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【書評】白川 克 榊巻亮『業務改革の教科書―成功率9割のプロが教える全ノウハウ』(日本経済新聞出版社)

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変革プロジェクトに取り組む人へ

ヤフーニュースやITmediaニュース等を閲覧していると、「業務改善」というキーワードが目につきます。業務改善そのもののニュースよりも、業務改善がうまく行かなかったために起きた不祥事、トラブルの話題が目につきます。

「業務改善」は難しいことのように受け止めていましたが、『業務改革の教科書―成功率9割のプロが教える全ノウハウ』を読んだあとであれば、変革プロジェクトは立ち上げをきっちり行えば9割は成功できるらしいと知りました。

「最も困難で、成功を左右する立ち上げ期に重点」を置いている点、「日本企業での、「普通の人々」による変革」を想定している点は、この本の大きな特徴ではないでしょうか。(前掲書 p,1~6を参照)

この本は、組織の現状を変えたい人、変革プロジェクトに取り組むリーダー・目指している人のための本です

業務改革の教科書―成功率9割のプロが教える全ノウハウ

この本の特徴は、著者がプロローグに挙げているように四つあります。

1.実務家による実務家のための教科書
2.現場で使っている実物と、当事者の声
3.システムよりも、まずは業務の将来像を描く
4.日本企業での、「普通の人々」による変革
(前掲書 P,4~6を参照。)
※この部分は筆者の個人ブログ「」より引用。
  • 企業実例を実名で紹介している点、
  • 現場で使ったツールを写真も含めて公開している点、
  • プロジェクトに関わった当事者の声が具体的に紹介されている点

が魅力です。

現場で使っている実物と、当事者の声

「4つのP」を明確にする所からはじめ、計画を立て、全社的に承認を受け、実行するところまでが網羅されています。

4つのPは

  • Purpose 目的が定まっている
  • Process 到達するための道すじが明確になっている
  • Property 装備品、必要な道具が明確になっている
  • People 誰と行くか?
    (前掲書 P,7~9を参照)

を指します。著者によると「実はこの4P、「準備」についてならば、プロジェクト計画以外の何位でも当てはまる(前掲書 P,9)」とのこと。仕事だけでなく、その他諸々のものも4つのPを活用して整理することが可能です。

Amazonの商品紹介では、

★著者 榊巻より
通常、コンサルティング会社はプロジェクトで使う方法論や、ツールを公開しません。
なぜなら、それこそが「メシのタネ」だからです。しかし僕らは、
・すべてをオープンにして、一丸となってプロジェクトを進めなければ上手くいかない。
・僕らの手の内がバレても、世の中から不幸なプロジェクトが減るなら、それでいいじゃないか!
と、わりと本気で思っていて、立ち上げノウハウを文章化することに決めました。

と説明されています。榊巻さんの言葉の通り、ツールの詳細がわかる写真・図表が多数掲載されています。

たとえば、「分析の7つ道具」のところでは、

  1. 「何をどうする分析手法」
  2. 「使用例」
  3. 「分析結果を表示したパワーポイントのスライド」

が紹介されています。

当事者の声として実名で事例紹介されているのも魅力です。私見ですが、「面識のない会社から話を聞くためにアタック」(三井製糖 プロジェクトリーダー 斎藤部長)の実話は迫力がありました。(前掲書 P,141~142を参照)

システムよりも、まずは業務の将来像を描く

この本は変革プロジェクトをまとめるためのコミュニケーションについても、著者2人が力説しています。筆者は「抵抗勢力に向き合う」の「抵抗レベル1 無言の抵抗」を特に興味深く読みました。本当は批判的に考えているのに、会議等で何も言わない人も世の中には多いでしょう。

「批判になっていない批判」を放置すると、プロジェクトの終盤でちゃぶ台返しされてしまうことも起こりえます。

こうした目に見えない批判を引き出すには、会議中に追求するよりも、会議が終わった後などに探りを入れるのがいい。抵抗や批判でなく単なる勘違いだったとしても、「気にかけてくれてありがとう。大丈夫ですよ」ですむ。(前掲書 P,180より引用)

早い段階で問題を解決できるのが望ましいのですが、

  • 抵抗レベル1 無言の抵抗
  • 抵抗レベル2 正面からの批判
  • 抵抗レベル3 屁理屈での抵抗
  • 抵抗レベル4 話しすら聞いてくれない
  • 抵抗レベル5 反対運動を繰り広げる

とレベルアップしてしまう場合も考えられます。

まずは「批判を受け止める」ところから始め、レベルに応じて「批判をリスト化する」「群れるとタチが悪いので、個別に話す」「数字で示し、感情論から脱出する」「それでも無理なら代打を建てる」等、具体的な対応法が紹介されています。

「コントロールできるレベルの抵抗にとどめる」ために、リーダーやリーダーを目指す人は留意したほうが良い部分ではないでしょうか。

日本企業での、「普通の人々」による変革

プロジェクトが全社的に承認を受け、実行するところまで来た際は、

  • 4Pはどうなったのか、
  • 態勢の質は高まったのか、

これまで行ってきたことを振り返ります。「どこまで計画を練り上げて実行したら良いのかについては、

「実行局面に突入したら、どうせ計画は詳細化する必要がある。それどころか変更も必要となる。だれもやったことがない仕事を、誰もやったことがないやり方で進めるのがプロジェクトなのだから。だったら、計画づくりはどこかで見切りをつけ、歩き始めた方がいい」(前掲書 p,263より引用)

と答えています。

日本企業での、「普通の人々」による変革

著者・白川さんは、Amazonの商品紹介

「プロジェクト計画は、実行されなければゴミである。」
「いかに書類としてよく書けていたとしても、実行に移されなければ、その会社にとっての価値はない。」
等を書かれています。

 本当に恐れるべきは、不完全なプロジェクト計画ではない。計画したものの、実行に踏み出せないプロジェクトである。

 皆さんの健闘を祈る。(前掲書 P.268より引用)

普通の人々が業務改善を行うことができるように、著者たち・業務に関わった当事者たちの体験談は説得力があります。プロジェクト計画が"実行可能"であること、にこだわった本といえるでしょう。本書を読むことで、皆さまの変革プロジェクトが成功しますように。

今回紹介した書籍

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