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言葉を磨く研修

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「貴方の担当する商品やサービスについて、パワーポイント3枚、5分間で説明できる資料を用意してください。」

展示会を1ヶ月後に控えた、あるシステムベンダーの営業や販促を担当される20名ほどの皆さんに、このようなお題を差し上げた。

一週間後、再び集まった彼らは、3人ずつのグループに分かれ、1人は説明員、2人はお客様の役となってもらい、ロールプレイングを行っていただいた。

お客様役となった人は、その商品やサービスについては、はじめて聞いたという設定で徹底的に質問をしていただき、説明員を困らせていただくようにお願いをしておいた。

説明5分、質疑応答5分、そして、お客様役が、説明員の説明について評価し、気付いたこと、感じたこと、改善点を説明してもらう時間が5分、これを3人全員が繰り返す。このような研修がはじめてという人たちだったので、多いに楽しんで頂けたようだ。しかし、「説明」は、必ずしもお客様を満足させることはできなかった。

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3つの課題が浮かび上がってきた。

ひとつは、ビジーな説明資料。普段、説明に使っている資料は、20〜30ページ。それを3枚に納めなければと考え、1ページにできるだけ情報を詰め込もうとする。中には、システムの構成を描いた図に、細かい文字で丁寧に注釈が書き込まれ、まるでエンジニアが装置の保守に使うマニュアルのような資料もあった(笑)。

次に気付いたのは、担当する製品やサービスが如何に優れているかの説明に終始している人が多かったことだ。製品の機能や特徴、性能が、他社に比べて優れていること、これほど優れたものなど世の中にはないと言わんばかりに、お客様に訴えている。一歩下がってその話を聞いていると、自慢話にしか聞こえない。これでは、聞いているお客様もうんざりするだろう。

最後は、お客様を見ていない、あるいは、対話をしていないことだ。5分間でここに書かれていることを、全て説明し尽くさなければいけないとでも思っているかのように、相手の反応など気にすることなく蕩々と説明しようとしている。まるで、説明することが目的であり、使命であるかのような必至感が伝わってきた(笑)。

全員の説明が一巡し、このようなコメントを述べさせて頂いたところ、会場からは苦笑いが漏れた。

私は、次のような話をさせていだいた。

「展示会でお客様を引き留めておけるのは、精々3分といったところでしょう。その時間に、お客様が関心を持ち、もっと聞きたいと思わせることが目的です。その目的を果たすために、商品やサービスの説明など必要ないと思いますよ。」

こんな話をすると、少々困惑されていたようだった。

「興味や関心を持っていだくためには、こんなことにお困りではないでしょうか、あるいは、今後こんなことをされようとしているならば、こんな課題が出てくるのではありませんかと、対話的に問いかけます。そして、相手の抱えている“困った”や“ニーズ”を確認し、共有することが最初です。自分の問題意識と共鳴した人が、話を聞きたいと思う相手です。その共鳴が無い人にいくら説明をしても、相手にとっても説明する自分にとっても時間の浪費に過ぎませせん。」

まずは、対象となりそうなお客様を選別することだ。相手の興味や関心を確認しないままに、こちらが一方的に話しても、相手にとってはいい迷惑である。それを確認して、次のステップに移る。

「次は、結果を伝えることです。“困った”や“ニーズ”がこのように解決され、満たされるとすればすばらしいとは思いませんか?と、できるだけ具体的に、できればデータを示しながら説明します。これによってぐっと相手を引き込むのです。そして、このような成果を得たいとは思いませんか?と問いかけてみます。」

ここで相手の課題やニーズを具体的に確認し、もっと聞きたいと思わせる。そして、最後の仕上げは次のようになる。

「このような結果を出すためには、このようなことができることが効果的です、あるいは、こんなコトができるとお困りが解消しますよ、と実現の手段を提示することです。これは、製品やサービスの機能や性能の説明ではありません。その製品やサービスがどんな働きをしてくれるのかと言うことです。そして、このようなことが実現できる製品やサービスにご興味はありませんかと問いかければ良いのです。それで、興味を示していだければ、得意の20ページの説明をすればいいわけです。」

課題やニーズの確認、結果やあるべき姿の確認、実現するためにできなければならないこと、この3枚の説明であっという間に3分は過ぎてしまう。製品やサービスの説明はいらない。そんなものは、展示会であれば、パネルにしっかりと書いておけばいい。

こんな解説をして資料を作り直してもらった。さらに、課題を見つけ出す方法、対話的な説明の仕方や資料の作り方のコツなどの解説を交え、これを何回か繰り返して研修を終えたとき、資料は見違えるようにシンプルで分かりやすいものになっていた。

展示会を控え準備を進められている方もいらっしゃると思うが、こんな資料の作り方もあるということで、ご参考にして頂ければ幸いです。

*更新しました* 今週のブログ 

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