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【図解】コレ1枚でわかる量子コンピュータ

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量子コンピュータとは何かを13枚のスライドにまとめてみました。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRAよりロイヤリティフリーにてダウンロードできます。

量子コンピュータの必要性

「ムーアの法則」が限界を迎えつつあります。一方で、IoTやAIの普及と共に、データ量は爆発的に増大し、必要とされる演算能力もまた増大しています。この状況に対応すべく、プロセッサー・コアの並列化やASIC、FPGAなどの特定の処理目的に最適化された半導体、スーパー・コンピュータを使うというという解決策が採られていますが、必ずしも十分なものとは言えません。量子コンピュータは、このような状況に対応する新たな解決策として注目されています。

特に、総当たりで計算しなければならない素因数分解や組み合わせ最適化問題、あるいは検索問題などで、劇的な演算速度の高速化が期待されています。

ただ、現段階では全ての演算問題を解くことができる量子コンピュータにめどが立った訳ではありません。そのため、一気にこれまでの古典コンピュータを置き換えるとことにはならないでしょう。ただし範囲の限られた演算問題であっても、実用での適用範囲は広く、早期実用化への期待が高まっています。

古典コンピュータで解けない問題

古典コンピュータで解けない演算問題とは、入力されるデータ数に応じて指数関数的に増大してゆく場合です。このような演算問題は、最大規模のスーパー・コンピュータでも実用に供しないこともあり、厳密解ではなく近似値を求めるアルゴリズムを使って対処しています。

巡回セールスマン問題(組み合わせ最適化)

「古典コンピュータで解けない問題」の典型的な事例として「巡回セールスマン問題(組み合わせ最適化)」があります。セールスマンの訪問先が複数あるとき、最も短い時間で全てを巡回する手順を見つける問題です。

この問題は、訪問先が増えるたびに指数関数的に巡回経路が増えてゆきます。例えば、8地点では2,520であるのに対し、20地点になると6京8000兆となり、我が国最高速のスーパー・コンピュータ「京」をもってしても6秒かかります。これかが、30地点になると4.42×10の30乗となり、「京」でも1,401万年かかる計算になります。

そこでこのような問題を解くためには、計算量を減らし「近似解」をもとめるやり方が一般的です。しかし、量子コンピュータであれば、このような「組み合わせ最適化」問題の「厳密解」を一瞬で計算してしまう可能性があるのです。

量子コンピュータとは何か

コンピュータとは、抽象的な「数字」を物理的な動きを使って演算する機械のことです。例えば、太古の昔は、石や木の棒を並べて数えるといった「演算」方法が疲れていました。算盤を使うといった演算の道具も使われるようになりました。その後、蒸気機関やモーターの動力を利用して演算する道具、あるいは、真空管や半導体素子の電子の動きを利用して演算する道具が登場します。これが、いま我々が使っている(古典)コンピュータです。

量子コンピュータとは、やはり物理的な動きである「量子」の動きや振る舞いを利用して演算するコンピュータです。

量子力学

量子コンピュータの原理を支えているのが「量子力学」です。私たちの世界を創っている物質や光などの様々な物理現象を産み出している最小単位が「量子」です。「量子」の持つ物理的な特徴は「量子効果」とも言われ、我々の直感とはかなり違った動きや振る舞いがあります。例えば、光の量子は「光子」と呼ばれ、粒子と波の2つの異なる状態を同時に併せ持っています。また、物質を通り抜けてしまう「トンネル効果」や、同時に2つの特性、例えば電流の向きが同時に2つの方向に向けて流れているなどの「重ね合わせ」状態を持つなど、我々が見て感じるマクロな世界の直感とは異なる物理的な現象が存在しています。

量子コンピュータは、この「量子」の動きや振る舞いを数字の「演算」に使おうというわけです。

量子コンピュータの適用分野

量子コンピュータは、そんな量子の動きや振る舞いを利用して、古典コンピュータでは時間がかかりすぎてとても解けないと考えられていた問題を高速で解くことができると期待されています。特に、素因数分解や検索、組合せ最適化問題への期待は高く、いま注目の人工知能にも劇的な進展をもたらすものと期待されているのです。

