プレーイング・マネージャーという言い訳(2/2) どうすればいいのか
「立場が、人を作る、能力を磨くものです。」
そんな言葉もあるが、これは、しょせんきれいごとだ。マネージメントの能力は、自助努力で獲得しなさいといっているに過ぎない。その一方で、数字のノルマは、「もう、マネージャーなんだから」ということで、一層厳しく求められる。
しかし、これは、プレーイング・マネージャーにとっては、ある意味大きな救いでもある。数字を達成するためには、部下に任せていられない。自分がやるしかないんですよ・・・と言い訳ができる。経営者も数字が大切だから、それを受け入れざるを得ない。
ここに両者の暗黙の了解が、出来上がる。
人は、誰しも楽しいことをやっているほうが、気持ちがいい。お客様と話し、商談を進めることは、楽しいものだ。自分で、作戦を立て、提案し、交渉して契約を取る。そして、適度に息抜きもでる。
優秀なプレーヤーであればあるほど、やり方は心得ているから、マネージャーとしての仕事をするよりは、プレーヤーとして、動き回るほうが、気持ちが楽だ。
一方、マネージャーは、部下が抱える案件の進捗把握、フォーキャスティング、組織としての予算達成、管理資料の作成や疲れる会議への出席、できない部下 の育成などなど、なれない仕事を任される。その結果、自分の仕事(=プレーヤーとしての仕事?)ができないという気持ちになる。
ますます、マネージャーとしての仕事から、気持ちが遠のいてゆく。
自分が、マネージャーとして、育成されてないのに、何が部下の育成かと思うのだが、こんな現実は多い気がする。
こういう会社は、次のような問題を抱えていることがある。
- 若手が、なかなか育たない。
- 大きな数字は、特定の個人(優秀といわれるベテラン営業)に依存している。
- 社内のローテーションがうまく進まない。
つまり、ひとりひとりの営業力の底上げや、組織として力を発揮することができないのだ。
プレーイング・マネージャーが、ダメだというつもりはない。しかし、彼に何を期待し、何をしてもらいたいのか?
プレーヤーが優先なのか、それともマネージャーとしての仕事を優先してほしいのか?そのことをはっきりしないまま、あるときは、プレーヤーを期待し、あるときは、マネージャーを期待する。これでは、自分はどうすればいいのか不安になるばかりだ。
このような状況では、まじめな人ほど、両方を何とかしなければとがんばる。その結果、どっちつかずになり、「自分は、なんてダメなんだ・・・マネージャーとしてやっていけるんだろうか?」という不安が募る。それが、きっかけとなって、心を病む人いる。
これは、マネージャー本人の資質ややる気の問題ではない。多くは、経営者の責任だ。
- マネージャーとしての役割や心構えを徹底できていない。
- マネージャーとして必要な能力の育成をないがしろにしている。
- マネージャーの評価基準が、プレーヤーの延長線上にしかない。
まず、第一点目は、マネージャーのあるべき姿が、示されていない、共有できていない。これでは、何を目標にすればいいのかがわからない。
第二点目は、育成の仕組みだ。エンジニアのための技術研修は、どこも熱心だ。しかし、営業や営業マネージャーの研修というものは、意外とないがしろにされている。営業マネージャーは、事務職や技術職とは、違う能力が求められる。それにもかかわらず、この点に配慮がなく、自助努力にたよっているだけでいいだろうか。
最後は、マネージャーの評価基準を予算の達成に重きをおいていることだ。もちろん、数字目標の達成は、不可避ではあるが、それだけでは、不十分。部下の育成や組織力の向上について、明確な達成目標を示し、それを昇進や昇給に連動させているだろうか。
マネージャーとして、やってもらいたいこと。例えば、数値目標が達成できる部下の能力育成。また、組織力としてチームを運営するためのプロデュース能 力、顧客トップとの良好な関係の維持、効率的なリソース運用・・・そういう、マネージャーに求められる能力とでも言うか、態度とでも言うか、そういうものを明確に定義し、評価する仕組みを持つことは、大切なことだ。
プレーイング・マネージャーという言葉の意味を真剣に考えてみてはどうだろう。
本当に力を発揮できるプレーイング・マネージャーとは、どのような人材なのか。彼らは、どんな能力を備え、コンピテンシーを持つべきなのか。
IT業界が、大きな転換期を迎える中、マネージャーも売上げの貢献にがんばってもらいたい。しかし、その役割は、担当営業と同じでいいはずはない。そこのところをちゃんと考え、彼らに示してあげることは、経営者の大切な役割だと思う。
また、プレーイング・マネージャー自身も、自分の役割について考えなくてはいけない。マネージャーとして、自分は何ができて、何が足りないのか。不安を抱え込むのではなく、冷静に、客観的に自分を内省してみることが必要だ。
経営者も、自分自身も、プレーイング・マネージャーという言い分けで、自らをごまかさないようにしたいものだ。
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