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SIビジネスの「存在理由」について考えるきっかけとなった一冊

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「存在理由」への問いかけと生存領域(ドメイン)の進化

先日読み終えた「アメリカ海兵隊 –非営利組織の自己革新– 野中郁次郎著(1995)」で最も印象に残った言葉のひとつだ。

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今でこそ、アメリカ海兵隊と言えば、エリート軍隊としての印象がある。しかし、その設立は、アメリカ独立戦争(1775年)の折り、荒くれ者の多い艦船の秩序を守る警察官としての役割から始まった。その後、前線基地の護衛、陸軍の支援など、主要な軍隊組織の補助的な役割に留まってきた。そのような中で、常に不要論にさらされながら、その機能や役割を自ら革新し続け、今では、「全世界有事即応部隊」としてのなくてはならない自らの生存領域を創造するに至ったとされている。

(組織の)進化の本質とは、新しい情報や知識の学習である。組織は外部環境へ適応するに有用な情報や知識を選択・淘汰しながら生存してゆくというのである。

アメリカ海兵隊は、訓練や実戦の現場で、気付いた改善は、例えシャベルの小さな部品ひとつでも報告することが求められているとのこと。また、新しい若手の発案や戦略を上級幹部が真剣に受け止める風土もしっかりと根付いているらしい。

学習には、絶えず過剰反応の危険が伴う・・・環境適応に有用であった知識だけを選択肢適応してゆくと、「過去の成功体験への過剰適応」が起こり、新たな環境変化に適応できなくなるのである。

これは、注意しなければならないことだろう。「確証のバイアス」という言葉があるが、自分の先入観に基づいて観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて、それにより自己の先入観を補強するという現象である。「過去の成功体験への過剰適応」は、この「確証のバイアス」を強め、革新の妨げとなることに注意しなければならない。

自己革新組織は、主体的に新たな知識を創造しながら、既知の知識を部分的に棄却あるいは再構築して自らの知識体系を革新してゆくのである。この意味で知識創造こそが組織の自己革新の本質なのであり、新しい知の創造なくして組織の自己革新はあり得ないのである。

これは、組織についてだけではないだろう。個人に置き換えてみても同じことが言えそうだ。特に、ITビジネスの世界は、環境変化のスピードが著しく速い。常識は常に新しいものへと置き換えられてしまう。「過去の成功体験への過剰適応」は、命取り以外の何ものでもない。例えば、3年前のクラウドの常識と今の常識がどれほど大きく変わっているのかを考えてみると、その変化のスピードを意識することになるだろう。ただ、もし、この違いを理解できないとすれば、それは過剰適応以前の「進化は学習の積み重ねである」という前提に達し得ていないことを真摯に受け止める必要があるかも知れない。

海兵隊員の中核技能(コアスキル)はライフルマンである・・・いまだに一発必殺(ワンショット・ワンキル)の戦闘哲学を信じている。

この言葉も大きな意味を持っている。この哲学があるからこそ、どうすれば、最高のライフルマンになれるかを自らに問い続け、それを訓練や戦場で確かめ、さらに改善し自らを常に高め続けようとする。そういう意識を持ち続けるための言葉なのだ。

彼らは、このコアバリューを軸に、様々な武器や戦術を使いこなす術を習得し、戦場に於いて自己完結でき、臨機応変に自律できる兵士になろうと研鑽を続けている。

ところで、この中核技能(コアスキル)は何のために高めなければならないのか。それは、中核価値(コアバリュー)の追求だ。これを失えば、組織は独自には存続できないという価値のことだ。

海兵隊の中核価値は、・・・忠誠に象徴される神、合衆国、海兵隊、そして仲間に対する信頼を基盤とする自己犠牲である。・・・その忠誠や自己犠牲は、言葉を換えて言えば、利己主義ではなく利他主義である。

この言葉を読んで、「フルスタック・エンジニア」という言葉を思い浮かべた。

「通常はそれぞれに専門の技術者がいて分業されるような複数の技術分野についての知識や技能に精通し、一人でシステム開発や運用を行なうことができる技術者のこと(e-Word)。

自分のコアバリューを持ち、他のこともこなして、自己完結できる能力の持ち主と言うことなのではないか。そして、お客様や組織のため、あるいは世のため人のために自分の役割を完遂する存在と言うことになるのだろう。

私はエンジニアではないので、営業で考えるならば、「お客様の価値と組織の価値を高めること」がコアバリューであり、「お客様の徹底理解と最高の提案」がコアスキルと言うことになるのかもしれない。

野中郁次郎氏は、言わずも知れた「失敗の本質(1984)」の著者のひとりであり、アジャイル開発のきっかけとなったハーバード・ビジネスレビュー誌の論文「The New Product Development Game(1986)」の著者でもある。この書にも、そのアジャイル開発がよりどころとする自律と自己革新とは何かが、海兵隊という組織を通じて語られている。

ITビジネスの現場は、これまでとは違う異質の変化にさらされている(これについては、こちらのブログ「SIビジネス 3つの変化、対処のための3つの要件」に詳しく書いたのでよろしければご覧頂きたい)。まさに存続の危機にさらされていると言っても過言ではない。本書は、このような現実に対処する上で多くの示唆を与えてくれている。

*更新しました* 今週のブログ 

SIビジネス 3つの変化、対処のための3つの要件

「人材が手当てできない言い訳が使えるうちに、優秀な人材を新規事業の取り組みに回したらどうですか?」

先日、SI事業者の社長にこんな話をしてみました。では、それでなにをすればいいのでしょうか。

今週のブログは、こんなテーマを取り上げてみました。

Kindle版 「システムインテグレーション崩壊」


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〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
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  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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