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2019年秋のICT支援員試験を受けました

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ICT支援員の試験を受けてきました。せっかくですのでその感想をご紹介します。文字だけです。

ICT支援員認定試験
https://jnk4.info/itce/youkou_ict_2019.html

今秋の受験日は11月17日だったのですが、その直前の11月11日には教育再生実行本部と人工知能未来社会戦略本部とが内閣に対して学校のPCの1人1台整備を含むICT環境整備を求める緊急提言をしたということで話題となりました。その中で「ICT活用教育アドバイザーやICT支援員の活用促進」も盛り込まれています。たまたま試験日と近いタイミングとなりましたが、近すぎて出願締め切りを超えていたのが残念でしたね。1か月前だったら随分と志願者も増えたのではないかと思います。

さてICT支援員の役割というのは教員のICT活用を支援することです。教員のICT活用というと即プログラミング教育という感じがしますが、実際のところではICTを3つの方向で活用していこうということになっています。

  • 成績管理などの校務で活用していきましょうという話
  • 授業そのものを電子黒板やデジタル教科書などで豊かなものにしていきましょうという話
  • プログラミングも含めた情報の利活用能力を高めていきましょうという話

ICT支援員はそれら先生とICTの関わりを支援していく位置づけの資格です。ただし国家資格ではないので子どもの成績や個人情報に触れたりですとか、あるいは授業そのものを実施するということは対象外となっています。先生のICTリテラシ不足を補う立場ですので、もし今後デジタルネイティブ世代がどんどん就職可能な世代に育ってくると、ICT支援員の位置づけも変わってくるかもしれません。が、今は少なくとも教職課程でICT利活用についてしっかりやってきたという人は少ないことが問題となっており、スキルのある人をICT支援員として認定し現場のサポートに回そうという国の方向性があるようです。現実的にはフリーのICT支援員が直接自治体に雇用されるケースと、どこかの業者に雇われる形で自治体と契約する形態があり、毎日同じ学校というよりは複数の学校を日替わりで訪ねる(先生側も相談事はまとめておく)というようなスタイルが多いようです。例えば現場でプロジェクタがつながらないといったことがあると、従来の放送設備でスピーカーが調子が悪いといった電気的な不具合だけではなくWindows上の操作等もできなくてはならないため、学校用務員の方の守備範囲とは大きく異なることとなります。また、全員に授業でスクラッチやビスケットのプログラム体験をしてもらうために全PCスタンバイしておいて時間効率を高めるですとか、マニュアルを読んでもわからないデジタル教科書の使い方を代わりに読み解いて先生に手取り足取りレクチャーするといった振る舞いが求められます。え?ITmedia読者は情シス部員でもないのになぜか日々オフィスでそのような活動を求められている?そうです。イメージとしては会社のPC明るい人の学校版ですね。おそらく職員室に一人くらいはそういう方もおられるのでしょうが、会社と違って子どもたちは待ってくれませんので専門のフィールド系業務のサポートができる人が求められるということなのでしょう。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/07/08072301/001/004.htm

さてICT支援員の試験というと2019年秋時点では特に実務経験は必要ではなく、A領域のペーパーテストと、B領域のビデオ面談の2フェーズとなっています。ペーパーテストはベンダ資格経験者にはなじみの深いCBT方式です。問題プールが大量にある中から選ばれているのか、全員で同じ問題が出題されているのかはわかりません。CBTにありがちな手ぶら受験で何も持って帰れないスタイルです。おそらく問題プールが多くはないと思われますので、公式のガイドブック(「わかるなれるICT支援員」情報ネットワーク教育活用研究協議会)や公式サイトのQ&Aに出ている問題以外では、問題そのものをネットで共有するようなことは出題者の方に迷惑をかけるので遠慮した方がよさそうです。また、受験者の方は老若男女さまざまでした。印象的だったのは受付で前に並んでいる方がスーツにスポーティなスニーカーだったこと。おそらく現役の学校の先生なんじゃないでしょうか。情報処理技術者試験のように秋葉原からきて秋葉原に帰っていきそうなタイプの方(私も含む)はあまり見かけず健康的な方が多いように見えました。

差し支えない範囲ではさすがICT教育の現場をサポートするというコンセプトだけあり、HDMI等のメディア伝送系のコネクタ形状や接続特性(距離など)が問われたり、同じくプロジェクタや無線LANのコネクティビティ的な部分が問われるというのが特徴です。情報処理技術者試験では規格や技術特性などは問われますが、繋がるかどうか、ダメな場合にどうするのが正解か、何を疑うべきか、といった面はほとんど見かけた記憶がありません。それと比べるとありそうでないところを突く良い試験であり、ITパスポート等ももう少しこの方面を充実させてもいいかなと感じます。また、情報リテラシともまた少し違う、教育に関与するものとして求められる倫理観のような出題があるのも印象的でした。違法コピーはやめようというのとも違い、対人スキルとでもいうんでしょうか。個人プログラマとしてコツコツ生きていける世界とは違って先生とのワンチームで教育のICT化を進めなくてはならないという思いが現れているように感じられます。

それ以外では学校の制度や教育制度の出題があります。校長先生は教員免許を必要とするかどうか?(これは上記の公式ガイドブックに掲載の問題です)などは勉強するまで知りませんでした。その他、学習指導要領についても問われたりします。公式ガイドブックは会社の近所の書店では2016年に発刊されたものが最新ですので必ずしも学習指導要領の改廃について解説されているわけではないのですが、直近の改訂についても問われるような内容となっていたのは出題者側の努力を感じました。一方でこれからICT支援員になろうという立場の方は何を頼りに勉強すればいいのかという難しさを感じる点でもあります。先日の報道はICT支援員の受験締め切り後だったため、これでICT支援員の志望者が急に増えるということはないのだろうと思いますが、今後ICT支援員が増えてくるにしたがってブログ等で活動報告や受験対策を解説する方が増えるかもしれません。

B領域のビデオ面談ではどのような問題が出たかは対外厳秘ということでそれは遵守させていただきますが、公式サイトにはこのような例題が掲示されています。

「学校のネットワークプリンターに職員室のパソコンから印刷したのでけど うまく出てきません。昨日は、うまく出ていました。また、さっき、隣の先生が自分のPCで出力したら、うまくでているみたいです。どうしたらいいですか。」

これに関して120秒でビデオメッセージを作成してオンラインで提出するという問題となっております。今年も大枠ではそのようなフォーマットを踏襲するものでした。iPhoneで撮影して前後の不要部分をカットするところまではできますが、提出用のリサイズと対応ブラウザの関係で基本的にPCから行う方が大半ではないかと思います。

次の試験は半年後。受かっていたら教育情報化コーディネータという資格もありますのでそっちも勢いで受けてみたいと思います。ここで落ちていたらもう受けないような。

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