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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

ITエンジニアの未来を開く明るい道とは

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ITに強いビジネスライターの森川滋之です。

エンタープライズ系ITに関するライティングを始めてからもう12年。ライター専業になってからは5年。

その前は、18年半ほどIT業界にいて主に開発、ちょっとだけマーケと営業を経験し、独立してから2年間フリーのITコンサルタントをやっていた。エンジニア、コンサルタント、そしてライターとして32年間、ITに関わり続けている。

その僕が取材などから得た知見でいえば、ITエンジニアの未来は明るいと思うのである。ただし自覚的に明るい分野に携わるのであればという条件付きだ。闇雲に暗い道を歩いても明るいところに出られる確率は低い。それはどの職種でも一緒だが、ITエンジニアに関していえば、「こちらが明るいよ」ぐらいのことは言えると思う。

AIとの出会い

ちょっと長くなるが自分の話をさせてほしい。興味のない方は次の見出しまで飛ばしていただいて構わない。

様々な紆余曲折があった末、2014年に銀行預金がほぼなくなってしまった僕は、就職活動を始めることにした。

当時51歳。覚悟はしていたが条件のいい仕事はない。そこで、それまで執筆でいささかのお金をもらっていたこともあり、ネットでライター募集を探して応募してみることにしたのだった。

そして何とかブックライティングの仕事にありつくことができた。1発目はかなり無茶な仕事だったが無事成し遂げて、しばらくはその出版社からの仕事が絶えることはなかった。

その中でいただいたのが、ある名刺管理ソフトの会社の仕事だった。インタビュー相手の社長は、人格、技術、志のすべてがすばらしい方だった。特にOCRに関しては日本の草分けであり、もちろん第一人者の1人であった。その方から僕は、IBMのWatsonやGoogleの猫について教えてもらったのだった。

僕が大手SI企業であるTISに就職したのが1987年。当時TISはカード会社の仕事をベースカーゴにしながら、一方ではAIに強い企業でもあった。エキスパートシステムでは日本有数だったし、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)に出向して音声認識の研究をしていた先輩もいた。

AIが身近だったからこそ、その後の「凋落」ぶりもよく知っている。花形部門だったAI関連部門からどんどん人がいなくなった。だからAIはもう死んだと思い込んでいた。

ところが先の社長からAIがホットになりつつあることを教えてもらい、夢を感じた。そして半ば戦略的にAI関連の仕事を取りに行くようになった。

1年ぐらいは鳴かず飛ばずで、生きるために不本意な仕事をやり続けた。文学部出身の僕にはAIの仕事など来ないのだろうと諦めかけていた。しかし2015年ぐらいから企業でのAIのPoC(実証実験)が増加し、AIやアナリティクス関連の仕事の依頼が次々と舞い込むようになった。

あれから4年。おかげさまで企業のAI活用については詳しくなった。

マーケティングとの縁

まだ僕の話が続く。興味のない方は、先ほどと同様、次の見出しまで読み飛ばしてください。

僕がマーケティングに関心を持ったのは2003年のことだった。TISで最後にいたのが営業企画部という新設の部門で、その中にマーケティングの機能があったからである。

コトラーの理論をケーススタディで学ぶという研修に参加し、それまでITエンジニアだった私にはあまり縁のなかったマーケティングに触れて、これは面白いなと感じた。

独立したあと、2年ほど企業常駐のITコンサルタントをしていたので、自分のビジネスにおけるマーケティングの必要性は感じなかった。しかしそれでは独立した甲斐もないと思い、結局常駐を辞めた。

2008年春に出版することも決まっていた。出版実績でブランディングすれば仕事もあるだろうと安易に考えていたのだが、まったく仕事が入る気配もない。

2007年から定期的に請けていた事例ライティングの仕事以外に仕事がない。妻からも「絶望ね」と言われる始末。尻に火がついた。

とはいえ、どうすれば立ち直れるか当時の僕には全くわからなかった。いろいろな友人に相談に乗ってもらい、ある友人のつてですがるように参加したのが、今は亡き水口健次先生の最後の研修だったのである。2008年6月だった。

水口健次先生は、多数の著書をものしておられるし、多くの企業でマーケティングのコンサルティングをされている。しかし大衆向けでなく、あくまで企業向けの仕事が中心だったので知る人ぞ知るという方であろう。

先生の2000年代の著書を読めば、今の時代を完全に先取りしていたことがわかる。ものすごい眼力の持ち主だった。僕が本格的にマーケティングに興味を持ったのは、水口先生の薫陶に触れたからだ。

研修の4カ月後、先生は永眠された。最後にお目にかかったのは、8月末のハーレー・ダビッドソン ジャパンのイベントだった。先生にご招待いただいたのだ。

その後、自分のビジネスを立て直すために、貯金がまったくなかったのでクレジットのリポ払いをして、全6回電話相談付きの高額Webマーケティング研修に参加した。そのおかげで何とか食えるようになった。

リーマンショックや東日本大震災の影響で何度か死のうとも思ったが、マーケティングの勉強をしたおかげで(そして妻のおかげで)なんとか立ち直れ、今も生きている。

昨年末に日本有数の広告会社の役員から問い合わせがあり、直接契約で仕事をいただくようになった。そのおかげで最新のマーケティングに関する様々な知見を得ることができ、今も得続けている。その会社の仕事を遂行するために費やした書籍代等もかなりの額に達したが、すべて自分自身の財産となっている。

稼ごうと思ったら

ここまでが前置きだ。読み飛ばした方のために一言でまとめると、この数年間僕はAIとマーケティングを主要なテーマとして文章を書いてきた。その間の数多くの取材をし、文献に当たってきた。

