クラウド利用を人口推移から考えてみた
日本の生産年齢人口(15歳から64歳)は、2015年から2020年にかけて、341万人減少する。この間の全人口の減少が250万人であり、少子高齢化が益々すすむことは避けられない。そのため若年労働者数の減少も深刻となり、IT業界に限らず我が国の産業に大きな影響を与えつつある。
特に、IT業界に於いて深刻となると考えられる領域は、高い専門性が求められるインフラやプラットフォームのエンジニア人口の減少であろう。
業務経験や経営知識が求められるアプリケーションは、比較的年齢の高いエンジニアでもカバーできる領域だが、レイヤーが下がるほどに技術の急速な変化への対応が求められ、若年層への期待は大きい。
企業が今後とも成長を維持し、ビジネス環境の変化に迅速に対応するためには、ITの活用は欠かせない。そんな中で、インフラやプラットフォームへの対応が滞り、ビジネスが必要とするアプリケーションが迅速に構築・利用できないとなると企業活動に大きな負の影響を与えかねない。
益々深刻になるであろう専門エンジニアの不足。この事態への備えは、喫緊の課題だ。
この課題に対する解決策のひとつがクラウドだ。クラウドは、インフラやプラットフォームの構築や運用に関わる技術的難しさを隠蔽し、アプリケーション構築や利用の利便性と生産性を高めてくれる。
ただ、問題も大きい。これまで、我が国のSI事業者は、顧客の要望に応じた完全オーダーメードのインフラ開発や受託開発に偏ってきた。これを前提とした「人月積算型」の収益構造は、日数と必要人数の掛け算という単純な計算によって算出される。そのため、クラウドを使い利便性や生産性を高めることは、事業目的に反することになる。
生産年齢が減少すれば、このやり方が破堤することは避けられない訳だが、利益率の低いこの業界にあって、新たな取り組みへの余裕もないまま、デスマーチを続けるしかない状況に置かれている。
また、ユーザー企業の情報システム部門も、ITに関わる多くの業務をアウトソーシングしてきた経緯があり、自社でコードをかける人材がいない。また、運用もアウトソーシングで実践的なノウハウが乏しく、自らがクラウド・サービスを選定するにも、経験を活かした判断ができない。
このような状況を即座に改善することは難しいが、確実にこの変化は進行する。もはや、クラウドを使うか使わないかの議論ではなく、どう使うかを真剣に考え、しかも短期間に実践する必要がある。
SI事業者も情報システム部門も問題は同じだ。お互いがお互いのために、共に自らの役割をどう変えてゆくかを考えてゆかなければならない。駆け引きの相手ではなく、同じ課題を抱える同士として、この事態に向き合わなければ、共に存在意義を失ってしまうことになるだろう。
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。
*更新しました* 今週のブログ
ソリューション営業に求められる4つの能力
「ソリューション営業力を鍛えてください。」
こんなご相談をうけることがあります。しかし、「はい、分かりました」と申し上げられることでもありません。
そもそもソリューション営業力とは、どういう力でしょうか。今週のブログでは、この点を整理してみました。