「Twitterのフォロワー数だけ割引」というベネトン メガストア新宿に行ってきた
本日、何気なくTwitterのタイムラインを眺めていたら、次のようなPOSTを発見しました。ベネトンプレス(benettonpress)のPOSTです。
本日、ベネトン メガストア新宿でお買い物をした後に「ベネトン新宿なう」とつぶやくと、フォロワー数x1円現金還元します。 現金還元の上限は、お買い物価格とさせていただきます。もちろん、ご本人のアカウントのみです。#shinjukunow
調べてみると、ベネトン メガストア新宿は3月13日にリニューアルオープンとのこと。イベントを盛り上げる意味もあったのでしょうが、ベネトンのような名の知られた企業がこんな取り組みをするのが興味深く、実際に店舗に向かってみました。
新宿の店舗には久しぶりに足を踏み入れたのですが、昔と比べてシックな感じの内装に少し驚きつつ、アウターとインナーをそれぞれ一着購入しました。わたしのフォロワー数は1万7000程度で、結果的にタダだったのですが、湧き上がる申し訳ない感と向けられる店員さんの目が笑っていない(あくまで主観です)ことに耐えられず、モラルとして幾つか実費で購入しました。移動のタクシー代を考えれば、割引なしで購入したのと変わらない出費でした。面倒がらずに電車で行けばよかったと反省しております。
割引の仕方としては、一旦実費で購入した後に、1階でレシートを見せるとフォロワー数分現金でキャッシュバックされるというものです。最初から値引きされた額でレジ精算するわけではないので、どんなにフォロワー数が多い方が悪意を持って大量の商品をタダにしようと考えても、相応のキャッシュを持っていなければ購入できません。タイムラインをながめると、フォロワー数が23万を超えるTwitter界のフリーザこといちるさんも来店されたようで、8万円ほど購入したとありましたが、これも一度は同額をレジで支払っているわけです(フォロー数からすると抑え目の買い物ではありますが、それでも8万円分の商品をタダでもらってしまうのですからすごいですね……)。
以前、東京都の高円寺にあるボードゲーム屋「すごろくや」でも同様の試みが実施され、akiyanさんがレポートをまとめていますが、「フォロワー数を多く獲得しているような人が、大人気(おとなげ)なくタダでボードゲームを大量に貰うだけ貰って帰るわけがない」というくだりは、これはベネトンにおけるわたしのケースでも同様でした。思うに、まだこうしたサービスを展開する企業は少ないので、必然的にそのサービスから得られるメリットも限定的であり、仮にメリットを享受している人はこんな風にブログに書かない、ということです。故に、この企画はわたしには必ずしもメリットではなかったということですね(タクシーを地下鉄に変えていたら少しメリットがあると思えたかもしれません)。
一般的なケースで考えれば、フォロワー数は多くても数百から数千といったところでしょうから、商品によっては全額タダとなりますが、むしろそのケースはまれでしょう。全体としては、売上に対して数%程度の額が値引きされたような額に落ち着くのではないかと推察されます。潜在的顧客の来店を促進したという意味では、さほど悪くない施策だったのかもしれません。
ベネトンのような企業規模で、Twitterのフォロワー数分だけ割引するという試みを取り入れるというのは、その承認プロセスも含めてなかなかチャレンジングな施策です。店舗の一階におられたベネトンジャパン広報宣伝部の吉澤真緒さんの話を要約すると、グローバルの戦略としてITの活用が至上命題となっており、その中でも特にTwitterなどの新しいサービスに敏感な若い世代への認知度を上げたいという思いがあったようです。ベネトンといえば、カラフルなイメージや広告戦略を展開してきましたが、これが展開されたのはもう10年以上前の話です。その後、少しブランディングが停滞していたこともあり、若い世代には意外にベネトンが知られていないというのが問題意識としてあったようです。店舗のリニューアルを機に、他社に先駆けてこうした取り組みを行うことで、もっとベネトンを知ってもらいたいというのがこの企画の発端だったといいます。
大企業にお勤めの方であれば、こうした企画を自社の製品あるいはサービスで展開するケースを考えてみてください。大変な苦労が待っているであろうことは容易に想像できるでしょう。上司がTwitterを知っていればまだ救われますが、そうでなければ、そこから説明し、さらにその効果を説明するという気の長い作業が発生します。業界でも一番乗りでこうしたミッションをやり遂げたベネトンの担当者の方には頭が下がります。
@benettonpressのフォロワー数は現時点で900人ほど。RTなどのハロー効果もありますので、そのうちどの程度が物理的に無理のない範囲で新宿の店舗に来店できたのかを推し量ることができませんが、わたしが20時前後に来店した際に、どの程度この割引を利用したのか聞くと、10人ほどだということでした。割引を伝えるPOSTは15時ごろに行われたようですので、あまり注目されなかったのかなという印象です。もう少し前から告知すれば、また違った結果になったかもしれませんので、そこが少し残念なところです。ただし、今回の結果を踏まえて、今後定期的に実施する可能性もあるとのことでした。期待したいところです。
個人的には、Twitterのフォロワー数分だけ割引するという手法が普及するとしても、それはまだもう少し先の話だと思います。肌感覚では、世の中で騒がれているほど、Twitter上の情報伝播は購買行為に結びついてないようにみえるからです。今回のケースで言えば、例えば有名モデルがTwitterをやっていて、そういった方がこの企画に乗っかるのであればフォロワーへの影響力もかなり具現化すると思いますが、そもそもさほどおしゃれでもないわたしがこの企画に乗っかっても、その効果は限定的です。もちろん、確率の問題で、フォロワー数が多ければそうした方に届く可能性が高いことは否定しませんが、この種のマーケティングの鍵は、その市場に適切な影響力のある人をどう巻き込むかがポイントとなりそうです。