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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

加藤高明さんが語る「みんなと同じようにタックスペイアになりたい」を実現するために

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前回のあらすじ

加藤さんは当ブログ第1回の「みなさまは目で見ると入力できるパソコンをご存知ですか?」に注視入力パソコンtobii(トビー)のデモンストレーターとしても登場してくださいました。注視入力パソコンは目で画面を見るとパソコンの操作ができるパソコンです。

前回の記事「加藤高明さんが語る「ユーザが使いやすい企業サイト」の秘訣とは」では問題提起を2つ行いました。一番目が「「企業のウェブサイトって本当にユーザに使いやすいのか? 」。加藤さんにどうしたら企業サイトのアクセシビリティが良くなるのかお話を伺いました。

今回は第ニ番目の問題提起「働きたいと希望しているチャレンジドが、納税者となり自立の道を切り開くにはどうしたらよいのか」について加藤さんのご意見と私の私見をご紹介したいと思います。

働きたいと希望しているチャレンジドが、納税者となり自立の道を切り開くには

加藤高明さんの自社サイト「ウェブ制作会社ピックファット」にこんなメッセージが載っています。

僕は、車椅子で手もうまく使えないけどそれが一つの個性だと思っている。 その個性を最大限に生かしていきたい。

障害者の中には国からの生活保護で一人暮らしをしている方もいます。 それも一つの生き方ですが、僕は生活保護に頼らず、ICTを使いみんなと同じようにタックスペイアになりたいのです。ウェブを使い、仕事ができないかと考えウェブ制作講習を受けました。

ウェブ制作には、デザイナー・情報アーキテクチャ(IA)・マークアップエンジニア・プログラマーなどがいますが、僕はマークアップエンジニアに自分で向いていると感じています。 なぜなら、多少のスピードは必要ですが事務作業のようなスピードはいらないからです。 スピードより正確さが重要なのです。 僕は、細かいことが好きだし最後まで諦めないし何よりHTMLやCSSを書いている時、時間を忘れてしまいます(笑)。まーデザインもやりますが・・・

いつかマークアップエンジニアないしウェブ業界で何かしら働けるように日々精進しています。 しかし、僕のようなチャレンジドは、外に働きに行きたいのに設備の問題や介助の問題で会社が拒む傾向が日本にはあります。そうなると自然と在宅になってしまいます。

在宅は気楽にマイペースでできて良いですが、在宅だと単独になってしまい新しい情報や人とのコミュニケーションが希薄になるので僕のような重い障害でも外で働ける社会に早くなって欲しいです。

引用元:http://www.pickphat.com/taka/ より

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世の中には「障害者を働かすなんて」という一般の方もいますし、「障害のせいでこんなに苦労してきたのに僕/私をこれ以上働かそうとしないでくれ」とおっしゃる障害者もいます。それぞれが一生懸命生きてきて、自分で最善の道を考えた結果、生活保護や障害者年金をもらうのは私見では良いことだと思っています。

生きていくために、人間の尊厳を保つために。必要があって生活保護や障害者年金をもらうことは良いことだと私見では感じるからです。加藤さんのように「重度障害者でも働きたい! 」と願い、働く場を自ら作ってしまうのも良いことだと思っています。

日本では重度の障害がある場合は作業所で作業をするという方向に学校も回りも勧めがちではあります。しかし「自分で働いて得た賃金を日本国に納税し、自立したい」と考えている人もいます。

働きたいと願う重度障害がある人を雇用する場は十分には整っていません。企業の方も何を仕事としてお願いしたらよいのか、どう対応して良いのかわからないことも多いのだろうと思います。不況の昨今、失業する人が多い中で重度障害がある人を雇用することは難しいのかもしれません。

しかし鳩山元首相が所信表明演説で紹介したように日本理化学工業では従業員の七割くらいの知的障害者の雇用を実現しています。

参考:
大山 泰弘『利他のすすめ~チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵』WAVE出版 (2011/4/22)
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参考:大山 泰弘 『働く幸せ~仕事でいちばん大切なこと~

4872904192
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日本理化学工業の大山会長は「重度の知的障害があっても色をおもりにつけることで重さの違いを判断できる」と気が付かれ、作業内容・指示が理解できるように工夫されてきました。指示の出し方、環境を整えることで多くのチャレンジドが働き、自立していきました。

参考:竹中 ナミ 『プロップ・ステーションの挑戦―「チャレンジド」が社会を変える
448086315X
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雇用する立場の人にとっては日本理化学工業の事例は参考になるのではないでしょうか。仕事をする際に働く人に適切な指示・環境が整えばおそらく障害の種類/有無にかかわらず、働き、収入を得て納税者となっていくことが可能なのではないでしょうか。

その際、IT(ICT教育等、含む)の活用方法のノウハウが確立され日本全体に広まれば、就労という点だけでなく国益においても大きな役割を果たす可能性があるかもしれません。税収が支出に対して足りない昨今、働きたいと望んでいるチャレンジドが自立していくことによって新たな日本の豊かさが生まれていくのかもしれません。

加藤高明さん関連サイト

参考文献

小倉 昌男『福祉を変える経営~障害者の月給1万円からの脱出

4822243648
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大山泰弘 『利他のすすめ~チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵
4872905083
※上記書籍のリンクURLはAmazonアソシエイトのリンクを使用しています。

中島 隆信『障害者の経済学

4492314164
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追記 2012.7.21 1:00 題名から-注視入力パソコンtobii・後編-を取りました。

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