最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

機械に置き換えられる営業とそうでない営業の違い

»

言い古された言葉かもしれませんが、「御用聞き営業では通用しない」、「モノ売り営業では生き残れない」などということを聞くたびに、じゃあどういう営業なら生き残れるのかということを考えてしまいます。

インターネットなどなかった時代、営業は、お客様が知らない新製品やテクノロジーの情報を持つことで、自らの存在意義を保つことができました。このような情報の非対称性が崩れてしまったのが今の時代です。特に、IT業界に於いてはこの傾向は極めて顕著で、企業の公式な情報だけではなく、コミュニティやブログなどのプライベートな情報も広く流通することで、お客様と営業は、情報を得られる手段に於いて対等になってしまいました。また、業務の現場に日々接しているお客様は、課題やニーズを誰よりも知っています。当然、それを解決したいという明確な目的を持って情報を探すわけですから、的確な情報が集まってきます。この点に於いては、お客様が圧倒的に優位な立場にあり、もはや「お客様の知らない情報を提供できる」ことで、営業としての存在意義を保つことはできません。

また、見積を作る、契約手続きを行うと言ったことは営業事務であり、Webツールや人工知能に簡単に置き換えられるし、「こんなことを考えている」、「こんなことで困っている」といった質問に答えるのであれば、Watson君のほうが、遥かに適切なアドバイスをしてくれるようになるでしょう。

また、企業によっては、新規顧客の開拓を営業に依存している企業も少なくありませんが、「顧客の購買決定の7割りは営業との対面前に行われている」状況にあり、リードの獲得に高い営業コストを払うことは合理的ではありません。むしろマーケティングにリソースを配分し、仕組みでリードを獲得するほうが賢明です。

このような状況の中で、営業はどのようにして、その存在意義を見出してゆけば良いのでしょうか。

「あるべき姿」に応える

スクリーンショット 2017-02-08 6.38.58.png

お客様からPC x 100台の見積依頼を頂いたとしましょう。貴方はこれにどのように応えるでしょうか。必要な仕様を確認し、納期や金額などの諸条件を確認して見積を作っているとすれば、もはや営業がやらなくてもWebツールで代替できます。もし、ここに営業が関わるとすれば、競合他社との値引き競争との駆け引きかもしれません。これとても、お客様からすればめんどうな話ですから、価格.comのようなサービスに頼り、機械的に手続きをすればいい話です。

もし、ここで営業が役割を果たせるとすれば、「なぜPC x 100台なのか?」をお客様に尋ね、その目的、すなわち、お客様が求める「あるべき姿」を明らかにすることでしょう。

例えば、「新商品の発売に合わせて、受注受付のコールセンター要員を100人増やすので、そのためにPC x 100台が必要」ということを教えてもらうことができれば、お客様はPC x 100台がほしいのではなく、「増加する受注に対応すること」が目的であることが分かります。つまり、PC x 100台は、手段であって目的ではないということです。

この目的こそが、お客様が実現したい「あるべき姿」であり、もしその実現のためにもっと有効な手段があれば、そちらを選択したいと思うはずです。

例えば、CRM導入して応対時間を半減できれば、追加要員は半減でき、PCは50台で済みます。人件費という固定費を半減できるばかりか、オフィススペースや設備投資も半減できます。あるいは、業務内容に踏み込んで考え、ビジネス・プロセスを見直すことで、全てをWebでの手続きに変えれば、人件費も設備投資も不要になります。

「PC x 100台」という手段に応えるのではなく、「増加する受注に対応する」という目的、すなわち「あるべき姿」に答えを出せるのは、Webツールや人工知能では困難です。そのためには、お客様の業務や経営に関心を持ち、お客様がもとめる「あるべき姿」を追求する心構えがなくてはなりません。

「未来」に責任を持つ

IT営業は、お客様の3年後に責任を持たなくてはなりません。なぜなら、提案し、実現したシステムは、少なくとも3年程度は使いづけるからです。その3年後にもはや陳腐化し、使い物にならないものであったとしたら、それは無駄な投資であり、お客様に多大な迷惑をかけることになります。

では、3年後に生き残るITの選択肢をどうやって知ることができるのでしょうか。それは、ITのトレンドに関心を持ち、それを追いかけ続けることです。

トレンドを知るとは、最新のキーワードを集めることではありません。歴史を振り返り、その中に「今」を位置付け、「未来」がどうなっているかを知ることです。巷にあふれるITの様々なキーワードは、そんな歴史の必然の中から登場したものです。その必然の理由やメカニズムを知ることでもあるのです。

「ITは変化が激しいのでそんな未来など予測できません」という人がいます。しかし、1975年に出版された「人月の神話」が未だ真実であるように、また、1984年の「失敗の本質」を未だ多くの人が読み続けているように、不変の原則は必ずあります。その一方で、製品や企業は、厳しい競争に晒され、社会的評価や競争優位性がめまぐるしく変わります。この不易(かわらないこと)と流行(かわること)の違いを理解し、見極めることこそ、トレンドを知ることでもあるのです。

3年後に、製品や企業の力関係は変わっているかもしれません。また、実装技術も変わっているかもしれません。しかし、考え方やアーキテクチャーは、3年程度であれば、かなりしっかりと予測できます。そういうことをしっかりと提言でき、お客様をリードすることは、容易に機械に置き換えられることではありません。

