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紛争やチェルノブイリとは全く別の顔を持つ多数の天才的IT技術者を輩出したIT大国、ウクライナの真実の姿に迫る。

インタビュー第三弾 ウクライナ有数のITアウトソーシング企業Mobilunity(モビルニティ)、ビジネス開発マネジャーの米国人、アルフォンス・ウィリアムさん(通称アルフィー)氏

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ウクライナ有数のITアウトソーシング企業Mobilunity(モビルニティ)、ビジネス開発マネジャーの米国人、アルフォンス・ウィリアムさん(通称アルフィー)氏とのインタビューです。

Q1: まずアルフィーさん個人についてお聞かせください。なぜウクライナへ来ることを選んだんですか?

私は元々アメリカのワシントンDC出身でDCエリアと米国南部、主に南カロライナ州とアラバマ州を行ったり来たりして育ちました。米国を離れて既に10年になりますが、その間多くの人との出会いがあり人生を変えるような素晴らしい経験を得ることができました。イギリス、イタリア、フィジー、ギリシャ、エジプトなどの国々でも長い間住んでいましたがたまたまウクライナへ来て結局住み着いたのは私が失敗や、混乱、紛争のある地域にこそチャンスがあると考えたからです。ウクライナへ来る前はイタリアに住んでいたのですが、チャンスがある場所だけではなく、自分にとってチャレンジングな場所に住んでみたかったのです。ウクライナは独自の歴史がある素晴らしい場所です。私の意見ではなぜ人がそこへ住むのかの理由はなぜそこへ旅するかの理由に比べ遥かに強いものです。どこか違う、難易度の高い国を探していてそれがまさにウクライナだったのです。しかしなぜ住むことを決めた理由はウクライナの人のポテンシャルが非常に高いことがわかり、コアの部分で似ていると感じ、世界だけでなく自分自身をより深く理解できると感じたからです。

Q2: Ciklum(シクラム)というウクライナのITアウトソーシングの大企業から比較的小規模のモビルニティへ移った理由はなんですか? 前職と比べたモビルニティの利点をお聞かせください。

もっと現場に関わり人にフォーカスしたかったからです。すべての企業はセールスに力を入れるものですが、大企業ほど一社員の影響というのはプロセス、意思決定など会社の企業戦略から外れることは基本的にできません。その戦略というのは市場によっては個人のゴール、性格や信条と相容れないことが多々あります。
私がまだ駆け出しのころ、上司の一人が「自分の職位や職場での序列に関わらず自分がオーナーのつもりで働け」と言ったのを覚えています。自分の課された仕事に対しオーナーシップを常に持つべきだと思います。自分の最適なニッチを見つけ、組織の方向性に積極的に関与していく。自分がPMであろうが、開発者、営業であろうがそれは同じだと思います。自分の意見を持つべきです。しかし大企業ではそのような意思は常にかなえられるわけではありませんでした。
他者と比べての利点ですが弊社はIT開発会社ではありません。弊社は人材ビジネスの会社であり、その人材がたまたま開発者だったというだけです。弊社は歴史は浅く、強力なブランド名はないかもしれませんが、適材適所に人材を配置したり、品質管理の経験、スタッフ、チームおよびお客様とのコミュニケーションに関してはベストなノウハウがあります。それゆえに多くの企業が欲している柔軟さを提供することができると弊社は信じています。既にあるソリューションをそのまま押し付けることはしないのです。

Q3:モビルニティについてもう少し詳しく説明してください。

モビルニティはウクライナを拠点とするニアショア、オフショアの開発チームを提供する企業です。ビジネス開発ディレクターとして、私は営業、マーケティング、顧客エンゲージメントおよび新規マーケット開拓の戦略的、オペレーション的なマネジメントを担当しています。

Q4:御社の一番の売りはなんですか?

弊社の一番の売りを簡単に言うと「人」に尽きます。弊社はニアショアの3Rと言う手法に沿ってビジネスを展開しています。Relationship(関係)、Recruiment(採用)、Retention(従業員の保持)の3つです。優れたプロダクトや素晴らしい営業チームを有しているのに技術的な面で顧客の要望に答えることが出来ない会社はたくさんあります。弊社では顧客それぞれにトップレベルの開発者を有す専属のチームを提供することで開発のさまざまなイニシアチブを推進する助けになればと考えています。

Q5: 今日のウクライナIT業界の強みと今後5~10年の展望をお聞かせください。

強みはいろいろありますが、大きく技術とエンジニアの数の2つが大きいと思います。他の多くの国が質か量かの2択なのに対し、ウクライナは両方を有しています。しかし鍵になるのは適した人材を集めチームをつくることです。今後5~10年で他の多くの国が人材難に陥ると予想されますがウクライナに関しては、人材流出を回避し、ウクライナ国内の成長著しい国際的な企業で働くウクライナ国内に残って働く優秀な開発者がますます増えると予想されます。

