オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

「ITの専門家ではない人たちに、ITの価値や付き合い方を伝える」まもなく出版

»

1950年代に企業で使われるようになったコンピューターは、給与計算や部品表展開などの大規模な計算の作業効率を上げる道具として使われはじめました。さらに、工場の工作機械や鉄道などの大がかりな設備の監視や制御にも使われるようになり、人間のやってきたことを置き換えて自動で仕事をこなす道具としても使われるようになってゆきます。

1980年代に入り、コンピューターは文書作成や表計算などの個人の道具としても使われるようになります。そして、パソコンやスマートフォンの普及と共に、道具としてのコンピューターはますます身近なものとなりました。さらに、家電製品や自動車などにも組み込まれ、その存在を意識することもないままにコンピューターは私たちの日常の道具として使われるようになったのです。

コンピューターは道具としての役割ばかりではありません。紙の伝票や伝言で行われていた仕事の流れも置き換えてゆきました。言い換えれば、人間の経験やノウハウで成り立っていた仕事の仕組みがプログラムに置き換えられて、コンピューターそのものが仕組みとしての役割を果たすようになったのです。例えば、お客様からの注文を画面から入力すれば、どのような手順で一連の手続きが進められるのかを知らなくても、商品は出荷され請求書も発行されます。コンピューターによって作られた仕組みを使って私たちは仕事をしています。むしろ、仕組みとしてのコンピューターに仕事をさせられているとみるべきかもしれません。正しい仕事の手順を確実に、効率よくこなすためには、コンピューターが指示する手順通りに仕事を進めるしかないからです。

仕事ばかりではありません。買い物や役所の手続き、銀行での入出金や振込など、仕組みとしてのコンピューターなくして仕事も生活もできないほどに、私たちはコンピューターに支えられています。

また、コンピューターはお互いにネットワークでつながり、どこにいても様々な仕組みが使えるようになりました。例えば、電子メールやソーシャルメディアなどのコミュニケーション、ゲームや写真共有などのエンターテイメント、検索や地図・カーナビなどの情報収集の手段としても当たり前に使われています。

その当たり前を前提に私たちは物事を考え、判断し、行動しています。つまり、価値観や判断基準といった思想にもコンピューターは影響を与えています。

「コンピューターは道具」であり、はさみや定規のように、それをどのように使いこなすかはその人次第という考え方があります。しかし、「仕組みとしてのコンピューター」に人は仕事をさせられ、「思想としてのコンピューター」に価値観や判断基準をも左右される現実を考えれば、「道具としてのコンピューター」という見方だけで、その価値を正しく理解することはできません。

昔もそうだったという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、世の中に存在するコンピューターの数は桁違いに増えています。例えば「コンピューター」であることを意識することのないような家電製品や日用品にもコンピューターが組み込まれ、誰もがスマートフォンというハンディなコンピューターを持ち歩いているのです。しかも、それらがネットワークでつながり、お互いが連携・協調しながら、様々な仕事をこなし人と人とのつながりを生みだし、世の中を動かしています。また、コンピューターの機能・性能は、手元にあるパソコンやスマートフォン、モノなどのカタチや大きさとは無関係に、ネットワークでつながった先にある「クラウド・コンピューティング」と言われる無尽蔵の計算能力やデータ保管の仕組みを使いこなし、昔では考えられなかったインテリジェンスを与えられているのです。当然に、社会やビジネスへの影響力は過去とは比べものにならないほどに絶大なものとなっているのです。

このような時代に、これからのビジネスを考える時、過去のやり方は通用しません。コンピューターやその周辺のテクノロジーの進化を前提に考えて行かなければなりません。つまり、「思想としてのコンピューター」が教えてくれる新しい常識を前提に革新的なビジネス・モデルをデザインし、「仕組みとしてのコンピューター」を駆使して、効率のいいビジネス・プロセスを構築し、最新の「道具としてのコンピューター」を活かして、これまでに無いユーザー体験(ユーザー・エクスペリエンス)を提供する。そんな考え方が求められているのです。