BitとQubit

古典コンピュータで用いられるビット(Bit)は、一時点で1か0のいずれかの値を持ちます。これは、電子回路のスイッチのON/OFFまたは電圧の高/低に対応したものです。一方、量子コンピュータでは量子ビット(Qubit)と呼ばれる単位が用いられます。これは、量子の振る舞いである「重ね合わせ」を利用し、一時点で1と0を同時に示すことができる単位です。

量子コンピュータが高速で計算できる理由

古典コンピュータで4ビットの演算を行う場合、16通りの組合せが存在し、その組合せひとつひとつを逐次計算しなければなりません。しかし、量子コンピュータであれば、1量子ビットは0と1の状態を同時に示します。そのため4量子ビットは、0と1の16通りの組合せを同時に示すこととなり、古典コンピュータでは16回繰り返さなければならなかった演算を1回でできてしまうことになります。これが、量子コンピュータが高速で演算できる理由です。

この量子ビットの数を増やしてゆけば、1回で演算できる組合せ数が増大してゆくため、演算速度は速くなってゆきます。

現在、最大で20量子ビットのコンピュータが利用可能な状態にありますが、50量子ビットを越えるあたりで、現在最も高速な古典コンピュータであるスーパー・コンピュータを越える(量子スプレマシー/量子超越性)と言われています。

量子コンピュータの種類

量子コンピュータは、現在2つの方式が実用に向けて開発が進められています。1つは、「量子ゲート」方式で、古典コンピュータでできるあらゆる計算に対応する汎用的なものです。「量子スプレマシー」の可能性が期待されているのは、こちらのコンピュータです。現在、最大で20量子ビットのコンピュータがクラウド・サービスとして利用可能な状態にあります。また、IBMは50量子ビット、Googleは49量子ビットのコンピュータを数年のうちにリリースすると表明しています。

しかし、「量子ゲート」方式で利用できるアルゴリズムが、未だ揃っていない状況にあり、「理論的には汎用計算ができるはず」ではあるのですが、それができる状態にはありません。

もうひとつは「量子イジング・モデル」方式です。こちらは、組み合わせ最適化問題に特化したコンピュータです。組み合わせ最適化問題に特化しているとはいえ、実用面での適用分野は広く、実用化では大きく先行しています。

カナダのD-Waveが2014年に商用製品を発表し、Googleや NASAなどの企業で使われ始めています。また日本のNTTも2017年11月よりクラウド・サービスとしての提供を始めています。

量子コンピュータの現状

「量子イジング・モデル」方式が実用面では先行した状況にありますが、IBMやGoogle、Microsoftが「量子ゲート方式」の開発を熱心に進めています。ただ、「量子ゲート方式」でのアルゴリズは、まだ未発見の領域も広く、本格的な実用化には、まだしばらくの時間がかかるでしょう。

自然現象を借用したアルゴリズム

ところで、量子コンピュータが登場する以前は、自然現象のメカニズムを古典コンピュータでシミュレートし「組合せ最適化問題」などを効率的に解こうというアプローチが行われてきました。ただし、演算規模が大きくなるため「近似解」を求めるしかありませんでした。

この自然現象のひとつである「量子アニーリング」を、ソフトウェアによるシミュレーションではなく物理的な現象として再現することで、「近似解」ではなく「厳密解」を求めようと生まれたのが「量子イジング・モデル」方式のD-Waveです。NTTのQNN(量子ニューラルネットワーク)も人間の脳の中で行われている神経活動のメカニズムを使っているようです(現在、確認中)。

量子イジングマシンとスパコン

「量子イジング・モデル」方式は、全ての演算問題を解けるものではありません。しかし、組合せ最適化問題に限れば、既存のスーパー・コンピュータを凌ぐ速度と低消費電力、そして「厳密解」が期待されており、実用面での注目が高まっています。

D-Waveの計算原理

「量子イジング・モデル」方式で先行しているD-Waveは、絶対零度に冷やされた超伝導状態の素子が、同時に2つの電流の向きを持つ特性を使い、これを量子ビットの0と1の「重ね合わせ」状態と見立てて、量子計算を行おうというアプローチです。

