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IoTを「テクノロジー」ではなく「ビジネスのフレームワーク」と捉えてみてはどうだろう

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「うちもIoTで何かできないのか?」

そんな社長のひと言に、さてどうしたものかと頭を抱えてはいないでしょうか。そこで、IoTとは何かを調べてはみたものの、はっきりとした定義は見つかりません。そもそも何がIoTなのかがよく分かりません。それも当然のことで、IoTというテクノロジーはないからです。

IoTとは、デジタル・データを活用したビジネス課題を解決するためのフレームワーク

このように捉えてみてはいかがでしょう。これまでは、人間の知見に頼り判断していたところを、センサーで集めたデータでリアルタイムに「事実」を捉え、機械学習や統計的な分析で何が起こっているかを解釈し、そこから最適解を求めるやり方に置き換えようというのです。そして、そこで得られた最適解でアプリケーションを動かし、現実世界にサービスを提供します。その結果生じた変化が再びセンサーによってデジタル・データとして集められます。言うなれば、現実世界とサイバー世界が一体となって、リアルタイムで改善活動を繰り返しているような仕組みを作ろうというわけです。この仕組みは、サイバー・フィジカル・システム(Cyber-Physical System)とも呼ばれています。

このように捉えると、IoTといわれるものが、様々なテクノロジーの組合せによって実現すること、また、どのようなビジネス課題を解決するかによって、使われるテクノロジーの組合せがまるで違ったものになってしまうことが分かります。

例えば、「土木工事の自動化サービス」を考えれば、次のような組合せになるでしょう。

  • 解決したいビジネス課題
    • 土木工事需要の拡大
    • 熟練作業員の高齢化
    • 困難を極める若者人材確保
  • データ収集
    • ドローンによる工事現場の空中撮影(カメラ)
    • 建設機械の高精度位置情報(GPS)
    • デジタル化された施工情報(3次元CAD等)
  • データ解析
    • 平面画像から高精度3次元立体図面を合成
    • 土量分析・作業分析
    • 工程・工期シミュレーション
  • データ活用
    • 建設機械の自動制御・作業支援
    • 工程変更支援
    • ドロー測量により進捗把握

「ビル設備管理サービス」になれば、この組合せは変わり、自律走行車になれば、それもまた違うものになります。どのようなビジネス課題を解決したいかにより、必要なデータは違います。そうなると、センサーも収集方法も変わります。また、何を知りたいかにより解析のためのアルゴリズも変わります。当然、アプリケーション・サービスも様々です。

ビジネス課題が何かから始まり、それを解決するための仕組みを考える枠組みが、IoTなのです。

このように考えると、「IoT=テクノロジー」と捉えることには違和感を覚えます。むしろ、「IoT=テクノロジーを活かしたビジネス・フレームワーク」と捉えたほうが自然かもしれません。

この視点に立つと、IoTには次の2つのビジネスの可能性が見えてきます。

IoTというビジネス・フレームワークを実現するためのプラットフォームや部品となるソフトウェア/ハードウェアを提供するビジネス。もうひとつは、

IoTというビジネス・フレームワークに基づくアプリケーション・サービスを提供するビジネス

前者はデバイスの認証やデータの管理・保管、分析サービスの提供などのプラットフォーム、LPWAなどの通信回線、センサーや組み込みモジュールなどのハードウェアとなります。この場合は、アプリケーション開発やサービス提供者が顧客となります。後者は、土木工事の自動化サービスやビル設備管理サービス、ジェットエンジンのレンタルサービスなどとなります。この場合は、自らがサービス事業者となり、顧客はそのサービスの利用者となります。

IoTサービスを実現するシステム開発ビジネス、つまり従来からのシステム・インテグレーションの延長に「IoTビジネス」を捉えることもできます。しかし、次の点で従来のやり方とは大きく異なることを想定しておかなければなりません。

お客様が変わる:情報システム部門ではなく、IoTのフレームワークでビジネスを立ち上げたいお客様、つまり事業部門が顧客となります。

開発の仕方が変わる:前提となる既存のビジネスがある場合、お客様は何をして欲しいのかを要求することができます。しかし、これまでにはないビジネスを作るわけですから、要求は明確ではありません。またITの専門家ではない事業部門ですから、ITで何ができるのかが分かりません。そんなお客様の相談相手となり、お客様と一緒になって、ビジネス・モデルやプロセスを創らなければなりません。これまでのように、お客様に要求を決めてもらい、それを整理してシステムを開発することはできないのです。

SIビジネスの目的が変わる:お客様はサービスの提供期間を通じて事業環境の変化に臨機応変かつ迅速に対応しなくてはなりません。つまり、お客様の事業の成果に直接貢献するための取り組みが必要になります。従来のようにQCDを守り、仕様書通りのシステムを作ることはできません。

「うちもIoTで何かできないのか?」

そんな社長の言葉に応えるのであれば、まずはどこに軸足を置くかです。そこを曖昧にしたままでは、IoTビジネスはありえません。

IoTだけではなく、「人工知能で何かビジネスはできないのか?」も同様です。プラットフォームや部品を提供するのか、アプリケーション・サービスを提供するのか、その立ち位置をはっきりさせることです。

あるいは、これまでのSIビジネスの延長として捉えるのなら、お客様が変わる、開発の仕方が変わる、SIビジネスの目的が変わることを考えておかなければなりません。

お客様が情報システム部門から事業部門に変われば、コストとしての工数から、投資としてのROI(Return on Investment)すなわち、投資に対する利益効率が採用の基準となります。当然、提案や見積の仕方は変わります。収益を確保する方法も変えなくてはなりません。

開発の仕方が要求仕様ありきから共創して仕様をまとめ上げてゆくやり方に変われば、ITでこれまでできなかった何ができるようになるのか、これまでとは違う新たなビジネス価値への回答を求められるようになるでしょう。ITやビジネスのトレンドに精通し、お客様の良き相談相手となって、新しいビジネスを作ることに貢献できなくてはなりません。

SIビジネスの目的が仕様書通りのシステムを作ることから事業の成果に直接貢献することに変われば、アジャイル開発やDevOpsへの取り組みは前提となり、PaaSやサーバーレス、超高速開発による変更に即応できる開発や運用環境にシフトすることが必須となります。

いずれにしろ、従来型の業務効率改善を目指す基幹業務システムや業務システム同じやり方は通用しないことは覚悟しなくてはなりません。

これまでのやり方では高収益は目指せない、だからIoTや人工知能といった新しいテクノロジーに新たなビジネスのチャンスを見出そうというのは分かりますが、それは同時にこれまでの収益のあり方や提案の仕方、相手となるお客様など、従来のやり方を変えることでもあるのです。また、そのビジネスに関わる社員の業績評価基準も変えなければ、現場のやる気を喚起することはできません。そこまで含めて新規事業開発の範疇であることを忘れないようにしたいものです。

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