を受けました。いやな相手(明らかに攻撃的だったり、逆恨みをしてきり、など)と無理してつきあわなくて良い。距離を置いたり、時間の間をおいたり、人間関係を棚上げすればいいのだ、と学びました。
そして、知らない人ばかりいるイベントに参加したときは、以下の点を心がけると良いそうです(前掲書NO.696/1790 より引用)。
- おどおどしない、堂々とする
- 笑顔、姿勢、歩き方などで「自信があります感」を出す
- しかし、合わない相手なら、無理につきあう必要なし(←これ大事)
自分で決めて、「●●をした」、という点が重要なのだと思います。
第二章の「競争しなくても成功できる場所がある」、という考え方は大変参考になりました。和田さんは営業マン(ウーマン)同志で、お客様の奪い合いをするのはつらいと感じたそうです。自分の気持ちに正直になっても、営業の世界で生き残るにはどうしたらよいのか。
和田さんの場合は、まだ見込み客ではない方にアプローチして、だんだん結果を出すようになったそうです。他人から奪ったり、自分を犠牲にしたりするのではなく、自分の気持ちに正直に生きることを選択しても、結果を出すことができる。
「人生で結果を出せるのは自己中な人」という指摘も興味深かったです。変人扱いされて、マイナスな扱いをされていても、やりたいことをやりきる人がいます。自己中を貫いて結果を出すと、カリスマになる。気が済むまでやるのは、時に大事なんですね。
まとめ
和田さんは、「私は私」とは「人の気持ちがわかって、相手のために動けて、愛されている自由な人のこと(前掲書NO.463/1790 より引用)」と考えています。
自分を出すため、場にいる人がもっと幸せな気分になるために、空気を読むのはOK。「問題を解決するには、こうしたらどうかな? 」と、優しく励ますように書かれています。
特にこころに残ったのは、
けれど、「しんどいしんどい」と思ってやっていたらダメなんです。それは、自分の犠牲の上に成り立っていることであり、犠牲という土壌からは結果的には「恨み」とか「悲しみ」しか育たないからです。(だって、自分が苦しんでいるのだから当たり前です)
※前掲書NO.209/1790 より引用。片岡が引用部分の一部を太字に変更。
の箇所でした。競争にのってお客様を奪い合ったり、自分を犠牲にしたり。結果が出たとしても、「恨み」とか「悲しみ」しか残らなかったら不幸です。「これだ! 」と自分が感じることに、取り組むのが良いんだ、と感じました。
謙虚と遠慮は違うもの。「やらされているからやった」が「自分がやりたいからやった」に変わると、人間関係が格段に楽になるのではないでしょうか。
今回紹介した書籍
和田 裕美『「私は私」で人間関係はうまくいく』
編集履歴:2014.12.24 22:47 2文目・3文目(ホーソン研究の部分)を冒頭に移動しました。太字と句読点を追加しました。2015.9.29 19:26 題名から副題を取りました。本の題名は、「【書評】和田裕美『「私は私」で人間関係はうまくいく』 ー場の空気を読もうとして、遠慮しすぎてしまうあなたにー」。2017.4.24 23:54 改行の位置を変更。見出し「この本を紹介したい理由」の直後から「心理学のホーソン研究によって、組織の非公式集団な集団が、作業態度やコミュニケーションに大きな影響を与えることが明らかにされています。」を削除。以下の部分を見出し「まとめ」の直後から「『「私は私」で人間関係はうまくいく』は、アドラー心理学を踏まえている点も特徴です。アドラー心理学は日本でも『嫌われる勇気』で、浸透し始めてきました。」を削除。冒頭から二文目を三文目の後に移動。読点を一部の文章に追加または削除。太字の場所を変更。見出し「この本をオススメしたい理由」を記事の冒頭から「本当はやりたいことがある」の前に移動。「いい人な白キューピーさんが」→「いい人なのにダイエットに失敗つづきだった白キューピーさんが」に修正。