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Q6: 外国企業がウクライナに進出するときのリスクとその回避法についてお聞かせください。

主要なリスクはニアショアやオフショアを検討している企業がコントロールできない事柄に関するものです。ゆえに適切なベンダー選定がネックとなります。これらのリスクとしてコミュニケーションの問題(実装後に被害をもたらす可能性あり)、文化の違いつまり意味や声のトーン、主要な人材の流出(プロジェクトの整合性の問題あり)、顧客が知的財産権を遵守したり、その知識に疎い場合のセキュリティのリスクなどが考えられます。
これらのリスクを回避する一番の方法はそれらの知識や技術を有し、企業に必要と考えうる評価システムを有し、ニアショア、オフショアのすべての側面について知っており、営業的により多く売るためによい話だけするのではなく、多くの企業が語りたくない問題も語ることの出来るベンダーを適切に選定することです。すべてのベンダーは犯したミスやそれによって学んだ事柄について語ることが出来るべきです。

Q7:ウクライナとその他の中国、インドやベトナムなどのオフショア開発拠点との違いは何でしょう?

ウクライナは技術スタックが豊富で欧米のメンタリティと近いところがあります。インド、中国、ベトナムなどもいいオフショア拠点かと思いますが、完璧に計画された環境で、かつ順序だてて必要事項を予めしっかりと考えていないとこれらの拠点を活用できない傾向があると思います。開発プロジェクトに詳しい方ならほとんどのプロジェクトはウォーターフォール式にはデザインされないことがわかると思います。よって柔軟性、アジャイル対応が必要なのです。ウクライナのメンタリティはこのような考えに近いと思います。正しいベンダーを選べば、その会社がこのコンセプトに沿っており開発者にも一貫して自分の意見を持つことを要求することがわかると思います。

Q8:ウクライナがEU外にいることはウクライナIT業界の発展にポジティブに作用していると思いますか?

それは間違いないですね。EUはポジティブな面もありますが、たとえばポーランドやハンガリー、ブルガリアなどの開発者はドイツやオーストリアへすぐに行って働くことが出来ます。したがってEU加盟国の東欧諸国は頭脳流出に直面しています。ウクライナはすぐ隣ですがEUのどの国よりも多くの開発者がいますし、ウクライナにとどまっており、ヨーロッパ中に広がっていることはありません。

Q9:日本市場に関して特に力を入れていきたい分野はなんですか?

欧州と極東のギャップを埋める橋渡しをしたいですね。今現在需要自体はあるのですがオフショア開発へ対するアレルギーを克服できればモビルニティがベンダーとして日本企業の皆様へ適切な技術者を提供でき、共にウィンウィンになれると固く信じています。弊社は日本に振るコミットしており、すべてのマーケティング資料とウェブページを日本語に翻訳し、日本カントリーマネージャーの柴田氏や日本語を話せるスタッフを雇い入れ、今年の9月には日本へ行き見込み顧客と面会予定です。さらに市場調査をしたいです。マーケティング資料やSkype電話もいいのですが、実際に会ってお互いをよく知るのがやはりベストですしね。

Q10: ウクライナで日本企業がビジネスを展開する際に一番障害となりうることは何だとお考えですか?

いくつか考えられますが、主なものとして地理的な距離、言語、文化そして信頼があげられると思います。距離は十分解決可能です。今日のグローバル化された世界では6時間の時差はテクノロジーによって解決可能です。言語に関してですが、IT業界では多くの会社が中級レベルの英語を使用可能で、その場合は言語の問題はボトルネックにはなりません。文化の問題ですがこれはアメリカだろうがベトナムだろうが国々の距離とは関係なしに起こるものです。この問題に注意を払っている人々を雇えるか、そしてそれを乗り越え、関係を築けるかが鍵になります。それが出来れば時間と共に信頼も勝ち取れると思います。

Q11:今後10年のIT業界で一番伸びると思う分野、技術について教えてください。

多くの人がAIや機械学習、IoTなどの分野での発展を予想しています。10年後には何か新しいものが世界を嵐のように席巻していると予想します。しかし変わらないものもあり、それはたとえば優秀な開発者です。世界は多くの業界をまたぎ企業間でもよりお互い緊密に関わっており、開発者に頼る場面が多々でてくるでしょうし、ローカル市場だけでは解決できない問題も多くなることでしょう。よって日本のような国から多くの企業がウクライナなどのオフショア市場との提携可能性を探るようになることでしょう。

Q12: 最後に休日何をして過ごしますか?お聞かせください。

常に自分をアクティブに保つようにしています。ジムへ行ったり家族や友達、犬と過ごしたりです。私はアメリカン・フットボールのキエフ・パトリオッツ(2018年のウクライナ優勝チーム)のコーチでもあるので昨年に続き今年も優勝を狙って頑張っているところです。何もしないで過ごすことはあまりなくいつも自分を忙しくすることが一番のストレス解消法だと信じています。
ありがとうございました!
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