ソリューション営業(3/3)お客様毎に異なる課題に対応する営業スタイル
「お客様毎に異なる課題に対応する営業スタイル」
ソリューション営業をひと言でまとめるなら、この言葉がふさわしいかもしれない。
お客様の課題に同じものはない。この基本を忘れてはいけない。確かに、同じ業種や業界、企業規模や地域など、共通するパターンは少なくない。そして、それを自分なりに、あるいは会社として整理しておくことは大切だ。また、それに合わせた製品やサービスの品揃えをしておくべきだろう。
しかし、それは、ある特定のお客様にとっては、きっとうまく当てはまるであろうという「仮説」に過ぎない。この「仮説」をしっかりと用意しておけば、話のきっかけは掴みやすい。
しかし、それを採用頂けるかどうかは、お客様個別の事情に合わせなければならない。予算、体制、時期、期待する効果など、どれをとっても同じものはない。だからこそ、こちらの押しつけではなく、お客様の事情に関心を持ち、話に耳を傾け、お客様個別の最適な組合せを模索する必要がある。例え、他社と同じ商品を使うにしても、それを導入する手順や体制は違うし、付帯する開発やサービスの内容も個々の事情に合わせなくてはならない。意志決定のプロセスも違うし、関わる人たちの思惑も違う。そういう、違いを追求し対処できる力こそ、ソリューション営業の基本だ。
こんなケースがある。あるユーザー企業が、ファイルサーバーを導入したいというので、3社にRFPを出したという。うち2社は、仕様も予算もRFPの要件を全て満たすものだった。しかし、1社だけは、RFPの仕様とは異なり金額も3割ほど越えていた。そして、そのユーザー企業は、この会社の提案を採用したのだそうだ。
その理由を聞くと、RFPを逸脱する提案をした会社は、このRFPが描かれた背景をお客様から徹底して聞いたそうである。どのような業務目的を達成したいのか、だれがどのようなワークフローで使うのかなどを聞いて行ったという。そして、このRFPの要件だけでは、業務にどのような支障が生じるかを説明し、ならば、このような機能や性能がなければならない、このような作り込みが必要になると、ユーザー企業の「あるべき姿」を提案してくれた。
他の2社は、RFPの要件を満たすことに満足し、この会社は、「あるべき姿」の実現を提案したことが、お客様の気持ちを引きつけたのだという。
使われる製品に大差はない。しかし、お客様個別の事情にどこまで迫れるかで最後が変わる。この教訓から学ぶべきことは多い。
本シリーズでも述べてきた「あるべき姿」から始める「To Be 起点」の典型的事例と言えるだろう。まずは、「あるべき姿」を見極め、それを実現する最適なシーズの組合せをくみ上げることが、ソリューション営業の仕事となる。
組合せの目的は、お客様の価値を最大化することだ。もちろん予算や期待する範囲を必要以上に逸脱すれば、それは「余計なお世話」になってしまう。ただし、それが「あるべき姿」を実現する上で不可欠な要素で有り、現実的な範囲での逸脱であれば、お客様も検討してくれる。
「どうすれば、お客様の価値を最大化できるだろうか」。そんな「あるべき姿」の達成にこだわり、最適な手段の組合せを提供できる力が、ソリューション営業力といえるだろう。
その力を磨くためにはどうすればいいのだろう。次回以降、新たなシリーズで、そのことについては書こうと思う。
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拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
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SI事業者が生き残るための2つの戦略
従来型SIビジネスが難しくなることについて、これまでにも多くの方が語られています。これについては、私も、その理由を詳しく解説しています。詳細は、こちらをご覧下さい。
>> クラウドとSIビジネスの関係(3/3)クラウドが、なぜ従来型SI事業を難しくするのか
ポイントは次の通りです。
- 人月積算を前提とした収益構造を維持できなる。そのため、この収益構造に過度に依存した事業は、規模の縮小を余儀なくされる。
- 求められるテクノロジー・スキルや開発・運用スキルが大きく変わるため既存人材の持つスキルとの不整合が拡大する。
- 比較的単純な業務しかこなせないエンジニアは、クラウドや人工知能に置き換わってゆく。仮に人月型の需要があって、オフショアとの価格競争を強いられる可能性が高く、収益に貢献しにくくなる。
この事態に対処するための「アウトサイド戦略」と「インサイド戦略」について整理してみました。