ITは道具に過ぎないのか?ITの役割を4つにわけて考えてみると、自分の役割が見えてくる
「ITは鉛筆、消しゴムと同じで道具に過ぎない。それをどう使いこなすが大切だ。」
こういう説明をされる方も多いように思います。私も以前はそうでした。しかし、最近は、この表現はすこし乱暴ではないだろうかと思うようになりました。
企業価値を高めるためのIT
コスト削減、期間短縮、競争力強化など、ITは企業価値を高めるために使われます。その使い方には「道具としてのIT」、「仕組みとしてのIT」、「思想としてのIT」があります。
道具としてのIT
スマートフォンやパソコン、サーバーなどのハードウェア、ワープロやスプレッドシート、電子メールなどのソフトウエアは、鉛筆や消しゴム、手帳などの道具を置き換えるものです。これらを使うことで、仕事の効率や品質を高めることができます。これらを「道具としてのIT」と呼びます。コストや使いか勝手の良さ、さらには多くの人が広く使っていることで、お互いにやり取りが容易になるなどの利便性が大切になります。
仕組みとしてのIT
生産や販売といった業務には、企業としての独自のノウハウが詰まっています。そのノウハウこそが、企業の競争力の源泉と言えるでしょう。ITはこういう業務にも広く使われています。いや、むしろ業務を支えているといっても言い過ぎではないでしょう。それら業務のためのシステムがもし障害を起こして使えなくなってしまったら業務ができなくなってしまいますし、結果として、大きな損害を被るかもしれません。
また、業務の効率を上げるということになると、仕事の手順や手続きを変えなくてはなりませんが、それと合わせて情報システムを作り替えなくてはなりません。このように業務の手順や手続きと不可分な「仕組みとしてのIT」があります。
「他社とは比べものにならないビジネス・スピードで競争優位を確立する」、「価格破壊で市場を席巻する」、「これまで誰もやらなかったことで新たな市場を切り開く」といった事業施策を打つためには、商品やサービスの内容の変革も重要ですが、業務の手順や情報の流れもまた変革しなければならないことが少なくありません。
このように仕組みと深く関わっているITは、安ければ良いとか、使い勝手が良いとかいう基準だけではその価値を評価できず、業務とITの専門家たちが協力しながら共に作り上げるITと言えるでしょう。
思想としてのIT
ビッグデータやIoT、人工知能など、テクノロジーの進化は留まることはありません。少し前までは「そんなことは無理」だったものが、当たり前に、そして低コストで使えるようになりました。このような常識の転換、すなわちパラダイム・シフトがいま急速に進んでいます。
ITの世界では、かつての常識は非常識となり、あらたな常識に置き換えられています。そんな新しい常識からビジネスのあり方を見直してみると、まったく違う仕事の手順や手続き、あるいはビジネス・モデルが見えてきます。このような考え方を「思想としてのIT」と呼んでみてはどうでしょう。
顧客価値を高めるIT
「企業価値を高めるIT」は、自分たちの企業や組織のためのITです。これに対して、「顧客価値を高めるIT」は「商品としてのIT」と言い換えることができます。例えば、オンライン・ゲームやオンライン・ショッピングの仕組みは、そこで使われる情報システム自身が商品となっています。また、証券会社のトレーディング・システムや銀行の預貯金、為替などの勘定系システム、通信事業者のネットワークやそれを運用管理するシステムは、それらが売上を稼いでくれるわけですから商品そのものと言えるでしょう。
ITをこのように捉えてみてはどうでしょうか。「企業価値を高めるIT」も「顧客価値を高めるIT」も重なる部分は少なくありません。また、立場によっても違ってくるでしょう。例えば、クラウド・サービスは、それを利用する側は「道具としてのIT」となりますが、サービスを提供する側としそては「商品としてのIT」となります。
いずれにしろ、自分が如何なるITに関わっているかによって果たすべきが役割が違うと言うことをわきまえておく必要があります。
「ITは道具」という視点は間違えではないにしても、それでは自分の果たすべき役割を矮小化し、責任逃れの言い訳に使う都合の良い言葉となりかねません。
「自分はどのITに関わっているのか?」
改めて、そういう問い掛けをしてみてはいかがでしょう。自分の役割ややるべきことが見えてくるかもしれません。
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