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イノベーションの6類型と本当の意味

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「イノベーションって、なんだろう。」

あらためてinnovationの語源を調べると15世紀のラテン語innovatioに行き着くようです。inは「中へ」、novaは「新しい」、これらを組み合わせて、自らの内側に新しいものを取り込むという意味になるのだそうです。

ただ、これが今のように、「物事の新機軸を打ち出す」、「新しい切り口で新しい活用法を創造する」というような意味が与えられたのは、20世紀前半に活躍した経済学者シュンペーターに始まります。彼は1912年に著した『経済発展の理論』の中で、イノベーションを「新結合(neue Kombination)」と呼んでいます。また、新結合を生み出す実行者を「アントレプレナー(entrepreneur)」と呼んでいます。また、シュンペーターはイノベーションを以下の5類型に分類しています。 

1 新しい財貨の生産:プロダクト・イノベーション

2 新しい生産方法の導入:プロセス・イノベーション

3 新しい販売先の開拓:マーケティング・イノベーション

4 新しい仕入先の獲得:サプライチェーン・イノベーション

5 新しい組織の実現:組織のイノベーション

現在の目で改めて見直せば、次の第6番目の類型を追加しても良さそうな気がします。

6 新しい体験の創造:感性のイノベーション

それはiPadやiPhoneのようにユーザー・インターフェース(UI)やユーザー・エクスペリエンス(UX)が新たな経済的価値を生み出す時代になったからです。それは、機能だけではなく、感性が購買行動に大きな影響を与え、新しいライフスタイルを生み出す現象です。そう考えると感性もまたイノベーションのひとつの類型に入れてもいいように思います。

さて、我が国では、イノベーションのことを、「技術革新」と言い換えられることが多いようです。これは1958年の『経済白書』において、イノベーションを「技術革新」と訳したことに由来しているといわれています。高度成長時代の当時を考えれば、経済発展は技術によってもたらされるという考えが普通でした。しかし、本来の意味は、もっと広範な経済活動全般に適用される言葉として使われています。

またシュンペーターは、「イノベーションは創造的破壊をもたらす」とも語っています。その典型として、イギリスの産業革命期における「鉄道」によるイノベーションを取り上げています。彼はこんなたとえでそれを紹介しています。

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「馬車を何台つなげても汽車にはならない」

つまり、「鉄道」がもたらしたイノベーションとは、馬車の馬力をより強力な蒸気機関に置き換え多数の貨車や客車をつなぐという「新結合」がもたらしたものだという解釈です。

これによって、古い駅馬車による交通網は破壊され新しい鉄道網に置き換わってゆきました。それが結果として、産業革命を支えるものになったというのです。ここで使われた技術要素は、ひとつひとつを見てゆけば必ずしも新しいものばかりではありませんでした。例えば、貨車や客車は馬車から受け継がれたものです。また、蒸気機関も鉄道が生まれる40年前には発明されていました。つまり、イノベーションとは新しい要素ではなく、これまでになかった新しい「新結合」がもたらしたものだというのです。

改めて、イノベーションを意味を考えて見ると、爆発的なテクノロジーの進化に惑わされるのではなく、既存のテクノロジーやビジネス・モデルの価値を再評価し、その要素を分解して改めてつなぎ合わせてみこともイノベーションを生みだすきっかけとなるかもしれません。

例えば、IoTを支えるテクノロジーとして、センサーと通信モジュール、コンピューターがあります。それらをつなげた仕組みであるM2Mは以前より存在していました。ただ、かつてはこれらテクノロジーの単価は高額であったため、公共交通機関や工場の製造装置など、高額なモノにしか組み込まれることはありませんでした。しかし、いまは違います。同じテクノロジー要素でありながら、小型・低価格・高性能がすすみ安価なモノにも組み込める時代となったのです。また、高額な専用線網を使わなくても安価な携帯回線が普及し、インターネットやクラウドの登場によりそれらを活用する環境も整ってきました。以前の組合せにこだわらず新しい組合せを創造する環境が用意されたともいえるのです。IoTがもたらそうとしているイノベーションは、これまでできなかった組合せを実現することから生まれようとしているのです。

「イノベーション=新しい組合せ」

そう捉えてみてはどうでしょうか。

自分たちの既存のノウハウや事業は古いから使えないと経験のない未知の分野に無謀に飛び込むばかりがイノベーションではありません。既存の事業資産を改めて見直し、その要素を最新にアップデートする。さらには、新たに登場したテクノロジーを1つの要素として組合せ、これまでには無かった組合せを想像する。そんな取り組みがイノベーションを生みだすのではないかと思っています

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