【図解】コレ1枚で分かる空間をデータ化するIoTデバイス「ドローン」
ドローン(drone)とは、遠隔操作が可能な無人飛行機の総称で、ブーンと羽音を立てて飛ぶ「雄の蜂」を意味する英単語から転じて使われるようになりました。
元々は戦場における偵察や攻撃などの軍事用に開発されましたが、農薬散布や空撮などの業務用、あるいは飛ばして楽しむホビー用として用途が広がっています。大きさは全長数センチ程度の小型のものから10メートル超の大型のものまであり、形状は複数のプロペラを持つヘリコプター(マルチコプター)が一般的で、固定翼の機体なども登場しています。
また、静止画や動画を撮影するカメラに加え、位置情報を捉えるGPS、速度や動きを検知する加速度センサー、傾きや角度などを検知するジャイロセンサーなどを搭載しています。それらを使って自ら機体を安定させ、指定した経路を自動で飛行し元の位置に戻ってくるなどの自律飛行ができる機体もあります。このあたりが従来のラジコン機と異なるところです。
これらドローンに使われている電子部品は、スマートフォンで使われるカメラやセンサー、プロセッサーや電池などと共通するものもすくなくありません。そのためスマートフォンの大量生産による部品の低価格化によって、ドローンの市販価格も下がり、業務用途ばかりでなく個人での利用も拡大しています。
「オープン化」への取り組みも注目されています。ドローンは、カメラやセンサーで様々なデータを捉え、無線を介してインターネットとつなげて、クラウドにデータを送ることができます。「空飛ぶIoTデバイス」とも言えるこのような特徴を活かし、様々な用途での利用が模索されていますが、そのアプリケーションを誰もが容易に開発できるようにし、用途を広げてゆこうというのです。そのために、ドローンに最適化したオペレーティングシステムやプログラミング環境を共同で開発し広く公開する取り組みや、ドローンに必要な機能を標準で搭載したプロセッサーや電子部品のモジュールが市販されるようになりました。特に、IntelやQUALCOMMなど、パソコンやスマートフォンで標準プラットフォームを提供している企業は、次のプラットフォームの覇権を握るべく、積極的に製品開発を行っています。
ドローンが注目されるのは、これまでには無かった「空間をデータ化できる」有効な手段だからです。IoTが「現実世界をデータ化し、ネットに送り出す仕組み」として注目されていますが、「空間のデータ化」も当然に求められています。その手段として航空機や人工衛星など高高度からのセンシング技術は既にありますが、低高度でしかも移動しながらきめ細かくセンシングする有効な手段はこれまでありませんでした。そこに登場したのがドローンです。まさに未知の領域への可能性が生まれたのです。そのため用途については、まだまだ模索の段階ですが、大きな可能性が広がっていると言えるでしょう。このような理由から注目されているのです。
そんな模索段階ではありますが、既に様々な用途で使われはじめています。
鳥の目線での空撮
「鳥の目線」で飛びながら撮影できるのはドローンの魅力のひとつです。
ヘリコプターや航空機はどんなに低空でも数百メートルの高さからの撮影となります。人間が高台に登っても固定した位置からしか撮影できません。ドローであれば数メートルから100メートルほどの高さで鳥のように飛びながら撮影することができます。しかも機体の振動や風による揺れを補正してなめらかな動画を高画質で撮影できるカメラが搭載された機体も数万円から手に入るようになり、業務ばかりでなく趣味で空撮を楽しむ個人も増えてきています。
土木工事現場での測量や記録
土木工事の現場で、土地の形状や掘り出す土量を計測し、工事の経過を画像で残すことに使われています。
工事現場を複数の角度から撮影して3次元画像を作成、それを工事図面と重ね合わせることで工事箇所や掘り出す土量を計測できます。人間が行うことに比べ、短時間で高精度に計測できるようになりました。また、広い工事現場での作業状況を上空から撮影し、工事の進め方や進捗を記録し、安全管理や進捗管理に役立てようという取り組みも始まっています。
耕作地のデータ収集や農薬散布
これまで勘や経験、人手に頼りがちだった耕作地の様子をデータとして捉えるためにも使われています。
例えば、ドローンに搭載した複数の異なる波長の光で撮影する「マルチスペクトル・カメラ」を使い、
-
- 水分の不足しているところを見つける。
- 肥料の足りないところを見つける。
- 生育具合を確認する。
といったことがおこなわれています。
これまで、広い耕作地でこのようなデータを集める手段はありませんでした。もちろん航空機やヘリコプターを使えばそれも可能ですが、膨大なコストがかかり現時的ではありません。ドローンならあまりコストをかけず、1日に何度でも耕作地の上空を飛び回り、撮影することができます。そして、そのデータを活かして効率の良い耕作地の管理や作業が可能になるのです。
また、田畑への農薬散布にも使われています。人力で撒くには、背中に農薬を背負って歩きながら行わなければなりません。広い田畑なら何日も何週間もかかってしまいます。かといって、車両では田畑の内部までは入り込めませんから散布は困難でした。そのため以前は有人ヘリコプターによる上空からの農薬散布も行われていたのですが、高高度からの散布は農薬が広範囲に飛散することから人体への影響が心配され、次第に行われなくなっています。そこでドローンが使われるようになりました。有人ヘリコプターに比べ低高度で散布ができるので、周囲への飛散量が抑えられるからです。
荷物の配送
宅急便や郵便などの荷物をドローンで届けようという取り組みが始まっています。
ドローンであれば、道路の渋滞を気にする必要がなく、地上で配送するよりも短い時間、低コストで届けられると期待されています。また、住宅や集落が広い地域にまばらに点在している地域は世界を見渡せば少なくありません。そういうところで荷物ひとつのためにトラックや配送員を使うのではコストがかかりすぎます。このような課題を解決しようと、ドローンによる配送が試みられています。
災害現場の調査や緊急物資の輸送
災害現場の調査にも活躍しています。
例えば、河川の決壊や土砂崩れなどの災害では被災現場へ入れないことも多く、空からの調査は有効な手段です。しかも、低空でカメラからの画像を見ながら移動し、高画質の動画撮影できるので被害状況を詳細に把握できます。
また、道路が寸断され孤立した集落に物資を届けるようなときにも役に立つと期待されています。
防犯や犯罪捜査
警察でもドローンが使われています。
例えば、米国では危険な犯罪現場の偵察、メキシコ国境の密入国者の監視に使われています。また日本でも交通事故や犯罪現場の捜査にドローンの導入がすすめられています。
我が国では、2015年12月の航空法改正により、ドローンの飛行ルールが明確になりました。これをきっかけとして、ドローンの活用が一層拡がるものと期待されています。
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- 「マルチテナント効果」を追加しました。p.59
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IoT
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- 「IoTで変わるビジネス価値」を新規追加し、解説を加えました。p.32
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