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デジタルとアナログの間を行ったり来たり

請願とは「願い」みたいなものだから

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 エロゲー関係の請願が提出されたというニュースがあり、その反応を見て少し思ったことを。

 この動きに危機感を抱く方も多いようだ。だが、うーん、たぶん、そんなに心配することもないと思う。請願には政治的な力はあまりないからだ。保証はできないけど。

 あえて説明することでもないが請願というのは署名であり、「これこれこうしたい」という要旨があり、それに賛同する人たちの名前が連なったリストだ。ただし国会に提出する請願だと、少しハードルが高い。衆議院の各種手続ページにあるように「請願者の氏名は自署によることが原則ですが、ワープロなどで印刷された文字を使った場合は押印が必要です」となる。つまり基本は手書き、(ネットで集めたものなど)印刷するならハンコが必須となる。

 また、集めた署名はどうするか。表紙をつけて国会に郵送するだけではダメ。先のページにあるように「請願書は、議員の紹介により提出しなければなりません」とある。国会議員の誰かに仲介してもらう必要がある。これが「紹介議員」。事前に紹介議員になってくれるか確認する必要があるが、議員が趣旨に賛同すれば受け取ってくれる。

 国会議員が署名を受け取ると、次はどこへ行くか。大方の場合は、国会のどこかの委員会に付託される。話題になっている請願は法務委員会に付託された。

 付託といっても、「届きました」って報告されるくらいだ。実際、今国会で法務委員会はまだ実質的には動いていない。参考までに前の通常国会で最後に開催された法務委員会(6月20日)の議事録を見ると、いろんな請願が「本委員会に付託された」とあるが、それだけ。加えて請願に関係する法案について委員長が「閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか」と言い、「異議なし」と委員会の国会議員の誰かが答えるが、それだけ。請願の内容について審議したり、閉会中に審査することなんてほとんどないのが実情だ。

 私感だが、請願というのは名前が並んだ紙であり、それが国会議員を通じて国会に届き、後から国会の記録となって残るが、ただそれだけ。何万通を越えたら法律が制定されるとか、そういうルールはない。筆者はかつて願いをこめて請願署名に名前を書いたことがあるが(今回のようなエロゲー反対署名じゃないよ)、実際はこれだけという実態を知って落胆した。ある人が「署名っていうのは気持ちを伝えるだけなんですよ」と教えてくれたが、まあそういうことなのかもしれない。

 最近ではオンライン署名サイト「署名.tv」なども見かける。オンラインなら署名は集まりやすいが、国会に請願として提出するなら印刷し、ハンコをつけ、国会議員を通じなくてはならない。そこが請願と署名との違いだと思う。ただ請願にしなくても署名としてどこかに渡すだけでもいい。数万通規模のものならインパクトがあり、ニュースとして取り上げてもらえる可能性がある。その方が影響力としては大きいかもしれない。

 衆議院の請願ページも目をやってほしい。現時点でこれだけ請願が提出されている。今回の署名は1万通なのでそこそこ多いが、後期高齢者医療制度に反対する請願は数万を越えるものもある。この請願があれば後期高齢者医療制度が廃止になるかというと、さてどうだろう。やはり、気持ちなのだ。ほかにも数は少ないけれど、いろんな願いがある。だけど政治を動かすほどのものとなるのはごくわずかだ。

 結局のところ政治を動かしているのは与党であり、どれだけ数が多くても名前の束だけでは政治を動かすほどの力にはなかなかならない。数百万通くらい大規模なら話は別だが。そう考えると今回の紹介議員は野党だし、いつ解散するか分からない臨時国会では付託だけで審議される可能性は低い。ゆえに実現する見通しはかなりないと考えていいと思う。気になるなら与党の動きをチェックしたほうがいい。

 それが実情だと思う。それから手続きのことも少し知っておいてもらいたい。そう思った。

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