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【書評】岸本慎介『読書会のススメ』inko (インディー文庫)

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どうしてこの本をオススメしたいのか

書評ブロガーとしてご活躍の岸本慎介さんが丸々一冊、読書会について書いた本を出版されました。それが『読書会のススメ』inko (インディー文庫)です。私は岸本さんの書評ブログが好きなので早速読みました。

参考: inko 2.2.0(無料)
カテゴリ: ブック
販売元: i-enter - i-enter(サイズ: 31.7 MB)
全てのバージョンの評価: (11件の評価)
iPhone/iPadの両方に対応

岸本慎介さん 略歴

2011年2月から3つめの会社で働くIT開発者です。
mixiで「たまご915」の名前で、読書会などに参加しています。
毎月1回「プレジデント読書会」を開催しています。

ブログ『新・たまご915の勉強会参加日記+α』
http://tamago915.cocolog-nifty.com/blog/
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書評の本ではなく丸々一冊を「読書会」について深く掘り下げるというのは非常に珍しいと好奇心が湧きました。

読書会をとことん考察した本というのも興味深いのですが、岸本さんが出版に利用したinkoの出版形態も面白い。なんとプロの編集者や校閲の方が内容の編集をしてからiPhoneアプリやAndroidアプリで電子書籍を出版できるそうです。

inkoは有隣堂とアイ・エンター社が提携し新たに始めた電子自費出版サービスとのこと。本屋である有隣堂が電子書籍を出版するサービスに関わるという事実が私の興味をさらにひきました。

参考:inko de マイレーベル
http://www.yurindo.co.jp/static/inko_smp.html
http://www.system-shibuya.com/inko-de-my-label/

私が利用しているパブーと電子自費出版という点では共通点があります。しかしinkoで出版すると経験豊富なプロの編集者が編集してくれる所が大きな違いではないかと考えております。

  1. 丸々一冊、読書会について解説するというコンセプトが珍しい事、
  2. 個人がプロの編集者に編集してもらえる事

が非常に興味深いと思い、この本を紹介したいと感じました。

この本がいいなと思った理由

読書会ってどんなものなのか、参加者と運営者の視点から解説している所がいいなと思いました。私は過去に「障害者と支援技術」というテーマで勉強会を開いたものの、テーマがマニアック過ぎたため個人で集客するのがうまくいきませんでした。

「定期的に勉強会を開催されている人はどのようにされているのだろう?」運営者サイドはどうされているのか関心がありました。参加者の立場では書評メルマガ「Webook of the Day」の松山真之助さんが主催されている読書会に一回参加しました。メルマガで読書会を知りました。

参考:松山 真之助『30分の朝読書で人生は変わる

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※上記書籍のリンクURLはAmazonアソシエイトのリンクを使用しています。

「みなさんでもくもくと本を読むのかな?」と勘違いをしていましたが、一部は参加者のみなさんの前で自分が好きな本の紹介をスピーチするという形式でした。20名前後の参加者がいらっしゃいました。

私は家庭の事情で一部で帰りました。二部はこんな事をしたいとブレーンストーミングされたようです。読書会は「事前に本を読んできて活発に話す場」らしいとわかりました。

『読書会のススメ』では

  • 読書会に初めて参加したいと思った方が
    どうしたら読書会の開催を見つける事ができるのか、
  • 初めて参加する時はどんな準備が必要なのか、

初心者のための「心構え」を丁寧に解説されています。

岸本さんの『読書会のススメ』には「読書会の魅力」としてこんな点が挙げられています。

  1. 「オススメ本」を紹介し合うことができる
  2. みんなで同じ本を読んで理解を深める事ができる
  3. 時には、その本の著者をゲストに招くこともある
  4. セレクトした本の見どころを参加者たちに伝えるアウトプットの効能

著者は実際に読書会を主催し、参加者も経験し、書評ブログで本の見どころをアウトプットされています。第三章の本のレビューは今だけでなく今後も通用しそうな本が選択されています。

短すぎず長過ぎずの長さですが考察の深さが深い。一定の長さで的確に、読者に伝えた方が良い要素を漏れなく紹介している点を私見では評価しています。実体験に基づいた本なのでリアリティと実用性がある所がいいなと感じています。

具体的にどこが良かったのか

第一章と第二章に

  • mixiなどSNSを活用して読書会を探す時の段取り、
  • 参加者を募集する時の事が記載されている点

が便利だと感じました。

参加する時に筆記用具や「名刺を持参した方がいい」と書かれている所も参考になりました。Dz147_l

仕事以外のプライベートな集まりの時は名刺を忘れやすいからです。読書会に持参する名刺は会社から配布された名刺は盛り込まれている情報が仕事用になってしまっているので、可能ならばオリジナルの名刺の方が良いようです。

