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残念なセミナーに出席して学んだ、魅力的なセミナー開催の要件

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「何がユーザーのベネフィットなのか、よく分かりませんでした。」

魅力的なタイトルに誘われて、あるセミナーに参加させて頂いたのですが、とても残念な想いで中座させて頂きました。そのときのアンケートに冒頭のコメントを書かせて頂きました。

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ベンダー主催のセミナーですから、製品やサービスをご紹介頂くことに違和感はありません。しかし、それがどのようなベネフィットを提供してくれるのか、これまでと比べて何が良くなるのか、そういうことを伝えないままに、機能や特徴を羅列し、導入の手順をご説明頂いても、いったい何ことやらと思ってしまいます。

導入事例のご説明も頂きましたが、なぜ導入したのか、他社と比べてどこが良かったので採用したといった話しもなく、これでは、何がこの製品の魅力が分かりません。

しかも、時間内で話さなければならないという焦りもあったのでしょう、用意したパワーポイント資料を飛ばしながらの早口の説明は、大変聞き苦しく落ち着かないものでした。

魅力を伝えるはずのセミナーが、まったく逆の印象を与えてしまったことは、何とも残念でなりません。では、どうすれば良いのでしょうか。「他山の石、以て玉を攻むべし」ということで、考えてみました。

主催者は目的を貫く

受講者の多くは、テーマやキャッチ・コピーに魅力を感じ参加されるはずです。その期待に応えるためにはどのような内容にすれば良いのか検討し、これを軸に全体のアジェンダを組むことが必要です。

時々あることですが、とても魅力的なテーマを掲げて集客し、基調講演は、外部講師を招き語ってもらうまではいいのですが、それに続く製品やサービスの説明とはあまり関係がないでは、十分なプロモーション効果は期待できません。

お客様は何かを解決したい、だからその情報を手に入れたいとセミナーに参加されます。その期待を裏切らないように、全ての内容がそのテーマに貫かれていることが大切です。主催者は、個々の説明がこの点で一貫しているかどうかを十分に確認し、セミナーに臨む必要があります。そのためには、講演者に「お伝え頂きたいポイント」を箇条書きにし、予め伝えておき、公演前に改めて確認するなどの周到さが必要です。

講演者はベネフィットを伝える

講演者は、主催者の意図を考え、受講されるお客様の期待にどのように応えれば良いかを考えなくてはなりません。

「こちらの伝えたいことを伝えるのではなく、相手の聞きたいことを伝える」

これが、講演内容を組み立てる上での原則です。

私が受講した残念な講演は、相手が何を聞きたいかを斟酌せず「自分の得意なこと、伝えたいこと」を話していたように思います。というのも、説明者は技術系の人だったようで、導入方法や機能説明は、実に丁寧でした。また、「導入のための無料セミナーをしていますので是非ご参加下さい。」にものすごくごく力が入っていました(笑)。

ではどうすれば良いのでしょうか。

ご挨拶と講演の価値を伝える

参加者への感謝の言葉は当然ですが、このセミナーにご参加頂いたことがどれほど意義のあることか、そして、このセミナーで受講者はどのような価値を持ち帰ることができるのかを冒頭で伝えると良いでしょう。例えば・・・

  • 個人情報の漏洩を気にせずにお客様から申し込みを受け付けられるとすれば、安心ではありませんか。
  • 自社でシステムを所有することに比べて、運用管理コストを30パーセント削減できます。
  • 文書管理につきまとう原本の登録や保管の煩わしさから解放されるとすれば、どうですか。

「どうすれば、そんなことができるのか、これからご紹介させていだきます」と話を進めれば、受講者は前のめりになるはずです。

延々と自己紹介や会社の紹介をしたり、自分略歴や子どもの頃のことまで披露される方もいますが、「そんなものを聞きに来たわけではない」が本音でしょう。

まずは、相手に関心を持って頂き、自己紹介は簡潔にでいいのではないかと思っています。

問題を提起し自分の問題であると意識させる

「皆さんは、このような課題をお持ちではないでしょうか」と具体的に例を挙げながら、「あるある」と思わせることです。受講者と同じ問題意識を持ち、同じ目線で課題を認識していることを伝える必要があります。「共感を引き出す」と言い換えても良いでしょう。受講者は、講演者の話を自分のこととして聞こうとするようになります。どれほど大変で、苦労しているかを生々しく体験的に伝えるとさらに効果的です。

解決することによってもたらされるベネフィットを伝える

「今日ご紹介させて頂くソリューションでこれまで二人がかりで毎月1週間かけていた作業が、一人1日に削減できます。」、「これまで担当部門に依頼しなければ手に入れることのできなかった書類をオンラインですぐに取り出せるようになります。」、「運用に関わる要員が結局はいらなくなってしまいます。」というように、受講者が是非手に入れたいベネフィットを具体的に伝えることです。「それこそが、お金を払ってでも手に入れたいものです」と相手に思わせることができるものです。「before/after」で身近なものとしてイメージして頂くのも効果的です。

ここでは、必要以上に手段を語る必要はありません。むしろ、手段を詳しく聞きたいと思わせることです。

解決の手段を示す、但し、物足りなさを残す

ここにきて、やっと手段、つまり製品やサービスの説明です。この前に説明したベネフィットをどのようにすれば手に入れられるかをわかりやすく簡潔明瞭に伝えることです。ただし、あまり詳細に陥らない方が良いでしょう。むしろ、物足りなさを残し、「詳しくは、ご説明に伺います」あるいは「詳細につきましてはセミナーを用意しています」と、次のステップを示すことが大切です。

これは、関心のあるお客様をフィルタリングする手段にもなります。こうやって、お客様の期待のレベルを確認し、関心のある人を選別することです。

セミナーや講演は、こちらが話し満足することが目的ではありません。関心のあるお客様を見つけ選別することです。その目的をしっかりと意識して、話しの展開を組み立てなくてはなりません。

詳細なテクニックを語れば、きりがありません。ただ、このような基本的な展開を意識すれば、お客様にも不満を残さず目的を達することができるのではないでしょうか。

*募集中* ITソリューション塾【第18期】

2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集を開始致しました。既に、定員80名に対して半分ほどのお申し込み、参加意向のご連絡を頂きました。ありがとうございました。

第18期では、テクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドに加え、提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても考えてゆこうと思っています。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。

ご検討ください。

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詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます

SI事業者が生き残るための2つの戦略

従来型SIビジネスが難しくなることについて、これまでにも多くの方が語られています。これについては、私も、その理由を詳しく解説しています。詳細は、こちらをご覧下さい。

>> クラウドとSIビジネスの関係(3/3)クラウドが、なぜ従来型SI事業を難しくするのか

ポイントは次の通りです。

  • 人月積算を前提とした収益構造を維持できなる。そのため、この収益構造に過度に依存した事業は、規模の縮小を余儀なくされる。
  • 求められるテクノロジー・スキルや開発・運用スキルが大きく変わるため既存人材の持つスキルとの不整合が拡大する。
  • 比較的単純な業務しかこなせないエンジニアは、クラウドや人工知能に置き換わってゆく。仮に人月型の需要があって、オフショアとの価格競争を強いられる可能性が高く、収益に貢献しにくくなる。

この事態に対処するための「アウトサイド戦略」と「インサイド戦略」について整理してみました。

よろしければ、ご投票頂ければ幸いです m(_ _)m

拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。

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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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