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ITのカンブリア大爆発

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「歴史を振り返れば、変化のなかった時代など、かつてなかった。」

誰の言葉かは忘れましたが、好きな言葉のひとつです。

だからこそ、変化に向き合うことが成長なのでしょう。ビジネスもまた、変化に向き合い、適応してゆくことで生き延びてきたともいえます。そして、この言葉は、これからも同様に真理であり続けるはずです。

この変化には、「劇的な変化」と「持続的な変化」が、交互に現れます。

「劇的な変化」とは、ある大きな出来事がきっかけとなって、これまでの非常識を常識に変えてしまうきっかけとなる変化です。この段階では、変化はエポックメイキングな出来事であって、多くの人々に知られ、きっと世の中が変わってしまうかもしれないと、人々が気付き始めます。しかし、現実は、過去の常識と混在し、その落ち着き所を模索している時期でもあります。

「持続的な変化」とは、その新しい常識が、世の中に定着してゆく過程です。改良や改善を加えられ、もはや誰もが常識を受け入れ、適応して行く時期です。

これをITのトレンドに当てはめて考えると、今の時代は、この2つの変化が、大きく入り組み混在し、複雑な変化を生みだしている時代と言えるかもしれません。

私は、ITという言葉がまだなく、「コンピューター」が全てだった時代からこの世界に身を置き33年が立ちましたが、このような「変化」はこれまでに経験したことがなかったものです。この複雑さが、ビジネスの将来を先読みすることを難しくしているのではないかと考えています。

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ITビジネスに関わる歴史を簡単に振り返ってみましょう。

1964年〜 メインフレーム

1964年、IBMがSystem/360というメインフレームを世に出し、ビジネスでコンピューターが普及するきっかけをつくりました。

1978年〜 ダウンサイジングとクライアント・サーバー

1978年に登場したDECのVAX-11/780の登場は、絶対神メインフレーム(ホスト・コンピュータ)の信仰を崩し、1981年のIBM Personal Computer 5150の登場は、PCがビジネスの標準ツールになるきっかけを作りました。1980年代も半ばを過ぎるころには、小型コンピューターやPCに役割を分担するダウンサイズの時代へと移って行きます。それと並行して、個人で使用するPCと複数ユーザーが共用するサーバー・コンピューターが、それぞれにお互いの役割を分担し合う「クライント・サーバー」の時代を向かえます。1889年に登場し多くの企業で採用されたLotus Notesは、そんな時代の象徴とも云えるでしょう。

1995年〜 Web時代の幕開け

1995年、Windows95(正確には、直後にリリースされたMicrosoft Plus! for Windows95)の登場と共に同梱されたInternet Explorer 1.0 は、ブラウザー時代の幕開けとなります。「インターネット」の普及と共に、ネットワークやITの民主化が進んだ時代です。これにより、ITは、企業利用だけではなく個人利用という新たなユーザー領域を切り開きました。この新しいユーザーを対象とした「コンシュマーIT」という新たな進化の系統が生まれたとも言えます。当初「インターネット」は、電子メールやチャットなどのコミュニケーション手段として、あるいは、ホームページを閲覧する情報収集の手段として普及してゆきましたが、これがクラウドへとつながってゆくのです。

2004年〜  クラウド時代の到来

「インターネット」に新たな役割が加えられるようになりました。それは、「いつでもどこでも、インターネットにつながれば望むサービスを受けられるようになる」という仕組みの登場です。2004年、Googleが、始めたGmail(β版)は、そんな時代のさきがけとなるものでした。「クラウド・コンピューティング」時代の幕開けとも言えるでしょう。続く、2006年のAmazon EC2と2008年のWindows Azure Platformの登場は、クラウドを企業システムと結びつけました。Googleは、その対象が、一般の人たちであったのに対して、両者は企業ユーザーを対象にするものでした。

