「営業とはこういうものだ」という思い込み、「自分はエンジニアだから」という自己定義
「弊社のシステム開発部門の管理職は、数字を持たされ実質営業的な役割を担うのですが、営業活動への拒否反応がけっこうあるんですよ。そういう意識を改革し、営業マインドを醸成したいんです。」
「これまで技術者としてSEやPMからそのまま管理職となり、急に営業しろと言われても・・・というのが彼らの本音なのだろうと思っております。」
先日、あるSIerの人事の責任者から、こんな話を伺った。私は、その方に次のようなことを申し上げた。
「本当に彼等に営業活動をさせる必要があるのでしょうか。そんなことしなくても、今は数字が上がっているわけですよね。本人にしてみれば、数字が上がっているのに、まだ営業しなきゃいけなのかと思っているんじゃありませんか。仕事が増えるだけじゃないですか。」
「そもそも、営業マインドとか営業活動って、何でしょうか。『営業』という言葉にどんなイメージを持っていらっしゃるのでしょうか。何をすることが営業なんでしょうか。そういうことへの理解やコンセンサスがあるのでしょうか。」
こういうご相談は少なくない。かつて、リーマンショックで受注が落ち込み、受注を増やすことに躍起になっていた時期、『全員営業』という号令の下に、誰もが売り込みを求められた時期があった。しかし、需要がそもそもないところで、何の工夫もなくこれまでと同じ仕事を売り込んでも売れるはずはなく、苦労された方も多いと聞いている。きっと、そんな『売り込み』と『営業』がかぶっているのかもしれない。
「危機感がないから営業意識が高まらない」と断じる言葉を聞くことも多い。本当にそうだろうか。
経営者がいくらこのままではいけない、変わらなければいけないといっても、それが伝わっていないという。それはそうだろう、将来はともかくも、今は数字が上がっているし、今の数字で評価される一般の社員にとって、危機感を持てと言われても・・・というのが本音ではないのだろうか。
確かに、労働力が売上に連動している人月積算型の収益構造は、今後生産年齢人口の減少と共に、いずれは破堤することになるだろう。しかし、そんな未来のことと、今の自分に背負わされた数字とどちらを優先すれば良いのかと言われれば、今の数字で評価され、給与をもらっているわけだから、そちらを優先するのは当然だ。それと『営業意識』とは別の話である。
『営業』とはなにか、『営業意識』とはどういう意識なのか。そもそも、それが必要なのか。私は、その基本に立ち返るべきではないかと申し上げた。
「営業とはこういうものだ」という思い込みがある。「自分はエンジニアだから」という自己定義がある。ひとは往々にして、そういうことを無意識のうちにやってしまっている。その壁を取り払わない限り、可能性を伸ばし、行動を変えてゆくことはできない。
『営業』という言葉を一旦棚上げし、原点に立ち返って管理職が何をすべきかについて、あるべき姿を考えて見てはどうか。「エンジニアだから」という言葉で自分の可能性をどれほど狭めているかを自覚し、実はもっといろいろなことができることに喜びを見出してみてはどうだろうか。
そういう意識を引き出すことなくして、ありがたい講話や講義を受けても、自発的な行動には結びつかず、結局はもとの思い込みと自己規定の中で、自分の行動を限定してしまうことになるだろう。
人材を育成の基本は、何かを教えることではない。思い込みや自己定義を自覚させ、それを捨てさせ、自分のさらなる可能性に気付かせることである。そうすれば、学ぼうという意欲が生まれ、彼等は自分で学び成長する。
この基本を忘れないようにしたいと思っている。
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