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「人数×稼働率」だけで事業目標値を設定する愚行はそろそろ辞めにしませんか

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これまでのシステム構築は、開発の後に運用するという前後関係や役割分担が存在していました。そんな当たり前と思われていた両者の関係を見直し、業務現場の要求や顧客のニーズに即応するために、開発しては即座に本番に移行し、そして1日に何度も仕様変更を行うことができる仕組みを作ってゆこうという取り組み、いわゆる「DevOps」が注目されるようになってきました。それを実現するには仕事のやり方だけではなく、あらたなテクノロジーが欠かせません。

スクリーンショット 2018-03-07 6.27.43.pngスクリーンショット 2018-03-07 6.28.14.png*上記についての詳細な解説はこちらをご覧下さい。

アジャイル開発やPaaS/APIエコノミー、サーバーレス、コンテナ、マイクロサービスといった言葉も同じ方向を向いています。

  • ビジネスのスピードに即応できるIT
  • 競争の土俵を変えるIT
  • デジタル・トランスフォーメーションを実現するIT

そんな新たな価値に世の中が注目するようになってきたことが背景にあります。

かつて、ITは業務の期間短縮、効率向上、コスト削減といった経営体質を支える手段として使われてきました。その意味でITの存在感はいまも揺るぎないものです。経営者も、業務の現場にいる人たちもその価値に疑問を持つ人はいないでしょう。

しかし、「新たな価値」、すなわち企業体力を強化するITは、我が国においてはまだ十分に理解されているとは言えません。ITを競争力の源泉と捉えている経営者は我が国ではまだまだ少なく、いまだ効率化の手段としての認識を越えていないのが現実です。ただ、世界の潮流は間違えなく、その方向に向かっています。そして、新たな取り組みを模索する我が国企業も拡大しつつあるようです。

しかし、その受け皿となる情報システム部門が、この時代の要請を受けとめられていないばかりか、この変化を積極的に後押ししようというシステム事業者も多いとは言えません。広告や宣伝では自らの先進的な取り組みは謳いつつも、実態は従来価値を支える既存システムの受託開発や保守がほとんどであり、人月ビジネスに大きく依存しています。

既存のニーズを無視せよとか、捨ててしまえとか言いたいわけではありません。それもまたお客様に取っては大切な経営基盤です。その安全と安心を支えることに価値がないなどと言うつもりはありません。しかし、お客様のシステムを任され、信頼を託されているシステム事業者であればこそ、未来を見据えたITの新たな価値を訴求し、お客様を導いてゆく役割と責任があることを自覚すべきではないかと思うのです。

先日、ある大手のSI事業者の事業戦略について話を伺う機会がありました。その中で、第三者の調査期間を使った自社への評価について紹介されていました。その中で、「言われたことは確実にこなしてくれるので信頼している」と評価されている一方で、「新しいことへの積極的な提案がない」といった評価もあったそうです。これはとても意外なことでした。というのは、この会社は、とても先進的なことでも有名で、業界をリードしていると思っていたからです。しかし、そんな企業でさえもお客様から見れば、もっと積極的であって欲しいと思われているのでしょう。

営業の現場に立てば、売上と利益がいつも求められます。そのためには、数字に直接結びつきにくい「新しいこと」に取り組むよりも既存の受託開発や保守と行った業務ニーズを取りこぼさないようにすることが堅実であり、社内評価にもむつびつきます。それは、しかたのないことかもしれません。そういう現場を叱咤激励し、「もっと新しい提案をすべきである」と訓話を述べても現場のモチベーションが上がるわけはありません。もっと戦略的に、つまりは、既存の事業を支えるチームと新しいことを仕掛けるチームに組織を分割し、業績評価基準もそれぞれに最適なものに作り替えて、対応するなどの現実的なアプローチが必要です。

いずれにしろ、新しい方向へ向かおうという慣性が、お客様のなかに生まれてきていることだけは確かです。そこに率先して関わることが、やがて訪れる「人月積算ビジネス=工数は稼げるが利益はゼロ」の時代を乗り切る手段となるはずです。

冒頭に紹介したキーワードもそうですが、ITのトレンドを手段の移り変わりとして捉え、それにどう対応しようか考えているだけでは不十分です。その背景にある意味やお客様のビジネス価値を考えることで、はじめて自分たちの向かうべき筋道が見えてくるのです。一昨年上梓させて頂いた「システムインテグレーション再生の戦略」もまさにそんな視点に支えられています。

これまでも変化のない時代などありませんでした。私たちは、そんな時代の変革にこれまではうまく対応してきました。しかし、いま起こりつつある変化は、これまでの変化とは質的に大きく違っています。それは、「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉に集約されるでしょう。そのもたらす結果は、「工数の喪失」と「ITに求められる役割の変化」です。そして、それは同時に「人間の役割の変化」でもあります。これはかつて経験してこなかったことであり、これまでの経験の延長線上には解決策はありません。

そんな時代をどう生き抜くのか。

いま来年度の事業計画をまとめられている方も多いのではないかと思いますが、「自分たちの抱えるエンジニアの人数×稼働率」だけで事業目標値を設定するといった愚行はそろそろ辞めにして、あらたな付加価値をどう創出し、新たな数式での事業目標を考えみてはいかがでしょうか。

最新版【3月版】を更改しました。

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  • 新入社員のためのITの基礎知識を最新版に更新しました。
  • 「ビジネスエグゼクティブのためのIT戦略塾」で使用した最新トレンドについての講義資料を公開しました。
  • その他、新しい資料を公開しています。

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プラットフォーム&インフラ編
【新規】従来システムとハイパーコンバージド・システムとの違い p.136
【新規】ハイパーコンバージド・システムのメリット p.137

ビジネス戦略編
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.18
【新規】ITをビジネスの成果に結びつける考え方 p.48
【新規】事業会社の担うべき責任 p.49
【新規】注意すべきITベンダー・SI事業者の行動特性 p.50

サービス&アプリケーション・先端技術編/AI
【新規】人間は何を作ってきたのか p.10
【新規】知的介助: amazonの戦略 p.32
【新規】学習データと結果の関係 p.93

サービス&アプリケーション・先端技術編/IoT
【新規】デジタル・コピー/デジタルツイン p.25
【新規】amazonのデータ収集戦略 p.26
【新規】IoTビジネスはモノをつなげるのではなく物語をつなげる取り組み p.42
【新規】様々な産業に変革を促すデジタル・トランスフォーメーション p.95

運用と開発編
【新規】変わる情報システムのかたち p.6
【改訂】アジャイル開発の基本構造 p.17
【改訂】スクラム:自律型の組織で変化への柔軟性を担保する p.25

テクノロジー・トピックス編
【新規・改訂】armについての解説を新しい内容に置き換えました p.19-35

ITの歴史と最新トレンド編
【新規】量子コンピュータとは何か p.4

クラウド・コンピューティング編
*変更はありません

サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません

その他
【新入社員】最新のトレンドを知るためのITの基礎知識 を最新版に変更
【一般社員】ビジネス・エグゼクティブのための最新ITトレンド を新規に追加

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