オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

「安心な存在」と「信頼される存在」の違い

»

「あなたがいうのなら大丈夫でしょう。お任せします。」

お客様にそういわれることこそ、営業の醍醐味だと私は思っています。

「安心な存在」と「信頼される存在」。前者は、「この人なら自分に不利益をもたらすことはないだろう」と思わせる存在です。後者は、さらに積極的に「この人なら自分たちに利益をもたらしてくれるだろう」と期待させる存在です。

MA-image-1-18-16.jpg

お客様と誠実に向き合うことは、営業の基本動作です。それは、自然とお客様に伝わるでしょうし、良い人、すなわち「安心な存在」として認めてもらえるはずです。しかし、どんなに良い人であっても数字をあげられなければ、営業としては意味がありません。

かつて、私が現役の頃、上司にいわれた言葉があります。「営業の人格は数字だ」。人間としてどんなに良い人であっても数字をあげられなければ、「営業としての人格は劣る」ということです。つまり、お客様にとって、安心な存在であるだけでは、営業としては、失格なのだということです。

だからといって、お客様の利益ではなく、自分の数字というこちらの利益だけを追い求めても、お客様に受け入れられるものではありません。お客様の利益を追い求めてこそ、結果としての数字がついてくるのです。

あるユーザー企業のサポートで、ソリューション・ベンダーからの提案に立ち会う機会がありました。そのうちの一社の提案がまさに「悪い例」の典型でした。

お客様の「困った」を解決するのではなく、「自分たちにはこんなことができます。こんな製品があります。こんなにすごいんです」といった説明ばかりでした。自慢話というか、世の中の常識はこういうもので、きっと知らないから教えてあげましょうというような、高飛車な印象も受けました。この説明にお客様は、

「確かにあなたの提案のいいところは分かりました。しかし、こちらがお願いしたことは運用の負担は軽減です。これではその解決にならないではないですか。」

営業の答えは、

「確かにそうですが、御社が優先すべきは運用負担の軽減よりも、セキュリティの強化だと考え、この提案をお持ちしました。」

こちらを慮り、期待以上のものを持ってきてくれたと思いたいところですが、結局は自社に適切な解決策がなく、なんとか手持ちの製品を無理に押し込んできただけのことだったようです。

相手の利益ではなく、自分たちの利益を優先しているとの印象を受けたのは、私だけではなかったようです。もし、適切な解決策がないのなら、それを正直に伝え、考えうる次善の策か、他社の提供する手段を提示すべきです。お客様の立場でお客様の利益を追求する人、つまり、信頼される存在とは、そういうことができる人なのだろうと思います。

確かにこれでは数字にならないでしょう。しかし、それは一時的なことであり、信頼できる存在と認められれば、お客様はきっとまた相談してくれるはずです。そういう関係を多くのお客様で築くことができれば、結果として数字はついてきます。

安心(assurance)とは、自分に不利益をもたらさないであろうという評価です。それに対して、信頼(trust)とは、自分に利益をもたらしてくれるであろうという期待です。どちらもこちらから求めるものではなく、相手が感じることなのです。

「安心な存在」となることは、日常のお客様との関わりの中で、自然と築き上げられてゆきます。しかし、「信頼される存在」になるためには、「決心」と「努力」と「意思」が必要です。そのためには、相手に成功してほしい、幸せになってもらいたい。そういう強い愛情がなければ、できないことだろうと思います。

【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【2016年7月版】

LIBRA_logo

*** 全て無償にて閲覧頂けます ***

最新版【2016年7月】をリリースいたしました。

【インフラ&プラットフォーム編】(294ページ)

クラウドを知る上で役に立つ基礎知識を追加しました。

【新規】クラウドのための知っておくべき基礎知識 p.14-21
【更新】+【新規】SOA(Service Oriented Architecture) p.69-80
【更新】増えるRDBMS以外のデータベース p.211
【更新】NoSQL p.226-239
【新規】ソフトウェア化する世界 p.9
【更新】モバイルとクラウドクライアント p.99-102
【新規】マイクロソフトのクライアント戦略 p.129
【更新】各社のクライアント戦略 p.131
【新規】仮想化されたシステム構成 p.140
【新規】SDIについての新しい解説 p.145-151
【更新】コンテナ型仮想化とDocker p.166

【アプリケーション&サービス編】(246ページ)

APIエコノミーとFineTechをわかりやすく解説

【新規】M2MとIoTの違い p.8
【更新】デジタルコピー/デジタル・ツイン p.20
【新規】「モノ」のサービス化(カメラ編) p.27
【更新】コマツの取り組みに新しい動画を追加 p.57
【新規】BIとAIの関係 p.127
【新規】なぜいまは人工知能なのか p.147
【新規】各社が機械学習サービスをクラウドで提供 p.155
【新規】システム資産・運用の歴史的変遷 p.210
【新規】ウォーターフォール開発とアジャイル開発 P214-216
【更新】DevOps p.223
【新規】APIエコノミー p.225-228
【新規】FinTech 新しいチャート p.232

【ビジネス戦略編】
今月の改定はありません。

閲覧は無料です。ダウンロード頂く場合は会員登録(500円/月)が必要となります。
http://libra.netcommerce.co.jp/

まずは、どのような内容かご覧頂ければ幸いです。

「ポストSIビジネスのシナリオをどう描けば良いのか」

これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。

その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。

「システムインテグレーション再生の戦略」

si_saisei_w400

  • 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
  • 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
  • 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。

また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。

こんな方に読んでいただきたい内容です。

SIビジネスに関わる方々で、

  • 経営者や管理者、事業責任者
  • 新規事業開発の責任者や担当者
  • お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
  • 人材育成の責任者や担当者
  • 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
  • プロジェクトのリーダーやマネージャー
Comment(0)