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Microsoft Azureの再販制度発表が迫るSIビジネスの変革

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Microsoft Azureの再販が可能に。システムインテグレータはOfficeとAzureなどが混在するソリューションを一括で提案しやすく(publickey)

この記事をどのように受け止められただろうか。

どこかのクラウド・サービスを再販しても、それだけではたいした利益にはならない。また、仮に受託開発案件をこのサービスとセットにして提供するにしても、クラウド・サービスの料金がいくらかは見通しがつくわけで、受託開発部分は丸裸にされる。その部分がこれまで同様、人月ビジネスだけとなると、ますます利益を出すことは難しくなるだろう。

Microsoft Azureに限らず、Google AppsやSalesforce.com、Office365、AWSなどを右から左へ仲介するだけの販売はいずれも同じ話だ。サービスそのものの単価も低く、それだけで十分な利益は期待できない。独自の付加価値を付け加えて、自分達のサービスとして提供できなければ、ビジネスとしてのうまみはない。

販売や経理、あるいは農業や漁業、行政サービスやガソリンスタンドの業務など、得意とする分野で、どのようなサービスが魅力的かを追求することだろう。運用監視やネットワーク管理などのインフラに強みがあるとすれば、モバイルデバイスへの対応など、新しいテクノロジーとの組み合せで付加価値を高めるのもひとつの方法だ。また、付帯する業務の代行をセットにして、サービス全体の魅力を高めることも考えられる。

お客様の「御用にお応えする」サービスを作るための素材として、選択肢が増えたと捉えることであり、これ自身を独立した商材として捉えても、ビジネスのチャンスが増えることにはならないだろう。

むしろ、IBMやHP、富士通やNECが提供するWindows Serverの代替としてお使い下さいということではないのか。そこで、収益を稼いでいた企業にとっては、競合でもあるのだ。

「これで儲けなくても良いんですよ。新しいお客様ときっかけを作るドアノックツールとして使えれば、利益なんて気にしていません。」

あるSI事業者の幹部からこのような話を聞いたことがある。じゃあ、ドアノックして、その後は、何を売るのか?出てきた言葉は、「受託開発の案件につなげたい」であった。

なにも受託開発がいけないなどと思ってはいない。そのニーズはこれからもなくなることはないだろう。しかし、これまで同様のやり方では、案件規模の縮小や案件数の減少は避けられず、利益への期待も厳しいものになる。それに対応するための新しいビジネスのお作法が必要なのであり、その手段として、こういうサービスをうまく利用するという発想が必要になるのだろう。

そもそも、こういうメジャーなサービスがドアノックになるとも思えない。お客様にとっては、知った話である。それよりも、サービスを割引料金で使えるという理由で、そのドアノックを受け止めてくれるかもしれない。しかし、その次にどれだけつながるのだろうか。

今回の発表は、SI事業者のビジネスチャンス拡大につながるかという話でもなさそうである。むしろ、ますます、新しい収益モデルへの転換を迫る出来事として捉えるべきではないだろうか。


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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

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  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

工数で見積もりする一方で,納期と完成の責任を負わされるシステムインテグレーションの限界がかつてないほど叫ばれる今,システムインテグレーターはこれからどのように変わっていくべきか?そんなテーマで考えてみました。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/ LiBRA

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ITトレンドとクラウド・コンピューティング」を改訂しました。

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