なぜ、我が国のご年配の指導者層はかくもIT音痴なのか
「経団連本部の会長室にはじめてPCが設置される」や「PCを使ったことのないサイバーセキュリティ担当大臣」の話題が盛り上がっているが、日本の経営や政治のトップの多くは似たり寄ったりの状況なのだろう。
経営の意志決定や政策を決める立場にある人たちが、このような状況であるのだから、IT後進国と言われるのもさもありなんである。
攻めのIT、ビジネスのデジタル化、デジタル・トランスフォーメーションなどと巷では騒いでいるが、これでは現場が声を上げても、その意味や価値が感覚的に伝わらないわけで、彼らがイニシアティブをとることなど期待することは難しい。何とも残念な現実だ。
なぜ、我が国のご年配の指導者層はかくもIT音痴なのだろうか。その一番の理由はタイプライター文化がなかったからだろうと思っている。
米国では、コンピューターが登場する以前からタイプライターを使いこなすことはビジネスマンの基礎技能だった。1950年代にビジネスの現場で使われるようになったコンピューターは、このタイプライターを入力装置として使用した。また、1970年代後半に登場し、1980年代以降普及することになるパーソナル・コンピューターもまたそんなタイプライターの延長線にあった。
我が国では「読み書き算盤」は社会人のたしなみではあったが米国では「算盤」の代わりに「タイプライター」と言うことになるのだろう。この歴史的厚みが日米のITリテラシーの差となったことは想像に難くない。
我が国ではタイプライターという文化のないところにPCが持ち込まれた。そして、大企業でPCが一人一台体制となったのは1990年代半ば以降だから、いまの経営トップがITとは無縁な世代であったわけで、彼らのITリテラシーの低さは仕方のないことかも知れない。
また、我が国ではSQLはエンジニアが使いこなす言語としての認識があるが、元となる SEQUEL (Structured English Query Language/構造化英文問合せ言語)は、その名の示す通り、リレーショナル型データベースを英文的記述によって誰もが容易に操作できるようにしたビジネス・パーソンのための簡易言語だった。だから、英語を母国語とする人たちにとってみれば、これを使いこなすことに抵抗がなかったようだ。
これ以外にも様々なITに関わる製品やサービスは英語を母国語とする米国発のものであり、これらを生みだす背景にあるビジネスの課題やニーズも米国のビジネス社会を反映したものであり、ごく自然に受け入れられてきたのだろう。
日本のITは、そんな歴史を飛び越えて来たわけだ。しかもビジネスの急速なグローバル化によって、このギャップを一気に埋めろと迫られている。これはなかなかしんどい話しである。
PCを使えない大臣を擁護するつもりはないが、これを小馬鹿にする人たちにもまた似たり寄ったりの人たちもいるのではないか。「ビジネスのデジタル化」とは電子メール、ExcelやWordを使うことではないし、ソーシャル・メディアが使えてもITリテラシーが高いわけではない。様々なデジタル・テクノロジーとビジネスや社会の価値を結びつけて考えられる思考回路こそITリテラシーと言えるのだろう。まあ、そうはいっても、PCやスマホを使ったことがなければ、そんな発想さえ浮かばないだろうが。
ITに関わる歴史の厚みの違いは、いかんともし難い現実だ。しかし、そんなことを言い訳にしていたら何の発展もない。明治維新の文明開化のような怒濤のエネルギーでIT開化を推し進めなければ、我が国はIT後進国からいつまでも抜け出せない。
ただ、ITリテラシーのない人たちは、特に経営者や為政者は、そんな彼らの足を引っ張らないでほしい。
「何かを始めようとすれば、何もしない奴らが、必ず邪魔をする。」
以前放送されたNHKの大河ドラマ「八重の桜」でこんな台詞が出てきた。せめて、そんな事だけはしないようにしてほしい。若い人たちは、それに続く言葉を実践してほしい。
「(そんなやつらを) 蹴散らして、前へ進め!」
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