「メディア」になる

「人脈」という言葉があります。これは決して、どれだけの人を自分が知っているかではありません。どれだけの人に自分が知られているかです。知られる存在になってこそ、人は相談を持ちかけてくれるのです。こちらがどれだけ知っていようとも、自分が知られていなければ、信頼して話を聞いてはくれません。メディアになるとは、「知られる存在としての人脈」を拡げる活動です。そうやって広がった人脈の志を束ね、大きな力にしてゆくことが、営業の役割だといえるでしょう。

情報は検索すれば手に入ります。ならば、その情報の強力な発信源となれば、自ずとお客様は引き寄せられます。お客様に売り込み、相談し、お願いする営業から、お客様を引き寄せ、相談され、お願いされる営業へと変わらなければ、営業としての存在意義を失うことになるでしょう。これこそが、従来の「営業」とこれからの「営業」の本質的な違いになるのです。

ブログやフェイスブックなどソーシャルメディアの普及により、誰もが簡単に自分をメディアにすることができるようになりました。それは、個人ばかりでなく企業もまたしかりです。このような手段を使い、広く不特定多数の人に呼びかけることだけが、メディアになることではありません。自分の担当するお客様を対象とした勉強会、業務や経営に関わる話題についての情報提供など、お客様専属のメディアになることも、ひとつのやり方です。

いろいろなコミュニティや勉強会に参加して、社員や取引関係者以外に知り合いを増やすことも大切です。そういうイベントを自ら仕掛けてゆけば、強力なメディアになることができます。

お客様を先取りして役立つ情報を発信しつづけることで、高い問題意識と志を持つ人たちを引き込み、共感を集めることができます。さらにその輪を拡げ、組織をあげた取り組みに仕立て上げてゆくことができるのです。そういう営業スタイルが、これからは求められてゆくでしょう。それができない受身の営業のままでは、営業としての存在意義を失ってしまうでしょう。

しかし、よく考えてみれば、この取り組みは、「マーケティング」そのものです。ただ明確な違いは、営業目標を達成することです。その責任こそ、営業の存在意義であるとすれば、その活動内容に営業とマーケティングを区別する必要はありません。むしろ積極的に、営業とマーケティングの新たな定義と融合をめざすべきかもしれません。

「それは営業の役割を超えている」

ここにあげた3つの取り組みをご覧になり、もしこのように思われるのであれば、その発想自体が、もはや時代遅れなのです。自身の役割について、このような自己規定を持ち続けている限り、営業であろうとなかろうと、自らの存在意義を失ってしまうでしょう。

これまでの「当たり前」は、新しい「当たり前」に置き換わります。これまでのことしかできない営業は、稼げない営業として、役割を失ってゆくことになるでしょう。営業という仕事の創造的破壊が進行しているのです。

手段としての「営業」が、時代と共に変わってきたこと、そして、これからも変わり続けることを受け入れなければなりません。しかし、お客様の経営や事業に貢献し、その結果として、自社の業績に貢献するという「あるべき姿」としての営業に変わりません。ならば、その時々の最適な手段で、この実現をめざすだけのことです。

最新版(2月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

LIBRA_logo.png

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*ビジネス戦略のチャートと解説を充実させました。
*人工知能の動画事例を追加しました。
*大手IT企業の現場改善大会での講演資料を掲載しました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ビジネス戦略編 106ページ
新規チャートの追加と解説の追加
【新規】ビジネス・プロセスのデジタル化による変化 p.6
【新規】ビジネスのデジタル化 p.17
【新規】ビジネス価値と文化の違い(+解説) p.19
【新規】モード1とモード2の特性(+解説) p.21
【新規】モード1とモード2を取り持つガーディアン(+解説) p.22

人工知能編 98ページ
【新規】Amazon Alexa (+解説) p.18
【新規】動画での事例紹介 Amazon Go p.94
【新規】動画での事例紹介 Amazon Echo p.95
【新規】動画での事例紹介 Tesla p.96
【新規】動画での事例紹介 Nextage p.97

IoT編 93ページ
LPWAについての記載を追加、また日米独の産業システムへの取り組みについて追加しました。
【新規】LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの位置付け p.47
【新規】ドイツでインダストリー4.0の取り組みが始まった背景 p.82
【新規】アメリカとドイツの取り組みの違い p.88
【新規】インダストリー・インターネットのモデルベース開発 p.90
【新規】日本産業システムが抱える課題 p.91

インフラ編 294ページ
【新規】Googleのクラウド・セキュリティ対策 p.72

基礎編 50ページ
変更はありません。

開発と運用編 66ページ
全体の構成を見直し、チャートや解説を追加しました。
【新規】自律型の組織で変化への柔軟性を担保する p.20
【新規】超高速開発ツール(+解説) p.37
【改定】FaaS(Function as a Service)に解説を追加しました p.39

トレンド編 
変更はありません。

トピックス編 
変更はありません。

【講演資料】変化を味方につけるこれからの現場力
大手IT企業の改革・改善活動についての全社発表会に於いての講演資料。
・実施日: 2017年1月25日
・実施時間: 90分
・対象者:大手IT企業の改善活動に取り組む社員や経営者

詳しくはこちらから

LIBRA_logo.png

新刊書籍のご紹介

未来を味方にする技術

これからのビジネスを創るITの基礎の基礎

  • ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
  • ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
  • お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から"あたらしい常識" の作り方が見えてくる。2017年1月6日発売
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4 Amazonで購入
未来を味方にする技術

人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から"あたらしい常識" の作り方が見えてくる。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する