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「人月の神話」から抜け出せない営業は役割を失う

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「アーキテクチャは何が起こるかを語るのに対し、インプリメンテーションはいかにして起こせるかを語るのだ」。彼は単純な時計を例にあげている。時計のアーキテクチャは、文字盤と針とねじまきのつまみからなる。 子供はこのアーキテクチャを理解すると、教会の塔の時計と同じように腕時計を見て簡単に時間がわかるようになる。ところがインプリメンテーションとその製作となると、時計の内部で何がどのように起こっているかの記述になってしまう。 つまり、たくさんある仕掛けの動きとそれらの精確な制御について話すことになる。

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往年の名著「人月の神話」に出てくる一節だ。1975年に初版が出版されている。特に、「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、さらにプロジェクトを遅らせるだけだ」というブルックスの法則をご存知の方も多いだろう。ソフトウェア開発において「人数×月」という見積もりが広く用いられている問題を指摘し、これにまつわる「人月の神話」を明らかにしている。

ここに書かれている内容は、未だ古びることなく、むしろ、「人月の神話」に指摘されている様々な問題は、今のSIビジネスの根幹を揺さぶっている。

冒頭の引用は、システム・アーキテクトについての説明の中の一節だが、これは、営業の仕事、そのものではないだろうか。

私は、ユーザー企業の情報システム部門で、今後の情報システム戦略や施策についてアドバイスしている。そのときに、いつも意識しているのが、ここでいうアーキテクチャとインプリメンテーションの違いだ。

まず取り組むことは、この会社が、5年先を見据えてどのような経営戦略を描いているかを理解することだ。

財務諸表や事業報告書を読み、ネットでかれらの最近の活動やIR関連の資料を読む。それに基づき描いた経営戦略や事業戦略について、情報システム部門の方と会話し、情報システムと部門としてどうすべきか、どうしたいかを議論する。それを踏まえ、この経営・事業戦略を支える情報システムの役割を確認する。

そして、この役割を実現するにふさわしい情報システムの機能構成や組織、運営のあるべき姿を描く。つまり、5年後の情報システムの「あるべき姿」を描く。いうなれば、この会社の情報システムのアーキテクチャを描くわけだ。

そして、それを実現する上での方針やそこに至るマイルストーンを設定し、どのように実現するかの手順を明らかにする。これが戦略となる。

最後に、マイルストーンを達成するために、具体的にテクノロジーやサービス、プロダクトの組合せを決めてゆく。これが、施策であり、インプリメンテーションということになる。

私は、これをコンサルティングというカタチでお引き受けしているが、言うなれば、これが営業活動だろう。コンサルティングとの境目は、インプリメンテーションの具体化と、このインプリメンテーションを成功させるためのプロデュース活動が、これに加わることだ。

クラウドやモバイル、IoTやビッグデータ、人工知能やロボットなど、テクノロジーを取り巻く環境は、急激に変化しはじめている。この変化は、これまでの常識の延長線上にはない。情報システム部門は、これまでのシステム資産からの脱却と新しいアーキテクチャを求められている。

コモディティ化された技術や人月が、競争力を持ち得ないことは言うまでもない。ならば、お客様ごとにアーキテクチャを描き、そこにインプリメンテーションというビジネス・チャンスを求めてはどうだろうか。

営業もまた、「人月の神話」から抜けだし、変わらなければ、役割を果たせなくなる時代を迎えたと言えるだろう。


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