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さようならエンタープライズ、こんにちはSmarter Media

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はてなの伊藤直也さんが退職し、グリーへ移ったことが話題となっています。便乗するわけではありませんが、少し近況をご報告したいと思います。

すでにご存じの方もおられると思いますが、8月31日をもって、ITmediaエンタープライズ編集部から離れました。本来、お世話になった皆様、応援していただいたみなさまには直接ごあいさつしなければならないところ、こうした形でのご報告となりますことを最初におわびいたします。

ソフトバンク パブリッシングから当時のソフトバンク・ジーディーネットに転籍入社したのが2003年4月、途中で少し休職しましたが、約7年という月日をここで過ごさせていただきました。「エンタ(ーテイメント)がやりたい」と上司に訴えたところ、何を勘違いしたのかエンタープライズ編集部への配属となったのも今ではよい思い出です。

この間、オープンソース/Linuxの隆盛を肌身に感じつつ、主に開発系のコンテンツを中心に記事を書かせていただくとともに、新しいサービスや企画を比較的自由に立ち上げることができました。わたしは自分のことをいいかげんな人間だと自覚していますし、どちらかといえば飽きっぽいのですが、それでもこの7年あまり、同じ場所に籍を置き、最も刺激的な領域を前線で体感できたのは貴重な経験でした。

素晴らしい出会いもたくさんありました。Web系から基幹系、世間的に名の知れた方から、名前は知られていないが現場で欠かせない存在となっている方まで、数多くの才能ある方々とお話させていただく機会を得ることができました。わたしの知識が追いつかず、恥ずかしい思いをしたことも数えきれませんが、少しでも理解しようと勉強を続けてこれたのもこうした方々から発せられるあふれんばかりのエネルギーによるものが多いように思います。この場を借りてお礼申し上げます。

気がつくと自分が編集部の中で最古参となっていたわけですが、わたしが幸運だったのは、自分のやり方をそのまま生かす場所と機会を会社が提供してくれたことにあります。もともとわたしは、周りと無理に合わせることを嫌う性分です。日本的な考えでは、個性とは常識に照らして同意を得られるものではなければならないという風潮が強いように思いますが、わたしに言わせればそうしたものは個性でも何でもなく、有意差のない平凡な要素でしかありません。いい個性も悪い個性も個性であり、そこに自分に合った方法でもってアウトプットを最大化するというわたしのわがままなアプローチは、それなりの成果を示すことができましたが、それを我慢強く許容してくれた会社や上司があってこその成果であると考えています。

ではなぜITmediaエンタープライズ編集部から離れる必要があるの? と聞かれると少し返答に困ります。強いて言えば、自分にとってITmediaエンタープライズ編集部はあまりにも居心地のよい場所になってしまっていたことが挙げられるかもしれません。こうした状況に長く身を置くと、知らず知らずのうちに仕事に妥協が生まれます。それは短期的には仕事が楽になってよいのですが、長期的に見ると自分のためにならないのは自明です。

経験上、ギリギリのところまで自分を追い詰め、高みを目指そうとすればするほど、後戻りできない狂気の世界に踏み込むことになります。わたしの場合、機械学習による記事コンテンツの自動生成を考えていたこともあり、ひどい場合は寝ても覚めても頭の中が古今東西の文構造やレトリック、あるいはそれらをつなぐコードなどが埋め尽くされ、そこから抜け出せなくなるような感覚に陥ることがしばしばあり、非常に疲弊したのを覚えています。かつてはそうした世界の入り口を垣間見ただけでバランスが悪くなってしまったのですが、最近ではプライベートが充実していることで、今はもう少しうまくかじを切っていけるという自信も少なからずあります。その先にあるコンテンツがどんなものなのか、できれば自分で生み出したいという思いがあります。

こうした背景もあり、あえて新しい場所で挑戦するため、異動を決めました。退職して外に出るという選択肢もありましたが、そうしなかったのはお世話になった人やこの会社に少なからず恩義を感じているためです。

9月からはeBook USERという編集部に籍を置きます。フォーカスエリアはスマートフォンと電子書籍です。Webメディアとして一定の成功を収めているITmediaですが、携帯電話あるいはスマートフォンが一人一台の時代に入る中、そうした時代にふさわしいメディアとしてのポジションは明らかに確立できていません。控えめに言ってまだ土台作りといったところです。そこを加速させるアーキテクト的な作業にしばらく注力したいと考えています。

非PCに向けたメディアを設計することは、ITmediaの今後の成長を考えた上で避けて通れないものです。もしかすると、これまでのインターネットメディアとは大きく性格を異にするかもしれませんが、それは紙媒体に対するインターネットメディアの登場に似た歴史を感じます。むしろ怖いのは、上述したように保守的になるあまり、変化することにエネルギーを注がなくなることです。組織としてそのような状況になると、そこにあるのはゆるやかな死です。チャーチルの言葉を借りれば、「過去にこだわるものは、未来を失う」ということになります。このため、まったく別のメディアを立ち上げるつもりで臨みたいと思います。

まとめると、今後のわたしのミッションは、よりスマートなメディア、IBM的なレトリックを使えば、「Smarter Media」の立ち上げとなります。もちろん今後も編集記者としての活動は継続したいと考えていますし、エンタープライズ分野の最新技術動向についても自分の興味の範囲でカバーします。そうしたアウトプットはブログやTwitterなどになるかと思います。ご興味のある方はそちらをチェックしてください。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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