【書評】望月実『内向型人間のための 伝える技術』(PR)
『内向型人間のための伝える技術』
本屋に行くと、ビジネスマン、ビジネスウーマンに向けた"話し方"、あるいは"ヴォイストレーニング"の本をよく見かけます。話し方 関連書籍がたくさん本棚に置かれている。ということは、"読者からのニーズ"がある」ということかもしれません。
そのなかでも望月実さんの「内向型人間のための伝える技術」の興味深い点は、"内向型人間のための"伝える技術 と銘打っているところです。
著者の望月さんによると
内気で心配性、
精神的に疲れやすい反面、
情報感度が高く、誠実で
正確な仕事ぶりの「内向型」。
その長所を最大限生かしつつ、
「何を」「どうすれば」
コミュニケーション面で
ブレークスルーできるのか。
具体的な方法を詳述
(前掲書 表紙より引用)
とのこと。
私が「他の人には教えたくないになあ......」と思うほど、内向型人間がコミュニケーション面でブレークするための方法が、とても具体的に書かれています。
参考:望月実『内向型人間のための伝える技術』
ビジネスパーソンに必要なのは、話し上手ではなく伝え上手
内向的な性格だと認識されている方は、誰とでも社交的に接する人に比べて、話すことへのコンプレックスを持たれているかもしれません。しかし、スーザン・ケイン『内向型人間の時代』では、アメリカ人の1/3から1/2は内向型であるという研究結果が示されているそうです。(前掲書 3ページを参照)
参考:スーザン・ケイン 古草 秀子『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』
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「アメリカでは外向型でないと成功できないという強いプレッシャーがあるため、たくさんの人が『外交型のふり』をしている」とのこと。(前掲書 3ページを参照)
しかし、ハーバード大学のジェローム・ケーガン教授の実験結果によると、乳児の時に未知の刺戟へ強い反応を示した赤ちゃんは、大人になってから「思慮深く慎重な内向型の性格に成長」したとのこと。
一方、乳児の時に未知の刺戟へあまり反応しなかった赤ちゃんは「おおらかで自信家な外交型な性格に成長した」そうです。(前掲書 6ページを参照)
内向型、外向型にはそれぞれ気質の違いがあり、異なる長所を持っていることがわかります。内向型の人は外部からの刺戟(情報)に敏感な面を持っています。したがって、コミュニケーションの方法を自分の持ち味に合うようにカスタマイズすれば、外向型の人とは違った"伝え上手"になることができます。
本書で学ぶことが出来る内容
- 内向型人間のコミュニケーション戦略
- 仕事を効率良く進めるコミュニケーション術
- ロジカルシンキング
- 情報を整理して伝達力を高める
- 話が苦手な人のための話し方トレーニング
- 相手目線で企画力を鍛える
- 自分にあったコミュニティを作りあげる
特に読んで欲しいのは、"ロジカルシンキングの本質"と"パラグラフ・ライティング"に関する部分です。
ロジカルシンキングの本質
拙稿の筆者が一番うならされたのは、"ロジカルシンキングの本質"(前掲書 86-88ページ)です。「内容だけロジカルでもダメなのか」と考えさせられた部分を紹介します。
相手の説明をロジカルと感じるのは「自分が知りたいと思っていることを、分かりやすく説明された時だけ」です。本を出すまでの私のポジションは出版の素人です。出版のプロである編集者は、出版の素人である私から、出版戦略についての話など聞きたいとは思いません。だから、私がいくらロジカルに説明しても、「机上の空論」として扱われてきたのです。(前掲書 88ページ)
望月さんの本が連続して売れてからは、同じ話をしても相手の反応が違ったそうです。
それに対して、私に出版のオファーをくださった編集者は、「なぜ、この著者が出す本は連続して売れているのか」というところを知りたいと考えています。そのような状況で、分かりやすく出版戦略を説明したところ、「ロジカル」と感じていただきました。(前掲書 88ページ)
同じ話でも「相手の見方」によって、「ロジカルかどうか」の受け止められ方が異なってしまう。内容のロジカルさに加えて、よくよく注意しないといけない点でしょう。
また、アメリカでは学校で論理的な文章を書くトレーニングを受けます。しかし、日本では作文の宿題はあるものの、論理的な文章の書き方を国語の授業で習うことは稀ではないでしょうか。
パラグラフリーディング
望月さんは本書において、「パラグラフリーディング」の書き方を紹介しています。「パラグラフリーディング」は、さらにと「総論-各論型」と「導入-説明-結論型」に分かれます。
どちらも自分の頭のなかにある考えを、論理的に書く手法です。文学的な文章力と異なり、前掲した書き方のルール(フォーマット)にそって書けば、誰でも論理的な文章になりえます。
なお、本稿は「私の好み」という理由で、「導入-説明-結論型」のスタイルに近いのではないでしょうか。
まとめ
本稿では『内向型人間のための 伝える技術』の概観と一部分を紹介しました。他にも働く人・就活をしている学生に役立つ内容がたくさん書かれています。
内向型人間だったことが仕事でプラスの効果をもたらした理由については、「心配性の私が抜擢された理由」をご参照ください。面接や商談で相手から評価されるコツを知りたい人は、相手目線で考える~ある就活生へのアドバイス がオススメです。
相手に「待たされなかった」と思われる仕事の進め方については、仕事が早いと思わせるデッドライン・マネジメントのメソッドが役立ちます。
「2週間で話をうまく見せるトレーニング」では、望月さんが聞き取りにくい声・話し方から聞き取りやすい声・話し方に改善した取り組みが紹介されています。
聞き取りにくい話は、
- 言葉につまる
- 滑舌が悪い
- 間がない
の3点が問題とのこと。
それでは、どうすればよいのか。具体的な方法が書かれています。
その他、「ひな壇芸人から学んだ満足度を上げる方法」「フィードバックを取り入れながら本を作る」「上手なアドバイスの受け取り方」など、内向型の人間だが商談や就職活動の面接を成功させたい人に役立つ具体的な例・方法が紹介されています。社交的なふりをするのではなく、「内向型」を活かした高度のパフォーマンスをして、自分を活かしていきたい人におすすめの本です。
著者の望月実さんより「『内向型人間のための 伝える技術』」を献本していただきました。お礼申し上げます。
引用文献
望月実『内向型人間のための伝える技術』