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ソリューション営業の終焉、営業3.0の時代へ

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「これまで、ソリューション営業について語っておきながら、それが『終焉』するはどういうことだ!支離滅裂じゃないか (`ヘ´)」

そんなお叱りを受けそうですが、私なりに筋の通った話です。

プロダクトだけの差別化がますます難しくなろうとしている時代、お客様の個別のニーズに応える組合せによって差別化をはかることが、ソリューション営業です。その意義や価値が失われることはありません。しかし、その組合せもやがてはコモディティ化してしまいます。ならば、次の差別化の道をもとめなければ、営業としての存在意義を失ってしまいます。表題に示した「営業3.0」とは、プロダクト営業(営業1.0)、ソリューション営業(2.0)に続く、営業がめざすべき次のステージです。今日は、そのことについて考えてみます。

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個々のお客様のニーズや課題を掘り下げ、解決策を提供する「ソリューション営業」は、やがては終焉を迎えます。

営業は、お客様にとって未知の解決策、あるいは、想定外の解決策を提示することができてはじめて、その本領を発揮します。それをもたらすからこそ、営業は、競合に打ち勝つ競争力を手にできるのです。誰もが同じ答えしか提示できないとすれば、差別化はできません。

しかし、情報がさまざまな手段で手に入るようになった今、お客様は自分たちの力で解決策を探すことが容易になりました。このような時代に、未知で想定外の解決策を提供することが、どこまで可能なのでしょうか。

ITはコモディティ化が進み、これまでになく身近なものになりました。IT部門は、テクノロジーの専門家としての役割から、テクノロジーとビジネスの橋渡しをする「プロデューサー」としての役割を求められています。言うなれば、「お客様自身がソリューションの専門家になろうとしている」のです。

また、経営戦略や事業戦略はITと一体で考えることが、強く求められるようになりました。ユーザー部門は、これまでにも増してITへの理解を深め、テクノロジーに関わる予算の決定に影響力を強めつつあります。

お客様個別であり、未知であったものは知れ渡り、何をどのように手に入れればいいか、優位性や差別化の視点を第三者にゆだねる必要はなくなりつつあります。かつて、「プロダクト」がそうであったように「ソリューション」もまた、コモディティ化が進みつつあるのです。そうなれば、あとは価格や技術力を値踏みし、自分たちにとって最適なベンダーを選択し、組み合わせればいいだけの話です。ソリューション営業で差別化できる時代は終わり、次のステージに移らなければ、営業はその役割を果たせなくなります。

では、これからの営業には何が必要なのでしょうか。

「イノベーション営業」

私は次のステージをそのように名付けてみました。もはや、「お客様の課題やニーズ」を起点にした「ソリューション営業」では、営業としての存在価値を認めてもらうことは難しくなりました。ならば、「お客様の変化」を起点にしてみてはどうかということです。

「変わろうとしている」

「変わらなくてはいけない」

「しかし、どう変わればいいのかがわからない」

そんなお客様に、新しい気づきやビジョンを提供することで、いっしょになって変革のプロセスを推進する。そんな役割を担うことができれば、営業は存在価値を持つはずです。

「変革という課題を解決するのだから、ソリューション営業と変わらないのでは」という意見もあるかもしれません。確かに、広く解釈すればそうも言えますが、私は、両者の本質的違いは、「ニーズや課題が、既知か未知か」で区別しています。

ソリューション営業は、お客様自身が意識している顕在化されている課題やニーズ、あるいは、こちらが指摘すれば「たしかにそこが課題なんだ」と気づかせることができる潜在的な課題やニーズが存在していることを前提としています。しかし、変革を進めようとするお客様は、変革への意志や問題意識はあっても、「ビジネスプロセスをどのように変革し、イノベーションを起こすことができるのか」を明らかにできていません。「どのような方向に変革を進めていけばいいか」というビジョンやグランドデザインが描けていないのです。

