その資料、お客様に持って行くのは、ちょっと待った!
「なるほど、そういう考え方がありましたね。これはいいですね。」
あなたは、お客様にそう言わせるだけの情報を提供しているだろうか。私は、営業の存在価値のひとつは、ここにあると思っている。
お客様の知っていること、興味のない製品情報を届けたところで、お客様にとってはなんのメリットもない。
「ちょっと、ご紹介したい製品があるんですけど、お時間頂けないでしょうか。」とお願いしても、「ああ、それならホームページのURLをメールで送っといてくれればいいから・・・」と返されるだけだ。
お客様に伺い、自社の商品やサービスの説明をすることはできても、お客様に「ハッと思わせる情報」を提供できないようであれば、あなたは「歩くカタログ・スタンド」程度の存在でしかない。
そうならないために、どうすればいいのだろうか。
お客様にとって、魅力的な情報をお届けすることだ。では一体どういう情報が魅力的なのだろう。まずはこの点について考えて見よう。
「かけひきの科学(唐津一著)」に次のような記述がある。
「情報とは、それが到着、あるいはそれを入手したとたん、環境を一変させる力を持つ。もちろん到着しないかぎり、なんの力もないのである。」
Wikipediaには、こんな記述があった。
「情報量は、情報理論の概念で、あるできごと(事象)が起きた際、それがどれほど起こりにくいかを表す尺度である。頻繁に起こるできごと(たとえば「犬が人を噛む」)が起こったことを知ってもそれはたいした「情報」にはならないが、逆に滅多に起こらないできごと(たとえば「人が犬を噛む」)が起これば、それはより多くの「情報」を含んでいると考えられる。情報量はそのできごとがどれだけの情報をもっているかの尺度であるともみなすことができる。」
例えば、提案書や製品説明のための資料について考えてみると、それが分厚ければ分厚いほど、情報量が多いと思いがちだ。しかし、その中にお客様が知っていることばかり書いてあったとすれば、お客様の意識に何の変化も起こせない。提案書の厚みには関係なく、たった一枚のハッと思わせる図表が入っていたとしたら、お客様の意識は大きな影響を受けることになり、きっと真剣にあなたの話を聞いてくれるだろう。
情報理論では、前者のような状態を「情報量はゼロに等しい」という。つまり、情報量とは、相手の行動に影響を与える度合いであり、絶対量の問題ではないのだ。
「情報量とは相手の行動に与える影響度」であると考えると、もうひとつ注意しなければならないことがある。それは、相手の期待に対する適合度だ。例えば、お客様への提案書にたとえお客様の知らないことが書いてあったとしても、それがお客様にとって関心のない内容であったならば、相手に影響を与えることはない。こういう情報を世間では、「余計なお世話」や「トンチンカン」という。
では、それが、お客様の期待している情報であり、「ハッと思わせる」ものであったとして、その影響度の大きさは、どのように考えれば良いのか。
これは、お客様の期待とのギャップの大きさだ。例えば、お客様が「このシステムを導入すると毎月100万円のコスト削減が期待できそうだ」と考えているとき、あなたの提案が110万円であれば、10万円分の影響度になる。もし、200万円であれば100万円分の影響を与えることになるだろう。逆に、90万円であれば、10万円分のがっかりだ。30万円なら70万円分の失望になる。つまり、「こりゃだめだ、二度とこの営業の提案は聞かないぞ」というネガティブな影響を与えることになる。
つまり、お客様の期待する内容を理解し、それについての提案であったとしても、求めるレベルがどの程度かを把握できていなければ、たいへんなことになるかもしれない。
例えば、「経費処理伝票の入力負担を軽減したい」という期待に答える内容であっても、「お客様は紙の伝票を一切廃し、しかもスマホからインターネットを介して入力でき、そのまま会計システムへもデータを受け渡すことができるシステム」を期待しているにもかかわらず、「入力はPCだけで会計システムへは個別に手入力」ならば、お客様はがっかりし、あなたの話など二度と聞きたくないと思うだろう。
「お客様の期待に応える」とは、よく聞かれる言葉だが、期待に応えるためには、お客様が期待する「内容」と「レベル」を知ることからはじめなくてはならない。そこをおろそかにして、自分のできること、話したいことだけを伝えて、「さあ、どうだ!」とお客様の反応を待つ。これを、世間では「博打」という。
さて、今日、貴方が、これからお客様にお持ちする資料は、この原則にそったものだろうか。もし、そういう資料が1ページもなければ、今日は風邪を引いたと連絡し、打ち合わせを先延ばししてもらおう。それが嫌なら、「影響を与えられる一枚」を、今からでも創ってはどうだろう。きっと、お客様の意識も変わるはずだ。
「最新のITトレンドとビジネス戦略(187ページ)」を公開しました!
今のトレンドを知る上で、是非と押さえておきたい内容を厳選し、公開致しました。よろしければ、ご覧下さい。内容は、以下の通りです。
「最新のITトレンドとビジネス戦略【2014年9月版】」
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閲覧は無料です。ダウンロード頂く場合は、500円/月の会員になっていただく必要がありますが、これだけの資料を自分で作ることを考えれば、ご納得頂けるのではないかと思っています。
一度お立ち寄り頂き、ご覧頂ければ幸いです。
システム・インテグレータの今と次のシナリオを考えて見ました
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。
*更新しました* 今週のブログ
[どうすればこれまでの事業を守れるだろうか?」を棚上げしてみてはどうだろう
「どうすればこれまでの事業を守れるだろうか?」
新しい事業に取り組もうとするとき、こう考えてしまうのは当然のことです。しかし、既存事業を前提に考えれば、新たな発想はなかなか生まれてきません。また、自分達が今持っている人材やスキル、資金余力、顧客チャネルなど、限られた範囲で、今「できること」を考えようとします。このような「シーズ(種)起点」の発想は、多くの場合、うまくゆきません。
ではどうすれば良いのでしょうか。
今週のブログでは、そんなテーマを掘り下げてみました。