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研修と育成 人材を育む文化の大切さを学びました

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2日間にわたる今年度最後の営業配属の新入社員研修を昨日終えました。「こんな時期に新入社員研修?」と思われるかもしれませんが、まもなく新たな新入社員を迎え先輩となる彼らに、自立への自覚を醸成することを目的とした「フォローアップ」研修です。

昨年4月に入社した彼らは、基礎的な研修を8月に終え、既に半年ほどの現場経験を摘んでいます。

この時期、がむしゃらに走ってきた彼らには、学んだことや思い描いたことと現実とのギャップを感じ始めています。感じているのならまだ良いのですが、日常に忙殺され自分を省みる機会もないままにストレスをためている人たちも多いようです。また、自分の要領の悪さや知識の不足、思い通りにいかないことへのもどかしさなど、現実に対応できない自分にやりきれない想いをいだいている人もいるようです。そんな状況の中、まもなく向かえる新入社員たちの先輩としての自覚と自立を求められる彼らは、少なからず焦りを感じています。

そういう彼らにこれまでの自分を振り返り、内省の機会を与え、これからのビジョンとアクションプランを考えてもらおうというものです。

この研修には2つの事前課題がありました。ひとつは、自分の担当する案件や商材についてプレゼンテーションを作り、研修の場で発表してもらおうというものです。一月ほど前に事前ガイダンスを行い、各自5分の発表を用意してもらいました。もうひとつは、自己分析と上司インタビューです。楽しいと感じていること、辛いと感じていること、何とかしなければならないと感じていることなどを文章にしてもらいます。そして、その内容を上司に説明し、どう考えているかを聞いて、それもまた文章にしてもらいます。

前者のプレゼンテーションは5分間という条件以外に制約はありません。しかし、「伝えること」ではなく、「分かってもらう」ことを目的とするように伝えました。それぞれに工夫したプレゼンテーションに、それを聞く他の受講生が感想を述べます。講師の私も良いところ悪いところを伝えます。そんなコミュニケーションを通じ、あらためて自分のやっている仕事を再確認し、営業にとっての武器であるプレゼンテーションの勘所を掴んでもらうことができました。

自己分析と上司インタビューは、「立ち止まって自分の状態を冷静に振り返る機会となりました」というコメントにも現れているように、彼らには良い機会になったようです。また、「上司がこんな風に考えてくれていたとは驚きました」、「自分の思っていたことと他人の見る目が違うことに気付かされ、あらためて自分を冷静に見ることができました」といった感想も聞こえてきました。

この上司インタビューにはもうひとつの目的があります。それは、上司が自分の部下に真剣に向き合い、彼らと話し合う機会を与えることです。自分たちが育成に責任を持っていることを自覚してもらうこと、つまり「上司研修」という側面もあるのです。「しっかり向き合って話し合う良い機会になりました」とコメントを頂き、よかったと思っています。

さて、プレゼンテーションの後は、「営業活動プロセス」の振り返りです。営業のあるべき論や精神論を語るのではなく、「できる営業の仕事手順」を洗い出したおよそ30項目のチェックシートに自分のやっていることを当てはめて自己分析してもらいます。

「先輩がなぜあんなことをやっているのか、よく分かりました。」、「なにをやればいいのかもやもやしていたのですが、これではっきりしました。これからもこのチェックリストを使って自分の仕事を振り返るようにします」といったコメントです。

「背中を見て覚えろ」は、自分の仕事を説明できない言い訳に過ぎません。しかし、現実には「体験でたたき込むだけ」がまかり通っています。それが悪いというわけではありませんが、それだけでは、何をどのように反省し、改善すれば良いのか分かりません。また、誰についたかによって育成のスピードや質に大きなばらつきが生じてしまいます。現場で教える上司たちに自覚はあっても、教える方法を知っているとは限らないのです。このギャップを少しでも埋めようという取り組みです。

チェックリストで自分の仕事の進め方を客観視してもらい、さらにそれを素材にディスカッションをすることで、あらためて自分の取り組んでいる仕事のメカニズムを客観的に把握し、何ができていて何ができていないかを分析的に把握してもらいます。その後は、それを素材にグループディスカッションやワールドカフェで議論を拡げ、自分への考察を深めてゆきます。

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初日の最後は、先輩社員のプレゼンテーションです。3年前、そして、4年前に受け持った懐かしい顔でした。その成長ぶりには大感動です。涙が潤んでしまいました。そんな彼らの話を聞きながら、質問したいことをポストイットにどんどん書き出してもらい、それを集めカテゴライズして、まとめて質問です。そして、さらに質疑応答、大いに盛り上がりました。自分たちもあんな風になりたいと強く心に刻むことができたのではないでしょうか。

翌日の冒頭は営業責任者から経営や事業の状況や課題、営業戦略やビジョンをお話し頂きました。何となくは知っていたことだったかもしれませんが、このように整理した話を聞くことであらためて自分の置かれている現実や自分の役割を考える機会となったようです。

この話を受けて、テクノロジーやビジネスのトレンドの解説と共に、なぜ今このような状況になっているのか、そして、なぜ自分たちの会社はこのような戦略を進めようとしているのか、マクロな視点から解説し、大局観を持ってもらいました。

その後は、タイムマネージメントや目標設定の仕方など、彼らが頭を抱えているテーマで話をしました。

これら一連の事前課題や講義を踏まえ、じゃあ、3年後の自分はどうなっていたのか、そして、そのためのアクションプランを作成しました。そして、それをディスカッションし、目標とアクションプラン、行動宣言を書き上げました。

最後は、自分たちの上司や先輩たちへの発表です。受講者12名に対し、30名ほどの上司や先輩たちが集まり、彼らを前に3分間の発表と先輩たちからコメントをいただくという場です。発表した内容もよく考えたものでしたが、なによりも良かったことは、これだけの多くの先輩や上司たちが集まってくれたことです。現役の営業であり、自らも急がしている彼らが、こうやって集まってくれたことは、新入社員たちにとっても大きな励みになったでしょう。そこには、以前新入社員として研修を受けた連中も参加していました。この連鎖がこれからもつながってゆけば、ほんとうにすばらしいことだなぁと思いました。

研修は切っ掛けにすぎません。育成は現場でしかできないのです。その橋渡しが、上司や先輩を前にした発表です。その目的は、十分に果たせたように思います。

まもなくまた新人たちが入ってきます。しかし、この連鎖が続く限り、この会社は営業力を底上げすることができるだろうと思いました。研修の担当者だけでなく、まわりも一緒になって人材を育てていこう文化が、この会社にはしっかり根付いています。人材の大切さは言うまでも無いことですが、そのことに大切に思い、実践する文化がなければ、人材は育ちません。そんな現場に関われたことを嬉しく思うと共に、多くのことを学ばせて頂けた2日間でした

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人工知能に関連した記述を増やしたこと、および、ITや情報システムの基礎的な知識については、「新入社員のための研修教材」として切り出し、そちらでより詳しく解説しています。

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  • 2045年までのスマートマシンのロードマップを追加しました。P.119
  • スマートマシンが労働にもたらす影響について追加しました。p.126-128
  • 自動運転車の動向について追加しました。p.129-130
  • 人工知能についてのページ順序を変更しました。
  • 従来の機械学習とディープラーニングの違いを図表に組み込みました。p.149-150

【ビジネス戦略編】(86ページ)

  • 営業人材の育成について、「営業の能力モデル」についての解説を追加しました。( p.72-75)

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