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2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド(3/3)

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本連載の最後は、PaaS以降のより上位レイヤーについて解説します。

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PaaS

ソフトウェアやデータは、今後サービスとして利用されるようになります。当然、それらを使用する開発、実行基盤もまたサービスとして提供されるようになります。それが、PaaSです。IaaSが価格競争で利益を確保できなくなりつつある中、主要なクラウド・サービス・プロバイダーは、PaaSに収益基盤を移しつつあると行っても良いでしょう。AWS Elastic Beanstalk、Google App Engine、IBM Blue Mix、HP Helionなどがこれに相当します。

クラウド・サービスは、開発、実行基盤としての利便性や機能の充実を競う時代へと移り始めています。

SaaS

IaaSからPaaSへとクラウド・サービスの収益基盤は、より上位のレイヤーにシフトしつつあります。この傾向は、さらに上位のSaaSへとシフトすることになるでしょう。上位のビジネス・プロセスにて差別化を進めることで競争優位を継続的、固定的に維持しようという戦略をとるものと考えられます。

主要なクラウド・サービス・プロバイダーが、マーケットプレイスに積極的なのはこのような背景があります。Salesforce.comのAppExchange、AmazonのAWS Marketplace、MicrosoftのMicrosoft Azure Marketplace、IBMのCloud Marketplaceなどがこの動きに対応しています。

また、OracleのSaaSビジネスの拡大、SAPのSassesFactors、 Concurなどの一連のSaaSサービス事業者の買収もまた同様です。

これによって、PaaSも含めた上位レイヤーにおいて、エコシステムを働かせ、サービス全体の魅力を高め、顧客を囲い込もうという戦略であり、今後はこの領域での各社の競争が加速することになるでしょう。

ソーシャルとウェアラブル・モバイル

TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが、人のつながりを大きく変えることになりました。面識のあるなしにかかわらず、関心や興味、感性で共感しあえる人たちが、ソーシャルメディアで知り合い、つながり、地域を越えて言葉や写真、動画を共有し、連絡を取り合える仕組みが出現したのです。既に、Twitterのユーザー数は、2億5千万人、Facebookは、13億人を越えています。このような、これまでの人類史上なかった世界規模での人のつながりは、ビジネスばかりでなく、価値観や文化、思想や政治、経済に大きな影響力を持つようになったのです。

これを別のとらえ方をすれば、人のつながり、世の中の話題や関心事、商品やサービスの評価や批判などの人間の活動をデジタル・データ化するプラットフォームであると言うことです。モバイルやウェアラブルも多くのセンサーを組み込んだネットワークにつながるデバイスであり、人間の行動をデジタル・データ化するプラットフォームと言うことになります。IoTとともに、これらは現実社会をデジタル・データ化する仕組みとして、ますます大きな役割を担うことになるでしょう。

ロボットとスマート・アシスタント

ロボットやスマート・アシスタントなどのスマートマシンは、人と機械との係わり方を大きく変えてしまいます。例えば、話しかけるだけで仕事をこなしてくれる。こちらの意向や行動を先読みして仕事をしてくれる。安全快適にヒトやモノを輸送してくれる。このような快適な未来を実現してくれます。

一方、これまで人間にしかできないと考えられていたことを代替できるようになれば雇用を奪ってしまうかもしれません。そうなれば、私たちの生活はどうなってしまうのでしょうか。政治や経済にも大きな影響をあたえることになるでしょう。

ITの進化は、これまで人間活動の生産性を高め利便性をもたらすものとして、私たちに大きな恩恵をもたらしてきました。スマートマシンもまた、そういう常識の延長線上に生まれてきました。しかし、その進化の行き着く先は、本来主体であるはずの人間をも代替してしまうかもしれないのです。

18世紀半ばから19世紀にかけて起こった「産業革命」も、20世紀の「自動化」も、人間の労働のあり方を変えてきたことにおいては、変わりがないという考えもあります。しかし、スマートマシンがこれらと根本的に違うのは、人間にしかできなかった知的な活動が機械に置き換わることです。「産業革命」も「自動化」も、その意味に於いては、人間が主導権を握り、コントロールできたのです。これこそが、スマートマシンが画期的であり、破壊的である所以なのです。