そこでは、他社の「ソリューション事例」など役には立ちません。なぜなら、「自分たち自身がどうしたいか」といったあるべき姿であるビジョンと、それを実現するグランドデザインが明らかになっていないわけですから、課題は明らかではなく、その手段としてのソリューションなど決めることができないのです。

イノベーション営業の役割は、お客様以上に深くお客様を考察し、お客様から新しい気づきを引き出し、お客様自身が自らのビジョンとグランドデザインに確信が持てるように支援することです。その役割を果たすことができて、営業はお客様にとって、新たな存在価値を持つようになります。

ビジネスのあらゆるセグメントがIT抜きに語れない今、「ビジネスプロセスの変革」はITの新たな需要を産み出します。つまり、変革のプロセスに関わることがこれからの「営業活動」なのです。

イノベーション営業は、変革の推進者をカウンターパートとしなければなりません。彼らは、役職は必ずしも高くはないかもしれませんが、変革に人一倍情熱を持ち、リスクを負ってでも推進しようとする存在です。

変革の推進者を見分ける方法は、さほど難しくはありません。まず、言動に注意深く耳を傾けることです。次のような発言が相次ぐような人は、変革の推進者ではありません。

「私は何度も言ったんだが、わかってくれないし、変わろうとしてくれないんですよ」

「変わらなくちゃいけないけど、まずは足下を何とかしなければいけないからね」

「会社は変わらなきゃいけないと思っている。このままじゃいずれ厳しくなる。ただ、私の役割を超える話だし、上の人が動かなきゃ、どうにもならないよ」

まちがってはいないし、与えられた役割は果たしている人に違いありません。しかし、抵抗に遭っても変革を推進する意志を持っているかどうかは疑問です。

これに対して、プロセスの変革やビジョンに関わる提案の機会を求め、「ぜひキーパーソンを同席させてほしい」と依頼すると、彼らを説得し、その場を作ってくれる人ならば、紛れもなく変革の推進者です。自分の能力や役割を理解し、人や組織をつなげて巻き込むことが変革に重要であることを理解しています。その人が声をかければ、しかるべき立場の人が集まるとすれば、人望があり、信頼され、期待されていることもわかります。

そのような変革の推進者をパートナーとして、彼の志や取り組みに貢献することが、イノベーション営業の第一歩です。

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こういう人たちと共に、お客様の変革をデザインし、ニーズや課題を作り出してゆくことから関わってゆく営業が、「営業3.0 イノベーション営業」の本質だろうと考えています。

ここに至るには、プロダクト営業やソリューション営業としての力量も求められます。しかし、それで終わらせるのではなく、さらに次の高みである「営業3.0 イノベーション営業」をめざすべきだと考えているのです。

*募集中* ITソリューション塾【第18期】

2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集を開始致しました。既に、定員80名に対して半分ほどのお申し込み、参加意向のご連絡を頂きました。ありがとうございました。

第18期では、テクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドに加え、提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても考えてゆこうと思っています。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。

ご検討ください。

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詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます

SI事業者が生き残るための2つの戦略

従来型SIビジネスが難しくなることについて、これまでにも多くの方が語られています。これについては、私も、その理由を詳しく解説しています。詳細は、こちらをご覧下さい。

>> クラウドとSIビジネスの関係(3/3)クラウドが、なぜ従来型SI事業を難しくするのか

ポイントは次の通りです。

  • 人月積算を前提とした収益構造を維持できなる。そのため、この収益構造に過度に依存した事業は、規模の縮小を余儀なくされる。
  • 求められるテクノロジー・スキルや開発・運用スキルが大きく変わるため既存人材の持つスキルとの不整合が拡大する。
  • 比較的単純な業務しかこなせないエンジニアは、クラウドや人工知能に置き換わってゆく。仮に人月型の需要があって、オフショアとの価格競争を強いられる可能性が高く、収益に貢献しにくくなる。

この事態に対処するための「アウトサイド戦略」と「インサイド戦略」について整理してみました。

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拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。

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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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