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イノベーション営業のすすめ(5/5)変革に貢献する方法

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「営業の仕事とはどういう仕事だと思いますか?」

新入社員を相手にこういう質問をすると、お客様に商品やサービスを提供し、売り上げを上げることだという回答が返ってくる。確かに、表向きはそのような仕事に見えるが、それでは営業という仕事の本質には結びつかない。

営業の仕事は、お客様の価値を高め、その高まった価値の一部を対価として頂く仕事であり、商品やサービスは、その手段に過ぎない。

ならば、お客様の価値とは何かと言うことになる。それは、お客様の要望や期待に応えることと、答える人もいるが、私はそうは思わない。

お客様がしたいこと、やりたいことを満たすだけなら、誰もができることだ。営業が、その役割を真に発揮するのは、お客様がやりたいことを行った結果、どのような状態になっていたいのかに関心を持ち、その結果を最適な手段で満たしてあげることだと思っている。

例えば、お客様が、PC×100台を注文したいと言う。この話を聞いて、貴方はどういう行動をするだろうか。どのような使い方をするのか、それにふさわしい能力や仕様はどういうものか、予算はいくらか、希望の納期はいつなのかなどを確認し、お客様のご要望に確実に答えられるように最善を尽くす。これは何も間違ったことではない。しかし、このような対応は、「お客様のやりたいことを満たす」に留まっている。

なぜ、お客様は、PC×100台を注文したいと言っているのだろうか。まずは、その目的を確認することだ。すると、お客様は、「新製品を販売するので、受注のためのコールセンター要員を100名増員するので、そのためにPCを揃えたい」と教えてくれたとしよう。ここから、PC×100台が目的ではなく、増加する受注に対応することだと分かる。ならば、CRMを提案し応対時間を半減させれば、PCは50台ですむかもしれない。あるいは、商品の特性を考え、Webサイトに詳しい解説を載せ、在庫状況が分かるようにし、そこから注文できるようにすれば、PCは不要になる。100人の人件費も必要なく、ソーシャル・マーケティングと連動させるようにすれば、受注への対応だけではなく、売り上げの拡大にも貢献できるだろう。

お客様の目的は、「PC×100台」を手に入れることではない。増加する受注に対応し、さらには、この新しいビジネスで成功することだ。それを実現するために何が最適な手段かを考え提案することが、「お客様の価値を高めること」だ。「PC×100台」を提供するだけでは、お客様の価値は、お客様の期待の範囲で有り、営業は、お客さまの価値を高めることに貢献していない。

イノベーション営業という仕事の本質は、まさにこの点にある。お客様が、求めている手段に答えるのではなく、手段を使って得られる結果、すなわち真のニーズを見つけ出し、それを実現することに貢献することだ。

「変革はしたいが、何をどう変えればいいかわかない」

だから、なにが課題かもはっきりしない。そこに課題解決を旨とする「ソリューション営業」は成立しない。

ならば、何のための変革か、変革の結果、どのような状態になっていたいのかをお客様と議論し、それを明らかにすることから始めなくてはならないだろう。そして、ニーズを定義し、それを実現する上での課題を明らかにする。そして、それを解決する手段を明確にする。これが、イノベーション営業の仕事の手順だ。

手段にコミットすることではなく、結果にコミットすること。そう言い換えることもできる。そして、それを実現する手段の一部としてITを活かしてこそIT営業の本務だ。当然、ITについての知識と価値を正しく理解していなければならない。

また、ITは手段の一部であって、全てではないことも忘れてはならない。結果を出すためには、ビジネスプロセスを変え、体制をも変えなくてはならないかも知れない。それらも含めて、結果を出すためのシナリオを描く必要があるだろう。これが提案書となる。

ここまで関われるか、関わって良いのかと、考える必要はない。営業は、ビジネスを創出し、収益を上げることで会社に貢献する。そのために、必要なことであれば、そして、それが、お客様の価値を高めることであるとすれば、ためらわずやってみるべきだ。

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ソリューション営業に留まるべきではない。さらにその先にあるイノベーション営業を目指すべきだろう。

これが、できているかどうかを客観的に評価する簡単な方法がある。それは、お客様が、貴方を他の部門や知り合いの会社に紹介してくれるかどうかだ。それを目安としながら、自らを磨いてゆくというのはいかがだろうか。

・・・つづく

最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年10月版】(182ページ)」を公開しました!

毎月公開しています最新ITトレンドについてのプレゼンテーションです。以下のテーマでまとめられています。

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今月は、仮想化とSDIについてプレゼンテーションを一新し、解説文書を追記致しました。

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