「営業力」という“力”の本質、この方向を間違えるとムダな時間を使うだけ
「営業力とは“売る力”である」。そう考えるのが一般的だろう。だから、営業力の育成は、商品やサービスの良さを訴求し、抵抗するお客さまを説得するための会話力やドキュメンテーション力、商品や技術についての知識を身につけさせることだと考えている人も少なからずいるようだ。しかし、本当に、そのような取り組みが、「営業力=売る力」の強化につながるのだろうか。
例えば、展示会のことを考えてみてほしい。すてきな女性が、プロジェクターに映し出されたきれいなチャートを前に、通る声で、整然と説明している。見事なプレゼンテーション力である。では、彼女が、その商品を売ることができるだろうか。
IT知識に長けたエンジニアがいる。かれは、お客さまの質問に、何でも、即座に、理路整然と応えることができる。では、彼が、案件を獲得できるだろうか。
このようなスキルや知識が、営業力のひとつの要素であることに異論はないが、どうも本質ではないような気がする。
「営業力とは“売る力”である」と考えると、どうしてもこちらから、伝える、理解させる、説得するという、プッシュする力と考えてしまう。しかし、こちらが、どんなにすばらしいプレゼンテーションで製品の魅力をプッシュしても、買う側にその気がなければ、「ありがとうございました。良いお話を聞かせていただきました。関係者と相談の上、後日、連絡を差し上げます。」と感謝の言葉を最後に、貴方に連絡が来ることはないだろう。プッシュの力だけでは、不十分であることが分かる。
そこで、こう考えてみてはどうだろう。「営業力とは、お客さまのほしいを引き出す力」であると。
お客さまが、自分の「ほしい」に気付いていないことは、よくある話。そこで、貴方がお客さまになり代わり、お客さまの業務やシステムの現状や課題について整理して説明してみてはどうだろう。
「今担当させていだいているシステムについて、現状を整理してみたんですが、どうでしょうか。」と。きっとお客さまは、大いに助かるだろうし、いろいろな気付きや課題を引き出せるだろう。
お客さまといえども、自分たちのシステムの現状について、必ずしも網羅的に整理整頓できているとは限らない。日々の業務に追われ、そのようなことに手が回らない場合も多い。ならば、そんなお客さまに成り代わって、資料をまとめてあげるだけで、お客さまは、大いに感謝し、自分たちの課題にも気付くのではないだろうか。結果として、お客さまのしてほしいことが理解できる。
法律や制度の改正は、頻繁に起きる話である。それを「こう変わります」と紹介するのではなく、「御社の仕事やシステムにこのような変更が必要になります」とお伝えしてはどうだろう。「そうか!」ということになるだろう。
「我が社の商品は、こんな機能や性能があります。他社に比べて、こんなに優れています。」というのではなく、「こんなことでお困りではありませんか?ならば、こうされたらどうでしょう?」とお客さまの「困っているだろうなぁ」と「こういう風に解決できますよ」を整理して、紹介してはどうだろうか。きっと、身を乗り出して聞いてくれるだろう。
お客さまが、「そうなんですよ。これをやりたいんですよ」に気付いてくれる。そうすれば、お客さまは、「是非、御願いします。」となる。
「営業力とは、お客さまに売ってくださいと言わせる力」。そんなプルの力を育てることが、営業力育成の本質であろうと思う。
このようなプルの力は、何よりも、お客さまを深く理解することが基本だ。このお客さまの事業内容や業績、業界における位置づけや強みと弱み、組織と役割、ビジョンと戦略・・・きりがない。しかし、だからこそ、興味がつきないとも言える。知ろうとすればするほど、お客さまに入り込んで、質問し、話を聞かなければならないし、業界や競合についてのこと、製品やサービス、お客さまを取り巻く環境についても勉強しなければならない。そんな、相手への尽きぬ好奇心が、プルの力の源泉となる。
「お客さまをもっと知りたい」という好奇心は、お客さまへの愛情でもある。お客さまになんとしてでも成功させたいという思いだ。
「余計なお世話」と言われるかもしれないが、愛情などというものは、「余計なお世話」や「お節介」から始まるの常だ。相手が女性であれば、こちらのことを好きだと思ってくれているかどうか、やきもきしても始まらなので、相手の気持ちを確かめようと思うだろう。
とにかく、彼女が喜んでくれそうなことを一生懸命考えて、プレゼントを用意して、何とか伝えようとする。受け入れてくれるかどうかは、やってみなければ分からない。しかし、好きなものは、好きである。まあ、引き時も大切であるが、とにかくやってみなければ、失敗も成功もないわけで、彼女について、一生懸命に考え、工夫して、役にたとう、気に入ってもらおうと最善をつくす。結果は、彼女次第ということではあるが、それは仕方がない。
営業活動とは、そんな取り組みだ。最善を尽くして、お客さまの役に立ち、気に入られようとすること。そして、このひとなら、パートナーとして、安心して付合えると納得していただくための取り組みでもある。
こちらがしてほしいことを、してもらおうという取り組みではなく、相手がしてほしいことを考え、用意し、提供する。そのような、行動が、お客さまの「売ってください」を引き出すことになる。
数字に追われる営業にとって、たやすいことではないだろう。しかし、この営業の原点こそ、お客さまにとっての営業のレゾンデートル(存在価値)であり、営業という仕事のやりがいではないだろうか。
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自動化や自律化の潮流はITの分野に限らず産業や日常生活の全般に広がりつつあります。この変化は、これまでの人間の役割を大きく変えることだけではなく、ビジネスの成り立たせ方も根底から変える可能性があります。
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