会社にぶら下がって生きてはいないだろうか
もう30年近く前の話だ。私がIBMの営業として電子機器メーカーを担当し、お客様の工場に通っていた。そこでは通勤時間帯や昼休みになると、かならず正門の外に置いた小さな脚立に上り、ハンドスピーカーを持った40才前後の男性が、「不当解雇を撤回せよ!」と赤字で描かれた幟を背にして演説をしていた。それを取り囲むように指示者たちが鉢巻きをしてビラを配っていた。工場に通う人たちは、そのことに目もくれずにさっさと正門をすり抜けてゆく。そんな光景が、1年以上は続いていたように思う。
どのような事情があったのかは知らないし、他の会社の話でもあり、ただ「またやってる」程度にしか見てはいなかったが、何と無駄なことをやっているのだろうと思ったことを記憶している。
その事情など知るよしもないが、そもそも「解雇」されるということは、それなりの理由があるはずだ。それが不当かどうかはわからないが、少なくとも会社にとっては「必要ない」と判断がなされたことは確かだ。
その会社が清廉潔白で、立派な会社だと言うつもりはない。もしかしたら「不当」と主張する根拠もあるのかも知れない。しかし、そんな「不当」を押しつける会社にすがりついて、あるいは運良く損害賠償を勝ち取って、それで幸せになるのだろうかといまさらながらに思う。
さっさとそんな会社は見限って、次の道を探せばいいのではないか。毎日演説をするエネルギーをもっと違うところに使うことができれば、新しいチャンスを見出すことができるのではないか、などと他人事ながら思ったりもした。
会社にいたければ、会社のために仕事をする必要がある。だから、会社はその貢献に対して給料を支払う。それは、言いなりになると言うことではなく、会社を良くしよう、会社を変えてゆこうという取り組みもまた、会社への貢献と言えるだろう。
会社という組織に入ったことが「特権」であり、「既得権益」ではないことはいうまでもない。ただ、そのことを自覚できているかどうかは、なかなか中にいると分からないものだ。例えば、自分の会社のことをやたらと批判する人がいるが、ならば自分はそうならないように自分の与えられた職責に於いて最大限の努力をしているだろうかと問うてみるといい。もし、それが批判のための批判でしかないとすれば、自分はこの会社の社員であるという「既得権益」に知らず知らずに甘えているに過ぎず、自分の職責を果たしているとは言えないだろう。批判をするなということではない。批判をするなら貢献もしろと言うことだ。
私は、IBMをやめてIBMという看板の大きさを嫌と言うほど思い知らされた。そして、自分がそのことにより守られ、多くの機会を与えられてきたことも実感した。看板がなくなった瞬間に、銀行から住宅ローンを一括して返せと言われ、クレジットカードの解約も求められた。商談をするにも会社にも個人にも信用がないから容易にまとまらない。
私は、それなりに成績の良かった営業で、それは自分の実力だと思っていたが、それが会社の看板に支えられていたことを思い知らされた。私は結果として会社にぶら下がっていたのだ。
本当のところは分からないが、冒頭の男性も会社にぶら下がって生きてきたのかもしれない。だから解雇されて、自分という人間を否定されたように感じたのかもしれない。そして失望し、怒り、そのはけ口を求めたのかもしれない。あるいは会社という看板が外れて、自分という存在が露わになり、自分で自分を支えなくてはならないとなった瞬間に、それがないことに気付いて、戸惑い、困惑し、怒ることで、自分の存在を確認しようとしていたのかもしれない。いずれにしろ本当のところは分からない。
もはや会社という組織にぶら下がっていられる時代ではない。これだけ、社会が大きく揺らぎ、変化は指数関数的だ。そんな中で、会社組織は離散集合を繰り返しながらも最終的には小さな組織の集合体になってゆくのだろう。それらは自律的な組織として機能し、ダイナミックに連係してビジネス価値を産み出してゆくはずだ。そうなれば、会社にぶら下がることなどできない。ひとり一人の個人が社会的な価値を産み出してゆかなければ、その組織は自律できない。
会社のための価値ではない。個人が社会に必要とれる価値を産み出して行くことであり、組織はそれをつなげる仕組みを提供することになる。だから、大会社だとかベンチャーだとかという垣根がどんどんとなくなってゆくだろう。
自分は会社にぶら下がってはいないだろうか。
会社に勤めているのであれば、そんな問いを忘れないことだろう。それが自分を会社にも社会にも必要とれる存在であり続けるための基本的な姿勢ではないかと思う。。
2月14日(水)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第27期」の受付を開始致しました。
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【お願い】早期に定員を超えると思われますので、まだ最終のご決定や参加者が確定していない場合でも、ご意向があれば、まずはメールにてご一報ください。優先的に参加枠を確保させて頂きます。
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第27期は、これまでの内容を一部変更し、AIやIoTなどのITの最新トレンドについての解説と共に、そんなテクノロジーを武器にして、どうやって稼げばいいのかについて、これまで以上に踏み込んで考えてゆこうと思います。また、働き方改革やこれからのビジネス戦略についても、皆さんに考えて頂こうと思っています。
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古い常識をそのままにお客様の良き相談相手にはなれません。
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- 開発と運用について大幅に追加改訂しました。
- デジタル・トランスフォーメーションについての解説を増やしました。
- 量子コンピュータについての記述を追加しました。
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追加・更新の詳細は以下の通りです。
ビジネス戦略編
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.5
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.11
【改訂】デジタル・トランスフォーメーション実践のステップ p.12
【新規】デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる能力 p.14
【改訂】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション p.15
【改訂】共創の3つのタイプ p.82
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】深層学習が前提となったシステム構造 p.68
開発と運用編
【新規】開発と運用:従来の方式とこれからの方式 p.15
【新規】アジャイル開発の基本構造 p.16
【新規】アジャイル開発の目的・理念・手法 p.23
【新規】スクラム:特徴・三本柱・基本的考え方 p.25
【新規】スクラム:スクラム・プロセス p.26
【新規】スクラム:プロダクト・オーナー p.27
【新規】スクラム:スクラム・マスター p.28
【新規】スクラム:開発チーム p.29
【新規】エクストリーム・プログラミング p.30
【新規】これまでのソフトウェア開発 p.58
【新規】これからのソフトウェア開発 p.59
【新規】Microsoft Azureによる予測モデルの開発方法 p.60
インフラ編
【新規】ストレージ・コストの推移 p.215
テクノロジー・トピックス編
【改訂】ソーシャル・グラフ 解説文・追加&改訂 p.4
【改訂】CSIRT解説文・追加&改訂 p.6
【改訂】3Dプリンター 解説文・追加&改訂 p.7
【改訂】RPA 解説文・追加&改訂 p.17
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82
ITの歴史と最新トレンド
*追加・変更はありません。
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
*追加・変更はありません。
サービス&アプリケーション・基本編
*追加・変更はありません。
クラウド・コンピュータ編
*追加・変更はありません。
【講演資料】量子コンピュータ
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82