SIビジネスに当てはめてみれば、システムの運用や開発の多くは、スマートマシンに置き換えられてゆくでしょう。そうなれば、これまでの人月積算を前提とした収益構造は成り立たなくなります。

この進化の潮流に抗うことはできません。ならば、このスマートマシンをうまく使いこなし、より付加価値の高いビジネスへと自らの役割を変えてゆくしかないのです。

このテクノロジーは、これからのビジネスに広く影響を与え、ビジネスのこれまでの常識を大きく変えてゆくことになるでしょう。

コンテキスト・テクノロジー

ドアノブに手をかけるとウェアラブルとの通信でロックが解除される。寒い冬の夜、帰宅時間にあわせて室温は自分好みになっていた。ドアを開けると明かりが灯り、お気に入りの曲が流れ始める。風呂も適温だ。

帰宅時間は、スマートフォンのGPSや電車の運行情報などから予測されていた。お好みの室温や帰宅したらすぐ風呂に入ることなどは、室温を調整するサーモスタットや給湯器がいつの間にか覚えてしまった。

一息ついて、テレビをつけると、自分の好みに合った番組が録画されていて、そのリストが表示される。さあ、どの番組から見ることにしようか・・・

コンテキスト・テクノロジーが実現しようとしている未来です。コンテキストとは、「文脈」、「背景」、「脈絡」を意味し、コンピュータがユーザーの事情や背景を知り、必要とするサービスを的確に予測したり、判断したりできるようになるでしょう。

この動きは、ウェアラブルやIoTの普及で加速するでしょう。私たちのコンピュータはもはや受け身の機械ではなく、個人を識別し、その人が無意識に望んでいるものさえも予測し、手助けするアシスタントになろうとしています。また、ロボットやスマート・アシスタントによって、機械は日常の中により深く組み込まれてゆきます。

一方で、メールで打ち合わせ日程のやり取りをしていた相手が、予定を早めて前日のフライトでこちらに到着することまで、コンピュータが気を利かせてく知らせてくれたとしたらどうでしょうか。もしかしたら、誰かに会うためにこっそりと日程を繰り上げてきているのかもしれません。

コンテキスト・テクノロジーは、生活を便利にし、快適にしてくれそうです。しかし、その一方で、プライバシーをどこまで提供するかは、悩ましいことです。沈黙する権利、情報を削除する権利などが正しく行使され、自らの意志でプライバシーを管理できるリテラシーが求められるようになるでしょう。

ビジネスは差別化を求める以上、このようなテクノロジーの進化をとどめることはできません。そこに新たなビジネスの可能性を模索することが必要になります。

大きなパラダイム・シフトがすすんでいます。もはや過去の延長線上に未来はないことをしっかりと受け止めなくてはなりません。私たちは、そういう時代の流れを正しく読み取り、ビジネスとしての可能性を模索してゆくことが、求められています。

2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集に参加しませんか?

このブログでも紹介させて頂いたテクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドをビジネスにどう結びつけてゆけば良いのかを考えてゆきます。そのための提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても解説します。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。

きっと貴重なきっかけを手に入れられると思います。どうぞご検討ください。

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詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます

最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年12月版】を公開しました

今回は解説文を大量に追加しました。プレゼンテーションの参考にしてください。また、新しいトレンドを踏まえ、プレゼンテーションを13ページ追加しています。無料にてご覧いだけます。

【2014年12月版】(209ページ)の更新内容は次の通りです。

  • 「クラウド・コンピューティング」に解説文を追加しました
  • 「仮想化とSDI」を「ITインフラと仮想化」に変更し、プレゼンテーションを大幅に追加しましたました。
  • 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に3Dプリンターの解説を追加しました。
  • 戦略について一部チャートを変更し、資料を追加しました。

よろしければ、ご投票頂ければ幸いです m(_ _)m

拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。

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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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