まず不安定な超伝導素子の重ね合わせ状態を強い磁場で安定させます。そして、その素子同士の相互作用を解くべき問題に合わせて設定します。これは、古典コンピュータのプログラムに相当します。徐々に磁場を弱くして相互作用を強めてゆくと、設定した相互作用に最適化された電流の方法がひとつに決まります。これが、組み合わせ最適化問題の「厳密解(あるいは、厳密解に近い近似解)」になります。つまり、何度も計算しなくても1回の計算で解を求めることができるのです。

誤差が含まれることが考えられるためD-Waveでは複数回、同じ操作を行い、確認しているのだそうです。

なお、ここに紹介したスライドを含め3000ページほどを、ロイヤリティフリーでダウンロード(パワーポイント形式、ワード形式、エクセル形式)できる「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」を公開中です。よろしければご活用下さい。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

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2017年12月版・改訂/追加リリース

最新版【12月版】を更改しました

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・量子コンピュータのプレゼンテーションを追加しました。
・各チャートの解説文を大幅に追加・改訂しました。
・デジタル・トランスフォーメーションについて追加・改訂しました。
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追加・更新の詳細は以下の通りです。

ビジネス戦略
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.5
【新規】デジタル・トランスフォーメーション実践のステップ p.11
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.12
【新規】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション p.13
【改訂】SIビジネスの変革を牽引するトレンド p.16
【新規】収益を生みだすビジネス構造 p.17
【新規】働く現場で何が起こっているのか? P.33
【新規】SI事業者の「働き方改革」 p.34
【新規】「働き方改革」で何を目指すのか p.35

開発と運用
【改訂・解説文】情報システムにもとめられる品質 p.5
【改訂・解説文】これからの開発と運用 解説文の改訂 p.6
【改訂・解説文】開発と運用の関係や役割を変革するDevOps p.25
【改訂・解説文】コンテナとDevOpsの関係 p.36
【改訂・解説文】コマイクロサービス p.38
【改訂・解説文】イベント・ドリブンとコレオグラフィ p.39
【改訂・解説文】超高速開発ツール p.41
【改訂・解説文】コレ1枚でわかるFaaS  p.42
【改訂・解説文】これからのITとITビジネス p.48
【改訂・解説文】SRE(Site Reliability Engineer) p.49
【改訂・解説文】APIエコノミー p.51

インフラとプラットフォーム
【改訂・解説文】サーバー仮想化とコンテナ p.95
【改訂・解説文】デスクトップ仮想化とアプリケーション仮想化 p.97
【改訂・解説文】ストレージの仮想化 p.102
【改訂・解説文】SDNとNFV p.103
【改訂・解説文】SD-WAN p.104
【改訂・解説文】サーバー仮想化の3つのメリット p.106
【改訂・解説文】コンバージド・システムとハイパーコンバージド・システム p.135
【改訂】ストレージ性能の推移/1台当たりの容量 p.214
【新規】インフラでの重複排除/圧縮 p.220

テクノロジー・トピックス
【改訂・解説文】「ムーアの法則」と「メトカーフの法則」 p.5
【改訂】VRとARとMR (MRを追加、チャートと文言を改訂) p.14
【新規】従来の方法(集中台帳)とブロックチェーン(分散台帳) p.37
【新規】「量子コンピュータ」についての新章を追加 p.66〜79
 量子コンピュータの必要性
 これまでの古典コンピュータで解けない問題
 循環セールスマン問題(組み合わせ最適化)
 量子コンピュータとは何か
 量子力学
 量子コンピュータの適用分野
 BitとQubit
 量子コンピュータが高速で計算できる理由
 量子コンピュータの種類
 量子コンピュータの現状
 自然現象を借用したアルゴリズム
 量子イジングマシンとスパコン
 D-Waveの計算原理

ITの歴史と最新のトレンド
*追加・変更はありません

サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能
*追加・変更はありません

サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
*追加・変更はありません

サービス&アプリケーション・基本
*追加・変更はありません

クラウド・コンピューティング
*追加・変更はありません

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