オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

無理をさせ、無理をするなと、無理を言い/プレーイング・マネージャーとはそんな仕事

»

「おまえは、マネージャーなんだから」と組織の運営と部下の育成を上役から熱く期待されている。しかし、目の前にいる自分の部下を見れば、こちらの期待通りには動いてくれない。そんな彼らの不出来に嘆き、苛立ちはつのるばかり。その一方で、「おまえは、プレーヤーとして、お客さまのこともしっかりと頼むよ」と上司からプレッシャーをかけられる。

 プレーイング・マネージャーとは、そんな仕事かもしれない。

Th_blogspan


  「自分は、マネージャーなんだろうか、それとも、プレーヤーなんだろうか」と自問自答しても、「両方」という答えしか見いだせないのが現実だ。

  1990年代後半、日本の企業の多くは、経営と現場の意思の疎通と意志決定の伝達を迅速に行なうために、組織の階層を減らすと共に、現場に権限を委譲するフラット化を推し進めた。しかし、その背景には、役職を減らすことで人件費を抑制したいという意識が、強く働いていたと指摘する声もある。

  むしろ、その意識のほうが強く働き、本来会社として取り組むべき人材の育成や組織の活性化さえも、権限委譲という名の下に現場に押しつけられ、現場の負担を膨らませてしまったのではないか。

  結果として、プレーイング・マネージャーは、かつての専任マネージャーのような余裕はなくなり、ひとりの負担は、確実に重くなっている。しかし、そんな現実を嘆いてみても、もはや後戻りできるものでもない。この現実に、適応してゆく術を身につけてゆくしかない。

  ではどうすれば、良いのか。私は、長い目で見れば、「部下を育ててゆくこと」に意識と時間を重点的に配分すべきだと思う。

  部下を成長させることで、自分も成長できる。そんな意識が、自分の組織にあれば、部下の意欲も高まり、組織としてのパフォーマンスも向上するはず。組織のパフォーマンスが高まれば、上役の評価も高まり、自身のプロモーションにも資するはずだ。

  自分で走り回ることを極力控え、どうすれば、部下の成長のために、どのようにチャンスを与えられるかを考えることが、結果として、周りに良い影響を与え、良い結果をもたらすのではないかと思う。

  プレーイング・マネージャーの最大の不幸は、「部下を助け成果を上げさせるマネージャーとしての役割」と「部下と競争するプレーヤーとしての存在」が、同居していることにある。このことを自覚することが必要だ。もし、部下の成長や成功をこころから喜べないとすれば、競争者としての自分がそこに強く影響していると気付くべきだ。

  また、多くのプレーイング・マネージャーは、プレーヤーとして優秀だったから、その立場にある。しかし、マネージャーとして優秀であるかどうかは、まったくの未知数だ。

  例えば、貴方は、自分の部下に、どうすればこの案件を獲得できるか、自分の成功体験に照らし合わせ、整理整頓して、わかりやすい表現で説明できるだろうか。もし、「いくら言っても分からないんだから。もう、いいから、俺の言うとおりにやりなさい。」と吐き捨てるように、部下に言い聞かせてはいないだろうか。

  人は、やれと言われるとやりたくないものだ。やる理由と手順と見通しが、見えなければ、自発的な行動は生まれない。

  プレーヤーであれば、そんなことを他人に説明する必要などなかった。結果が出せればいいわけで、自分の経験知で十分だった。しかし、マネージャーは、部下の成長にも責任を持つことになる。このギャップを埋めるためのスキルを新たに獲得する必要がある。この違いとマネージャーとしての未熟に、まず気付くことだ。

  優秀であるひとほど、自分なりの成功法則をしっかりと意識しているものだ。しかし、その物差しで部下を測り、部下の弱点や不出来を指摘しても、当の本人には、理解できない、納得できないのは当然のこと。このような自分の物差しで部下を見てしまう減点型の評価は、お互いの心の壁を高くし、暗い雰囲気を作り出す。

 自分は優秀だからマネージャーであり、部下は未熟だから部下である。まずは、その原点に立ち返ること。そして、自分の能力ではなく、部下の実績や能力を基準に、かれが頑張っているのか、手を抜いているのかを見るべき。そして、彼の基準で、しっかりとやっている、たいしたものだと思ったら、それを評価してあげること。「よくやったじゃないか。」と。そして、「さらに、ここを改善すれば、もっとうまく行くはずだよ。」と貴方の基準から見たアドバイスを添えてみてはどうだろう。本人の意欲も高まるはずだ。

 「いままでできなかったことができるようになったなぁ」、「彼にはこんな才能があるのか」、「この仕事ならまかせられそうだ」というように、本人を基準にし、得点を積み上げてゆく加点型の評価の方が、きっと部下の意欲も引き出せるのではないか。 

 部下の気持ちや能力を考えもせず、自分の基準で「できて当然」と無理をさせ、「自分は、気を遣っているんだよ」というころを見せておこうと見かけ倒しのパフォーマンスで、無理をするなと言う。こんな無理が通る道理はない。 

 「部下を育てる」という大変な仕事が、これだけでうまく行くとは思いわない。ただ、自分を見つめ直し、整理するきっかけになればと思う。

 「忙しい、忙しい・・・」と自分に言い聞かせ、現実から目を背けることも、気持ちを楽にするには効果的だ。しかし、そんな自分に思い切って目を向けてみる。そんな時間を作る努力も必要かもしれない。どうせ忙しいのだから、そのことでさらに忙しくなっても、あまり変わらないような気もする。


system_cover

「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

*更新しました* 今週のブログ 

「営業」を武器とするか、オーバーヘッドとするか

ITビジネスでの競争優位は、お客様のニーズの変化に即応できることです。「営業」は、そのための武器になります。

「営業はオーバーヘッド」という意識から脱しきれない企業もあるようですが、そのままにしておけば、将来に大きな禍根を残すことになるでしょう。

今週のブログでは、こんなテーマで考えてみました。

Libra_logo300x53

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/ LiBRA

Follow Us on Facebook Facebookページを開設しています。「いいね!」やご意見など頂ければ幸いです。

Comment(0)