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IT DART ITに関わる私たちが災害に備え「何をすべきか/何ができるか」

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【訓練】2014年12月20日(土)10:13に宮城県石巻沖でM6.8の地震発生、石巻市で最大震度6強。

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このような想定でIT DARTの災害時対応訓練が始まった。被災地外から急行した派遣チームが石巻に本部拠点を設置、地元の協力を得ながら東京の後方支援チームと連携を図り、被災地の情報収集、整理、発信の任務を遂行する。

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IT DARTとは、情報支援レスキュー隊の通称で、IT Disaster Assistance and Response Teamだ。災害時に被災地に急行して、様々な情報支援活動を行うことをミッションとしている。

この取り組みは、昨年10月に開催された『「IT×災害」会議』の議論がきっかけとなって始まった。この会議は、東日本大震災から3年が経ち、IT関係者が関わった様々な支援活動を振り返り、今後の防災・減災への取り組みに活かしてゆこうと開催された。さらに、このようなテーマに関心を持つ人たちがつながり、新たな化学反応が起こることを期待したものだった。

この会議の中で、「IT版のDMAT(ディーマット)を作ってはどうか」という意見が出た。DMATとは、Disaster Medical Assistance Teamの頭文字をとったもので、「災害派遣医療チームと呼ばれている。「医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チーム」のこと。

もちろん、医療従事者ではないIT関係者達が医療行為を行おうというのではなく、ITのスキルを持った人たちが、被災現場での情報収集・活用・発信を支援し、被災地で活動する様々な人たちを「情報」で支援することで、彼らの活動の円滑化や効率化を支えようという取り組みだ。

今回の訓練は、これまで机上で議論してきたIT DARTの仕組みが、被災現場で果たして機能するかどうかを検証し、課題をあぶり出すことを目的に行われた。

今回のシナリオでは、冒頭の災害が発生したとの想定で、派遣チームが石巻市内各所に設置された避難所をまわり、被災者の人数や傷病者の有無、食料や飲料水、衛生状況や運営状況などを調査し、これを東京の後方支援チームが整理し、情報発信するという設定で行われた。


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訓練は12月21日(日)午前9時にスタート、石巻市内を2名体制の3チームが避難所をまわり、地元本部が指示・命令を行う。地元の人たちにも避難所の人、Twitterで災害情報を発信する人、デマ情報を流す人などの役割を担ってくれた。

私は、寒風の中、避難所を回った。東京の後方支援チームが、TwitterやFacebook、その他のニュース・ソースから収集した避難所についての情報を石巻本部に伝え、それを手かがかりに手分けして避難所を回る。避難所には、地元の避難所経験者などが代表者となって私たちに応対してくれた。

私たちは、予め用意されたアセスメントシートに沿って情報を集めてゆくのだが、それがなかなかうまく行かないケースもある。これからどうなるのか分からない不安を抱えている人たちへの心遣いを忘れ、事務的な話だけに終始してしまうと被災者の協力を得られない。「怒られてしまいました」といった経験をしたチームもあった。また、一刻を争う傷病者を抱えていたり、家族が行方不明になっていたりと、実体験に基づくリアルな想定に、こちらも戸惑い、何とかしなければと真剣さが増してゆく。

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本部に連絡すると新しい避難所が見つかったのでそちらにも回ってくれと指示が出る。突然余震が発生し高台への避難が指示される。電話やネットでの通信が途絶える。橋が崩落して迂回せよとの指示が入る。そんな実際に起こりそうな出来事に臨機応変に対応しなければならず、こちらも緊張する。

訓練は午後3時に終了、ほんとうに疲れた。しかし、実際の災害ではこんな簡単には終わらない。そのことを考えると、改めてこの活動がどれほど大変な取り組みなのかを身をもって実感した。

訓練終了後、直ちに振り返りを行った。いろいろな教訓と反省が述べられた。これまでの机上の議論では得られなかった気付きが得られたことは大きい。そして、何よりも、この取り組みの必要性を実感するものだった。

振り返りの後は、地元で被災され復興に取り組まれている方々の話を聞くことができた。大川小学校でお子様を亡くされた佐藤先生、自らも被災者として避難所の運営に当たられた山田さんから、そのご経験を伺ったが、改めて震災の悲惨さ、そして教訓を活かすことの意義を実感するものだった。また、震災後、地元石巻にプログラム開発やWeb・映像制作の会社を立ち上げ地元の雇用を創出しているイトナブの古山さん、そして、そこに他県からイトナブへ就職した嶋脇さんの話は、未来への希望を感じるものだった。

私たちは、東日本大震災の起きた時代を生きたという事実を変えることはできない。私たちの未来にとってそれはひとつの前提となっている。それを残念な過去の出来事と忘れることもできる。しかし、これをきっかけに新たな飛躍を遂げることもできる。イトナブの取り組みは、まさにそんなひとつだろう。また、訓練の前々日に訪問した女川町では新しい街作りを若い人たち主導ですすめているとの話を聞いた。南三陸町でも、災害対応の啓蒙や教育に取り組まれている話を伺うことができた。

IMG_9212.JPG【新設される女川駅の工事風景 / 2014.12.19

IMG_9211.JPG【嵩上げ工事が進む南三陸町・志津川 / 2014.12.19】

今回の訓練の成果やこれからのIT DARTの取り組みについては、来年3月に仙台で開催される「国連世界防災会議」のパブリック・フォーラムで紹介する予定だ。

被災地に向き合うことは、被災された人たちのためだけではないと私は考えている。東日本大震災は、2万人の命を奪い未だ多くの避難生活者を抱えている。これにどう向き合うかだけではない。被災した地域の多くは、元々が過疎地域であり、この震災はそれを加速させに過ぎない。

女川町では震災前1万人いた住民が半減したという。その半分の人たちで生活基盤を維持することを考えなければならない。これは、他の被災地も同様だ。少子高齢化が進む日本全体の課題を先取りしていると考えることもできるだろう。また、南海トラフや東南海での地震、毎年起きている水害や雪害、私たちはそんな現実に直面している。

IT DARTの取り組みは、ITに関わる者として「何をすべきか」を考えたひとつのカタチであると思っている。まだまだ、模索の段階であり、整った形にはなっていないが、これに取り組むことの意義を感じている。

私たちは、ついつい「何ができるか」から考えてしまう。しかし、未来は、「何をすべき」からはじめなくてはいけない。「何をすべきか」を明らかにし、そこで自分は「何ができるか」を考える。「何ができるか」は人それぞれだ。だからこそ、そういう人たちがつながり、「何をすべきか」を一緒になって成し遂げなければならない。

来たるべき未来は、多くの課題を抱えている。それを先取りしている被災地や地方都市の問題は、自分達の未来の問題でもあることを忘れてはならないだろう。

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