また、同じ2004年にはFacebookが、2006年にはTwitterが誕生しています。クラウド時代の幕開けは同時にソーシャル時代の幕開けでもあったのです。

2007年〜 モバイルと人工知能の登場

2007年のiPhoneの登場は、モバイルという利用形態を普及させITに関わるユーザーの裾野や用途を大きく広げるきっかけをつくりました。これによりモバイル・ネットワークのコスト低下、センサーを組み込んだデバイス、インターネットへの接続と言ったIoTの下地が作られていったのです。また、モバイルはソーシャルを爆発的に普及させるプラットフォームともなりました。

同じ年の2007年、IBM のスーパー・コンピューDeep Blueがチェスの世界チャンピオンを破り、2011年、IBM の質問応答システムWatsonが、米国の人気クイズ番組で優勝、2012年、人工知能の新たなアルゴリズムであるDeep Learningがコンテストで二位を圧倒的に引き離す好成績を出したことで、人工知能への注目が急速に高まりました。モバイルと人工知能の組合せは、音声認識やジェスチャー入力と言った、モバイルのユーザー・インターフェイスをより使いやすいかたちに変えてゆくでしょう。また、人工知能はロボットと組み合わされ、人と機械との係わり方や役割分担を変えてゆくでしょう。

あらためて、今の時代を俯瞰すれば、「クラウド」、「ソーシャル」、「モバイル」、「人工知能」が混在し、お互いに影響を及ぼし合っている、そんな複雑な時代と言えるでしょう。わかりやすいパラダイムの変化と言えるものがないのです。かつてのような、メインフレームからの小型コンピューターへのダウンサイジング、集中処理から分散処理/クライアント・サーバーといった企業システムにおける処理形態の変化のような単純さはありません。日常生活や社会活動に広く、深く係わり、ビジネスのあり方、価値観、政治や経済にもITがこれまでになく影響を与えつつあります。これを単純な図式で表せないことが、ITビジネスを難しくしています。

「テクノロジーは、生物界と同様に、自律的に成長し、進化して行く。」

US版『WIRED』の創刊編集長であったケヴィン・ケリーの著書『テクニウム』にはこのようなことが書かれています。つまり、本来、人間の意志で生まれ、人間によってコントロールされていると考えがちなテクノロジーは、実際はテクノロジー自身が自律的な意志をもって進化しているのだと彼は言っているのです。

もしそうだとすれば、およそ5億5000万年前に、それまで数十数種しかなかった生物が突如1万種にも爆発的に増加した「カンブリア大爆発」がITの世界に起きてもおかしくはありません。「カンブリア大爆発」により、様々な形態を持った生物が生まれ、食うか食われるかの競争と淘汰を繰り返しながら生物の多様性が育まれ、生態系築かれてゆきました。

ITの世界でもこの大爆発のような複雑な混沌が支配し、これまでの常識とは大きく逸脱した新しい常識が生まれつつあります。これは、これまでとは明らかに異なるIT活用の新たな可能性が生みだされつつあるとも言えます。そして、競争と淘汰を繰り返し、ITの新たなエコシステム=生態系を形成してゆくことになるのかもしれません。

今の時代が、ITの「カンブリア大爆発」かどうかは歴史の評価にゆだねるしかありません。しかし、確かにこれまでには無い、常識の転換が進みつつあることはだけは確かなように思います。

こういう時代を理解するためには、原理原則に改めて立ち返り、テクノロジーの本源を理解する努力が必要になるでしょう。表面的な現象として現れるキーワードに惑わされるべきではありません。それらがもたらす価値や意義をしっかりと理解することです。歴史を学ぶことで、その理解を助けてくれるはずです。

ケヴィン・ケリーが語るようにテクノロジーが自律的に進化するのであれば、我々人間に残された道は、「適応」しかないのです。

「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」

進化論を唱えたダーウィンの言葉だとの説もあります。

  • この変化を正しく理解する努力
  • どう適応するかの知恵と工夫
  • 行動し、失敗し、成功を選択するプロセス

ITビジネスは、いまこんな時代に向き合っているのかもしれません。

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【アプリケーション&サービス編】(246ページ)

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【更新】デジタルコピー/デジタル・ツイン p.20
【新規】「モノ」のサービス化(カメラ編) p.27
【更新】コマツの取り組みに新しい動画を追加 p.57
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【新規】なぜいまは人工知能なのか p.147
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