第三章の本のレビューは「仕事はストーリーで動かそう」「ブラック・スワン」「モチベーション3.0」「心を整える。」など。ハードカバーの本から一般向けの話題の書籍まで取り上げられていました。

参考:ダニエル・ピンク 大前 研一 『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

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※上記書籍のリンクURLはAmazonアソシエイトのリンクを使用しています。

ハードカバーの本は原著を一冊読むと時間がかかります。この書籍では読みやすい分量のレビューでした。読み応えのある本のエッセンスがわかるのは重宝しています。

実際に行われた読書会の様子が丁寧に書かれているのも興味深い点でした。一人で本を読む行為も楽しいのですが、複数の人と本の内容の理解を深め、本という共通の趣味・好きをキッカケに話をする事も楽しそうです。

読んでいて気がついたこと

書評だけの本や読書について、勉強会を扱った本はすでに出版されていますが、全部読書会について書いた本は珍しいのではないかと興味が湧きました。

  • 第一章:読書会に参加したい人のための「手引き」
  • 第二章:運営したい人のための「手引き」
  • 第三章:実際に読書会でディスカッションした「オススメの本

読み進めていくと参加者の経験値があがるようにんっています。RPGのように構成されている点に作り手の個性を感じます。いきなり三章を読んでレビューを楽しんでから読書会に参加する読み方もありではないでしょうか。

inko文庫のアプリは立ち読みが可能になっていたので読書会のススメをまず10ページ分だけダウンロードしました。本文の表示は画像で行われているようでした。文字の拡大は画像を拡大表示する事で可能でした。

画面が大きいiPadは横向きにすると紙に書籍と同じように見開きになって読みやすかったです。しおり機能があり前に気になったページに戻ることができました。各ページのサムネイル表示に切り替えると他のページへ移動できました。

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※iPhone版の表示サイズ

自分にどのように影響したのか

今まで私が勉強会を主催するときはゲストの先生をお招きして勉強会を行っていました。ですが少人数でもいいので本気でテーマを深めたい人と、「講師なし」で取り組むのもいいかもしれないとアイデアが湧きました。

普通の人が個人で本の著者と知り合う事はまずない事ではないかと私見では思います。読書会ならば好きな著者と出逢うこともできます。読書会で松山真之助さんがいらっしゃった時は名刺を渡すのが精一杯だったのですが......。

読書会のテーマの本や関係者の著書を日頃から読み込んでおけば、内気な人も著者や他の仲間と話しやすくなるのではないかと私見では感じました。

私はオルタナブロガーミーティングで田中淳子さんと出逢った時にファンだったので挙動不審になるくらいテンションが上がりました。憧れの人と会う事ができるというのは人生の宝のように感じました。

参考:田中 淳子『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾 (日経ITプロフェッショナルBOOKS)

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あいにく田中さんの著書を持っていなかったのでサインをお願いできず痛恨でしたが、憧れの著者が読書会にきてくださる時はぜひ著書をご持参される事をオススメいたします。たぶんサインをいただいたら今後の人生で辛い時の励みになると思うのです。

  • 本そのものの理解を深めるという意味でも、
  • 本をキッカケに第三者と交流を深めるという意味でも、
  • 憧れの著者に逢えるかもしれないという意味でも、
  • 著者にサインをもらいやすいという意味でも、

多様な出逢いが読書会にありそうです。

この本を気に入ったのは著者が読書会に定期的に参加するために老舗IT企業を退社して東京に出てきたという文章の体温の高さではないかと私見では思います。

好きなことを心から楽しんで文章にされています。文章から「読書会が好き」という感情・熱っぽさが伝わってきます。

この本を読んで読書会って改めて心と教養が育つ気持ちいい場なんだなと気がつきました。仕事を理由に最近は参加していなかったのですが、前に参加した松山真之助さんのMac Book cafeや著者の岸本さんの読書会に行ってみようと思います。

参考文献

美崎 栄一郎 『会社って楽しい?
4828415548
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編集履歴:2012.7.23 0:16 本文に改行を複数入れました。 一文の文章を削除しました。2013.11.25 21:33 イメージ画像と本の画像・リンクを追加しました。2016.11.19 10:55 リンク切れしている画像を削除。本文から「※iPad版の表示サイズ」を削除。2023.9.25 23:40 今回ご紹介したアプリを削除しました。

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