その経験に基づいて以下の議論を展開する。

まず結論を書いておこう。

あなたがITエンジニアとしての経験を積んでおり、そのスキルとノウハウで稼ぎたい、つまり自分の市場価値を上げたいと思うのであれば、金融かマーケティングに関わることだ。

金融業とか広告会社に勤めろという話ではない。もちろんこれらの業界は、いま猛烈にITエンジニアを集めているので転職先はいくらでもある。今より給料が上がる人も多いかもしれない。

だから金融であれば、銀行でも保険でも証券でもいいのだが、いま金融に関してホットな業界を考えると、実は流通だったりする。次世代決済に取り組んでいる多くの企業が流通だ。そうでなければYahoo!やLINEなど広い意味でのWeb広告会社だ。だから金融業である必要はない。

マーケティングはどうだろう。これは古くからある広告会社が今のマーケティング会社の本流だ。マーケティングの4Pというのはご存知だろう。Product、Price、Place、Promotionだ。広告会社は元々Promotionの専門企業だった。しかし20世紀末ぐらいから徐々に業務の範囲を広げ、今では4Pすべてに関わっている。なので広告会社はいまやマーケティング会社だと言える。

その広告会社がいま、ものすごい勢いでITエンジニアを集めているのをご存知だろうか?なぜなら広告会社自身がぜんぜん知られていないと言っているから、おそらく知らない人が多いのだろう。広告会社がITエンジニアを集めている理由をスペースの小さな求人広告ではなかなか訴求できないらしい。

多くのITエンジニアは、広告会社など縁がないと思っているかもしれないが、実はいま狙い目の業界なのである。

だが広告会社以外でもマーケティングのわかるITエンジニアを欲しい会社はいくらでもある。たとえば大手メーカーも喉から手が出るほど欲しがっている。自社のシステムのお守りをするエンジニアではない。それは足りている(現場の人はそうは言わないかもしれないが)。欲しいのは、スマホアプリを企画し、作れるエンジニアだ。

そもそもスマホのアプリとは何か? ほとんどが企業のマーケティングツールだ。あらゆる産業がスマホアプリを提供している中、特にメーカーは力を入れ始めている。商品を売った後に生活者と接点を持つためにはスマホアプリが必須だからだ。

金融もマーケティングもそもそもの狙いは同じだ。企業はお金を稼ぎたい。その直接的な手段として、金が集まる金融と、金を稼ぐためのマーケティングの2つはうってつけなわけだ。

持つべきスキルは文脈で考える

僕は自分の経歴に、AIとマーケティングの話を書いた。そして狙い目は金融とマーケティングだと書いた。金融がなぜ出てきたかと言えば、AIの記事を書いていると、金融についても必ず関わることになるからだ。

だがマーケティングは狙い目と書いたが、AIが狙い目とは書かなかった。なぜか?

AIやブロックチェーンなどホットなスキル系トピックスはいくらでもある。しかし、スキルから先に考えていては市場価値は上がらない。

どの分野から求められているか、そして、いささかいやらしい言い方にはなるが、その分野に金が集まるかが、市場価値を上げるキーファクターになるのだ。

金融もマーケティングも、金が集まる分野だ。だからAIやブロックチェーンといったITスキルに関わる話も、どこに金が集まるという文脈で考えることが、稼ぐという意味では重要になるのである。

その文脈と自分の持つスキル・経験・ノウハウをかけ合わせれば、自ずから自分が最も価値を提供できる分野が見えてくるはずだ。さらに価値を発揮するためには、何を磨けばいいのかもわかるだろう。

仲間と一緒に考えよう

とはいうものの、自分の価値はなかなか自分ではわからないものだ。他人と比較してわかることが多いし、人に言ってもらってはじめてわかることもある。

今はハッカソンなどITエンジニアが集まって切磋琢磨する場も多い。ITエンジニア向けのコンソーシアムなども盛んだ。そういう場に積極的に出かけていくことを強くお勧めしたい。

私もビジネスパートナーと共同で、ささやかながらそのような場を作った。

こんなことを書くと警戒する人も多いかもしれない。「なんだ、長々と書いてきたことは、そのような場の宣伝だったのか。そして高い会費を取ろうというのだろう」と。

だが安心してほしい。飲み会をかねた勉強会なので、酒代などの実費はいただいているが、それで儲けようなどとは、パートナーも私もまったく考えていない。マネタイズの方法などは他にいくらでもある。

むしろこのような場でマネタイズするのはリスクが大きい。全員が成功するなら問題ないが、中にはうまくいかない人も出てくる。成功する/しない以前に、場の雰囲気が合わなくて抜ける人もいるだろう。そうでなくても、うまくいかなった人や合わなかった人が悪評をまき散らす怖れがある。金を取っていたらなおさらだ。

実質無料だからといって手を抜くことはない。参加者をサポートして市場価値を高めることがミッションであることを確認した上で始めたことだし、実際に市場価値が高まった人を輩出することが結果的に我々の利益にもなる。だから本気で取り組んでいる。

今のところは始めたばかりで誰でも参加できるわけではないが(何しろ会場が物理的にせまい。多くの人が関心あるなら無料動画などの手立てを打つことも考えている)、興味がある方は以下の問い合わせフォームからメッセージをください。

http://bit.ly/2YAXqnA

場所は五反田で、平日の夜に今のところ月1回開催している。それに来られる35才以上の方限定となるが、そうでない方も熱心なリクエストをいただければ真剣に検討する。

僕の言っていることに疑問がある、納得が行かないという方の参加も歓迎だ。むしろそのような方と討論することで、自説をより良いものにしたいと考える。


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