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コレ一枚でわかるスマートマシン(4/4)進化する人工知能・ディープラーニング

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スマートマシンの最後、そして今年最後は、昨今急速に進化スピードを加速している人工知能の新たな手法「ディープ・ラーニング」について解説します。

ルールベースと統計アプローチによる「機械学習」

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オンライン・ショップで「こちらの商品もいかがですか?」と表示されることがあります。これは、「レコメンデーション」機能と呼ばれています。

この機能は、オンライン・ショップの担当者が「Aと言う商品とBという商品は関連があるから、Aを買った人は、Bも買う確率が高い」と考え、「Aを検索した人にBを薦める」というルールを登録しておくことで実現できます。このようなルールをたくさん用意しておけば、いろいろな商品に対してレコメンデーションできるようになります。このアプローチが、「ルールベース」です。

しかし、Aを買う人はBも買う確率が高いというのは、担当者の思い込みかもしれません。実はCを買う人の割合のほうが、もっと高いかも知れません。こういった場合、オンライン・ショップの過去の取引データを統計解析して、AとBを一緒に買った人の割合とAとCを一緒に買った人の割合を比較し、割合の高い方をルールにすれば、レコメンデーションの効果も上がります。

ただ、これを全ての商品について人間が行おうとすると、大変な作業になります。そこで、やり方だけをコンピュータに教え、その後のデータ解析とルール生成を自動化してしまおうというのが、統計処理による「機械学習」です。

例えば、機械翻訳の場合、日英仏の同じ文書を機械に読み込ませ、「私は貴方を愛しています。」、「I love you.」、「Je t'aime.」が同時に出てくる確率が統計的に高いことを割り出し、これらは、同じ意味と考えてもいいだろうと解釈する手法です。本当に意味を解釈しているとは言えませんが、実用性は高く、論文試験の評価、医療における診断、訴訟文書の分析など様々な分野で実用化されています。

ニューラル・ネットワークとディープラーニング

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統計処理による機械学習では、「学習の進め方(学習モデル)」を最初に人間が教える必要がありますが、機械が人間の脳と同じ振る舞いをすれば、その必要もなく、自分で学習し考えることができます。これが、脳の活動を再現する人工知能の手法「ニューラル・ネットワーク」です。

ただ、初期のニューラル・ネットワークは、簡素で人間の脳の構造とはほど遠いもので、思うような成果は得られませんでした。その後、より複雑で人間の脳に近い働きをする手法が開発されました。これが「ディープラーニング」です。

2012年、Googleは、人間が教えるのではなく、大量の「YouTube」の画像をコンピュータに見せて学習させ、猫や人間の顔を認識させることに成功しました。ディープラーニングの可能性を世に示した成果でした。

2014年8月、IBMは、そのためのハードウェアとして、100万個のニューロン(神経細胞)と2億5600万個のシナプス(神経細胞の接続部分)を実現する半導体チップを作りました。1000億個のニューロンと100兆~150兆個のシナプスを持つ人間の脳には遠く及ひませんが、小型の捜索救難ロボットに搭載する、視覚障害者の安全な移動を補助する、会議中に参加者の声を自動的に識別して各自の発言内容を正確に書き起こす、などには使える能力だそうです。

この方式は、人が設定したルールや学習モデルに沿って判断するのではなく、それ自体をコンピュータが学習して作り出すものです。つまり、「人には理解できない方法で学習し判断する」とも言えます。どんなふうに考えたのか、人には分からないが正しい答えを導き出したということになるのです。

これまでとは全く違うコンピュータの出現と言っても言い過ぎではないでしょう。人工知能の新しい進化が始まったとも言えるでしょう。

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2015年は、スマートマシンがさらに注目を浴びることになるでしょう。このトレンドを見過ごすべきではありません。こんまでのビジネスの常識を大きく変えてしまうかも知れないのです。もちろん、今すぐに何かが変わることはないかもしれませんが、気がつけば手遅れになっているかもしれないのです。

スマートフォンが世に出たのは2007年でした。今から7年前のことです。そのわずかな期間にスマートフォンはITのトレンドに大きな潮流をもたらしました。そして、今から7年後の2020年、東京にオリンピックを向かえるとき、今はまだ幼稚なことしかできないと思われているスマートマシンですが、きっと世のなの常識を大きく塗り替えているでしょう。

それでは、皆さん、良いお年をお迎えください。

最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年12月版】を公開しました

今回は解説文を大量に追加しました。プレゼンテーションの参考にしてください。また、新しいトレンドを踏まえ、プレゼンテーションを13ページ追加しています。無料にてご覧いだけます。

【2014年12月版】(209ページ)の更新内容は次の通りです。

  • 「クラウド・コンピューティング」に解説文を追加しました
  • 「仮想化とSDI」を「ITインフラと仮想化」に変更し、プレゼンテーションを大幅に追加しましたました。
  • 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に3Dプリンターの解説を追加しました。
  • 戦略について一部チャートを変更し、資料を追加しました。

2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集を開始致しました。

既に、定員80名に対して半分ほどのお申し込み、参加意向のご連絡を頂きました。ありがとうございました。

第18期では、テクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドに加え、提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても考えてゆこうと思っています。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。

ご検討ください。

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詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます

よろしければ、ご投票頂ければ幸いです m(_ _)m

拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。

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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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