かけ算の順番問題はなぜ今、目立つのか
かけ算の順番を入れ替えてはいけない?
私の主観ですが、少なくとも一年に一回は「かけ算の順番を入れ替えるとバツにされるのは納得がいかない」と保護者から問題提起がなされているように感じます。
Wikipediaにも「かけ算の順序問題」という項目ができました。一連の「かけ算の順序問題」がまとめられています。おおよその流れは以下のページでご確認いただけます。
私が小学生の時は文章題でかけ算の順番を入れ替えても答えがあっていれば正解でした。
【筆者が小学生だった頃(昭和50年代〜60年代)】
正解 ○:5×3=15
正解 ○:3×5=15
小学校では習わなかった気がしますが、高校の時に「数学の交換法則にもとづいて丸なのだ」と習った記憶がありました。
【現在(平成20年代)】
正解 ○:5×3=15
正解 ×:3×5=15
一体、なぜかけ算の順番問題が今、目につくようになったのでしょうか。
facebookで質問してみた
なぜ昔はOKだったかけ算の順番が今はNGになったのか。教育Communityで、馬鹿正直にかけ算の順番の件を質問をしました。
※コミュニティは一般公開されていて私の質問や皆様の回答も公開されています。ですが、公になっていることに気がついていないユーザーがいらっしゃるかもしれないので、コミュニティ名や他の方の投稿の具体的な紹介は控えます。
- 私には子どもがいないので小学校の現場がわからない上での質問であること
- 私が小学生の時はかけ算の順番を入れ替えても正解だったこと
- なぜ今はかけ算の順番を入れ替えるとバツなのか
- 文部科学省が「かけ算の順番を入れ替えるとバツ」にするように指導したのか
- 現場の先生の判断次第で採点は変わるのか
※先生によって「かけ算の順番を入れ替えるとバツ」「かけ算の順番を入れ替ええても丸」と違いがあるのか
小学校の現場がわからないと馬鹿正直に書いた上で質問した所、保護者の方だけでなく現役の先生や支援員の方も親切に教えて下さいました。
みなさまの回答をこの場で公開するのはプライバシーの侵害なので、私が新たに知った事実だけを書きます。
- 「かけ算の順番を入れ替えるとNG」という採点は文部科学省が何かを決めたり支持したわけではない。
→現場の先生がたの判断によるもの。 - 一通りの解法で教えるのは数学的な問題もあるが、発達障害の子どもたちが普通学級で学んでいることとも関連しているらしいこと※一通りの解法と直しました。 2013.1.29 0:41
文部科学省のサイトにこんなことが書いてあった
びっくりしたのは「かけ算の順番を入れ替えてはNG」とされている一因に発達障害の子どもたちの存在があるらしきことです。
追記 2013.1.28 23:31 誤解を与えたようですが、以下、順番が違うけど正しい回答をバツにする云々の是非ではなく、教え方についての話です。
私見ですが、これは文部科学省が推進している「インクルーシブ教育」と関係がありそうです。やや長いのですが、「インクルーシブ教育」についての説明を引用します。
(1)共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築
- 「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。(中略)
- 障害者の権利に関する条約第24条によれば、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、署名時仮訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、 自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、 障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。
- 共生社会の形成に向けて、障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり、その構築のため、特別支援教育を着実に進めていく必要があると考える。
- インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、自立 と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である。
小・中学校における 通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要である。(2)インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進
- 特別支援教育は、共生社会の形成に向けて、インクルーシブ教育システム構築のために必要不可欠なものである。そのため、以下の○1から ○3までの考え方に基づき、特別支援教育を発展させていくことが必要である。このような形で特別支援教育を推進していくことは、子ども一人一人の教育的 ニーズを把握し、適切な指導及び必要な支援を行うものであり、
この観点から教育を進めていくことにより、障害のある子どもにも、障害があることが周囲から 認識されていないものの学習上又は生活上の困難のある子どもにも、更にはすべての子どもにとっても、良い効果をもたらすことができるものと考えられる。○1 障害のある子どもが、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加することができるよう、医療、保健、福祉、労働等との連携を強化し、社会全体の様々な機能を活用して、十分な教育が受けられるよう、障害のある子どもの教育の充実を図ることが重要である。
○2 障害のある子どもが、地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに生きることができるよう、地域の同世代の子どもや人々の交流等を 通して、地域での生活基盤を形成することが求められている。
このため、可能な限り共に学ぶことができるよう配慮することが重要である。○3 特別支援教育に関連して、障害者理解を推進することにより、周囲の人々が、障害のある人や子どもと共に学び合い生きる中で、公平性を確保し つつ社会の構成員としての基礎を作っていくことが重要である。
次代を担う子どもに対し、学校において、これを率先して進めていくことは、インクルーシブな 社会の構築につながる。
- 基本的な方向性としては、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すべきである。
その場合には、そ れぞれの子どもが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるかどうか、 これが最も本質的な視点であり、そのための環境整備が必要である。※http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321668.htm より引用 (文部科学省)
あくまでも私の理解ですが、
- 世の中にはそれぞれ多様な存在が居ることを自覚し、健常な子どもだけでなく障害がある子どもも大人になってから社会で自立する権利を持っています。それを踏まえた上で教育のプランを立てて行きましょうね。
- 障害がある子どもも健常な子どもたちとできるだけ同じ場で学べるようにしましょう。
- 先生や学校関係者・保護者は子どもたちがが学びやすいように、つまり「個別の教育的ニーズ」を満たせるように取り組んでくださいね。
- 今は普通学級から特別支援学校まで様々な学びの場があります。だけどバラバラではなくて、それぞれの場が連携して子どもの学びに的確に対応してくださいね。
という事ではないかと受け止めています。
>>「かけ算の順番問題はなぜ今、目立つのか(続編)」へ続く
お礼 2013.1.30 0:48
この記事に対して様々な立場の方からご意見・情報をいただきました。ありがとうございました。私がコメント欄に回答することで論点を複雑にしている気がしてきました。
そのためこの場を借りてお礼とし、コメントへの返信はここまでとすることにしました。コメントを下さった高橋誠様、積分定数様、あさか様、あとり様、TaKu様、K.K様、TETSU様、KEN様ほか 皆様に個別に御礼がしきれないことと、お詫び申し上げます。
追記
この記事は「子供のICT教育とインクルーシブ教育・前編」の続き(後編)に相当するものです。
編集履歴:2013.12.08 22:43 後半部分を別記事「かけ算の順番問題はなぜ今、目立つのか(続編)」として独立させました。