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「できること」から始まる新規事業失敗の原則

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昨日、ある大手メーカー系企業の新規事業開発を担当する皆さんを前で、ITのトレンドとビジネス戦略について講演とディスカッションの機会をいだいた。その中で、「シーズ起点からニーズ起点への転換」という話をさせて頂いた。

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「シーズ起点」とは、こういう技術があるから、これを使って新しいビジネスを始めようという考え方だ。

自分達に「できること」を起点として、新しいビジネスを模索し始めるわけだが、そうなると、「できないこと」が壁になってしまう。その結果、顧客にとって必要とされているかどうかは棚上げされ、自分達にできることの範囲で、都合の良い市場を自ら創造してしまうことがある。そんな市場が本当に存在するかどうかはどうでもよく、自分達のできることが売れる理想の市場がそこにできあがってしまう。

さらに、本当に必要とされるかどうかではなく、せっかくできることがあるし、きっとあったら便利だろうと、できることをいろいろとてんこ盛りにしてしまう。

また、こちらの思惑通りに顧客が行動してくれる“はず”という前提の元で、事業プランを組み立てる。

自分達にできる範囲で、理想の市場と思惑通り行動してくれる顧客を前提とした事業プランを作成し、経営の承認を求める。これではうまくいかないだろうと申し上げた。

一方「ニーズ起点」は、「こういうものがあったらいいなぁ」から発想しビジネスを立ち上げようという考え方だ。

例えば、GoPro。アクションカメラの代名詞ともなっているGoProは、もともとサーフィン大好きな創業者が、自分が楽しんでいるシーンを取りたい小型で簡単に操作できるビデオカメラが欲しいということが出発点になっている。そのため、「サーフィンのシーンを撮るために必要な機能」だけに絞り込み、作り上げたカメラだ。結果として、シンプルであるが故の使い勝手の良さは、多くの人に支持され、広まっていった。

また、「JINS PC」をご存知の方は多いだろう。発売から2年で、販売累計本数300万本を突破したパソコン用メガネだ。このビジネスの成功もユーザーの潜在的ニーズを掘り起こしたことにある。

これまで、メガネの需要は、「目の悪い人」に限られていた。この常識を打ち破り、「目の健康な人」、すなわち「PCを使う全ての人」に市場を拡げたことが成功の背景にある。「PCの使いすぎで目が悪くならなければいいが」という目が健康な人のニーズに応え、新しい市場を作り上げたのだ。

両者は共に、最先端のテクノロジーが使われているわけではない。むしろテクノロジーはニーズを満たすための手段として、必要なモノが選択されたに過ぎない。

「できること」から発想する「シーズ起点」ではなく、ニーズを満たすために「すべきこと」は何かと発想することから始まる「ニーズ起点」が、このような新規事業を生みだすきっかけとなった。

他にもいろいろと話をさせて頂き、ディスカッションさせて頂いたが、大きな会社であるが故の様々な悩みも伺った。しかし、様々な課題はあるにせよ、「ニーズ起点」は、新しいビジネスを生みだす基本であることに変わりはない。こういう視点に立つことなく、できない理由を組織や体制の問題に押し込めて、諦めてしまわないように、自らの役割を果たす必要があるだろう。

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