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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

進出形態は?- 日本のコメ・ご飯・おにぎりを欧州で売る(3)

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ロンドンには多くのアジア人がいる。東京にいて考えると、日本から出て海外で稼ぐという発想はあまり理解できないが、インド、パキスタン、バングラデシュの南インド諸国はもとより、中国本土からも多数の若者が職を求めて英国に行き着いている。優秀な人は、英国の大学を出て、英国の企業に勤め、そこで経験を積んで、次のステージを目指す。
東欧からも多数の若者が来ていた。中東からもそうである。彼らは、ロンドンやその他の都市で職を見つけ、為替レートが強いポンドで稼ぐ。

韓国でも、大学を卒業した女性の働き口は少ないようで、ロンドンのゲストハウスで職を見つけた事例を2件見た。人材が国境を超えるのが当たり前になっている時代の一部を垣間見たように思う。

長く宿泊していたロンドンのゲストハウスでは、英国の大学を卒業した後に、金融系企業が多くあるバークレー・スクエアの金融ファンドに勤務し、その後、健康食品で起業したという、やり手の中国人女性と仲良くなった。一児の母であり、ワークアウトに熱心な上昇志向の強い起業家である。

彼女から日本の料理・食材がいかに優れているか、何度も講釈を聞かされた。

日本食は、ロンドンではかなりファッショナブルな食べ物である。寿司、ラーメン、枝豆...。枝豆は脂肪分がなく、たんぱく質と食物繊維が多いので、日本食レストランの定番サイドディッシュになっている。日本の居酒屋で出てくる枝豆ではなく、たとえて言えばイタリアンで出てくる名前を覚えにくい野菜のサラダという位置づけ。ラーメンの高級店もロンドンの中心地にある。

ロンドン中心部の地下鉄駅界隈で目立つのが、Wasabiという名称の持ち帰り&イートインの寿司・弁当チェーン。店舗のデザインがスマートなので、若い女性に大いに受けている。しかし残念ながら日本人の経営ではない。客単価は10ポンド(1,500円)どまりというところ。
wagamamaという変わった名前の日本食レストランもかなり目につく。こちらも若い世代が入りやすいカジュアルでモダンな店舗デザインで、メニューは若年層でもオーダーしやすい価格帯。各種の凝ったラーメン、カレーライス、焼きそばなどがファッショナブルないでたちで出てくる。客単価は15~20ポンド(2,000~3,000円)。ロンドンの外食では当たり前なのだが、ボリュームは多い。日本の1.5~2倍ぐらいの量で出てくる。こちらも日本人の経営ではないそうだ。

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日本食カジュアルレストランwagamamaの店内とメニュー。

双方の店で出されているものを食べてみると、残念ながらご飯の中身が、日本で言う「ご飯」にはなっていない。日本人ならば誰でもわかる。日本なら、炊飯器で炊いたごく当たり前のご飯のレベルが、どのような外食店舗でもキープされているが、残念ながら、それを下回る。ご飯ではない...のである。

これは、ご飯を作っている人が(炊いているとは言えない)、日本の炊飯器のおいしい炊き立てご飯を知らないからである。wagamamaで一度厨房を覗いたことがあるが、日本人らしい人は一人もいなかった。民族のるつぼであるロンドンの縮図のように、様々な人種の人たちが厨房で働いていた。
ゲストハウスでwagamamaの調理人をやっている若い男性と一緒になり、話を聞いたことがある。ご飯は、オーブンで調理するのだと言う。なぜ、炊飯器を使わないのか?と言うと、時間がかかるからだと言う...。

つまり、食文化が違う人たちなので、おいしい炊き立てご飯を経験したことがなく、Steamed rice(蒸したコメ。ご飯の英語名称)を調理するのはこういうことだという感覚で、コメを鍋に入れてオーブンで煮ているのである。(おそらく、炊く、という意味の動詞がないからだろう。Steam=蒸すという動詞はあっても。)もっとも似たようなことは外国からやってきた様々な食材で、日本人もやっているのだろうけれども。例えば80年代以前のナポリタンスパゲティがそうだ。

そこが、日本で、コメ関係で、海外進出を考えている企業の狙い目だと思う。

ものすごくストレートに言うと、欧州では、誰もおいしいご飯を食べていない。そこが狙い目である。

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おそらく韓国系の経営者によるWasabi。

日本のコメ関係の中小企業が、非常に大きなポテンシャルがある欧州の「おいしいご飯」の市場に進出するには、次のような発想が不可欠だと思う。

・最初の1~5店舗は、出店コストが最小で済むやり方を見つけること。仮に失敗したとしても、損失が大きくならない形での進出を心がけること。

・ポイントは「日本のコメ」を売ることではなく、日本で普通に食べられる「ふっくらとした、炊き立てご飯のおいしさ」を売ることにあると、発想を切り替えること。「日本のコメ」だけでは、まず売れない。

・コメを炊いて、簡単に調理して、すぐその場で売る業態で、かつ、ロンドンのファッショナブルな日本食を好む層にも受ける、スマートさが不可欠であること。

・事業を構想する以上は、米国のマクドナルドやスターバックスのような、世界的なチェーンになった業態にも「なり得る」要素を組み入れること。すなわち、売れ始めた際には、スケールしやすいような事業モデル、店舗設計、メニュー開発を心がけること。

ここから導き出されるのは、間口が狭い店舗で、炊き立てのご飯を使ったおにぎりを売る業態ということになろうか?

ロンドンでは「スシ」という言葉は、高級な食品であり、カジュアル店舗では大変にヘルシーな食べ物として定着している。脂肪分が少なく、具によってはタンパク質もあることから、定常的にダイエットを行っている女性に、上述のようによく食べている。wasabiのイートインで食べていると、ファッショナブル&ヘルシーという視点で、持ち帰り寿司のパックを買い求める複数の女性を見ることができる。

一方で「オニギリ」という言葉は、ほとんど認知されていない。「ベントー」はかなり普及している。

おそらく、欧州の人から見れば、「スシ」と「オニギリ」の違いは、全然わからないだろう。なので、オニギリを売る際に、「オニギリ」とネーミングしただけでは、言葉の説明にマーケティングリソースがたくさん必要になり、得策ではない。

ネーミングとしては、「スシ」が、ものすごくたくさんの人に認知されていることから、「スシ」を頭にかぶせた「スシ・ニギリ」的なネーミングが、市場獲得のためにはいいのではないかと考える。日本人の感覚で多少ヘンな言葉でも、あちらの方に強く認知される言葉が望ましい。「スシ」の延長線にある、日本の食べ物という位置づけが、これだとよく伝わる。

さて、本稿が提供できる素材はここまで。あとは意欲ある方々がどしどしチャレンジしていただきたい。海外旅行が安い金額でできる時代になったのだから、まずは自分の目で見に行く、ということから始めてみるのがいいだろう。

できれば、10日程度ロンドンに滞在して、キッチンのある宿で、現地の食材を買って料理しながら経験していくと、なおよく現地の食事情がわかってくるだろう。日本食材の入手しやすさと価格。現地で好まれている価格帯。ハラルやビーガン向けの商品、などなど、日本にいるだけではわからないものが見えてくる。
東南アジア主要都市の日系外食が飽和しているように見えるいま、欧州に出て行くよいチャンスだろう。日本人の細やかさがあれば、必ず成功できると確信しております。

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