過去の歴史を振り返ってみると、次のような一貫した事実が見えてきます。

  • コンピューターの台数は増え続けている。
  • コンピューター同士の接続は増え続けている。
  • 自動化や自律化の範囲は拡大し続けている。

この事実はこれからも変わりません。ならば、その延長線上に何が起こるかを考えてゆくことが大切になるのです。

コンピューターとその周辺技術を総称し、私たちはIT(情報技術)と呼んでいます。そんなITに関わり仕事をする人たちにとっては、この現実は当たり前のことかもしれません。しかし、未だ多くの企業の経営者や事業部門の人たちは、「ITは道具である」程度にしか理解していません。また、「ITは難しいから」と積極的に関わることを避ける方々も少なくはありません。このような常識を変えてゆかなければ、社会やビジネスの革新は生まれず、日本という国の成長も期待できません。

sample.png

私はこれまで、ITを提供する側の立場からこの事実を指摘し、書籍や講演などを通じて変革を促してきました。しかし、「お客様が変わらなければ、ビジネスは変わらず、変革も進まない」という現実に直面しています。ならば、「お客様」である企業の経営者や事業部門でITとの関わりが少なかった、あるいは避けていた専門外の人たちにITの役割や価値、ITがもたらす時代の変化、この変化にどのように向き合えばいいかを伝え、「お客様」を変えなければいけないのではないかと考えるようになりました。提供する側と使う側が共に同じ方向を向き、共に進んでゆけば世の中は大きく変わるのではないでしょうか。

そんなことを考え「ITの専門家ではない人たちに、ITの価値や付き合い方を伝える」ことを目的に書籍を執筆しました。12月出版にむけて準備をしていますので是非ご期待下さい。

11月改訂版をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

  • 「情報セキュリティのジアタマを作る」を新掲載!
  • 「アテにされるためにはどうすればいいのか」そんな新しい講演資料も掲載しました。
  • 他にも大幅にドキュメントを追加・更新致しました。解説文も増えています。

LIBRA_logo.png

【講演資料とトピックス】

【新規】ITソリューション塾・特別講義・Security Fundamentals / 情報セキュリティのジアタマを作る
【新規】講演資料・アテにされる/どういうこと?どうすればいいの?

【サービス&アプリケーション・基本編】

【新規】オープンソース・ソフトウェア(OSS)  p.74-90
オープンソース・ソフトウェアについて、全17ページの新しい章を作りました。

【サービス&アプリケーション・先端技術編】

【新規】IoTに期待される経済価値 p.10
【更新】IoTの2つの意味 p.16
【新規】IoTの仕組み p.17
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの進化 p.18
【新規】IoTの三層構造 p.43
【更新】クラウドから超分散へ p.45
【新規】LPWAネットワークの位置付け p.46
【新規】LPWAネットワーク 通信規格一覧 p.47
【更新】IoTのビジネス・レイヤ p.48
【新規】人工知能の適用領域 p.131

【インフラ&プラットフォーム編】

【新規】クラウド・コンピューティングの起源  p.25
【新規】メインフレーム、クライアントサーバー、クラウド p.107
【更新】ウェアラブル・デバイスの種類と使われ方 p.115
【新規】ユビキタスからアンビエントへ p.116
【新規】2014年以降のMicrosoftの新戦略 p.142
【新規】統合システム(Converged System)の分類 p.191
【新規】ハイパーコンバージドの仕組みと特徴 p.193-194
【更新】コンバージドとハイパーコンバージド p.195-196

【テクノロジー・トピックス編】

【新設+更新】FinTechとブロックチェーンについて新しい章を作り、ブロックチェーンの記述を大幅に増やしました。 p.24-37

【ITの歴史と最新トレンド編】

変更はありません。

【ビジネス戦略編】
追加・変更はありません。ただし、解説文を増やしました。

LIBRA_logo.png

Comment(0)