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IT業界につとめる「雑貨屋(なんでも屋)」が、業界の事、情報セキュリティの事、趣味や日々雑感を綴っていきます。お暇な方はおつきあい下さい。

035.【雑感】価格競争-ツアーバス事故で考えた事

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 梅雨明けも、もう間近なのでしょうか?

 仕事の方もヒートアップしていて、なかなか多忙な状況から抜け出れませんが、フリーランスに近い私としては、この状況も有り難い物だと実感しています。

 佐藤@IT雑貨屋です。

 人の噂も七十五日。以前はテレビをつけると関越自動車道で発生したツアーバスの事故に関する話題ばかりでしたが、最近では忘却の中におかれ始めている様に感じます。まあそれだけニュースというか、社会情勢も激しく動いているという事でしょうか。

 このニュースが騒がれていた時、一連の報道を見ていて考えた事を少し書いてみたいと思います。まあエンジニアの戯言だと思い、読んで頂ければ幸いです。

 この事故について、多くの論評を見てみると以下の様な事でした。

 ・規制緩和によるバス業者の新規参入の増加
 バス事業は平成12年に免許制から許可制に大幅な規制緩和が実施され、その結果、貸切バス事業者の数が増大したそうです。今回の事故を起こした「陸援隊」もこういった増大した貸切事業バス会社の一つでしょう。実際に規制緩和後に新規参入したバス事業者の七割がこういった保有車両台数が10台未満の小規模事業者であったそうです。

 ・価格競争に伴う、バス運送賃金の下落
 この価格競争については、近年はじまっている「デフレ」によるものだそうです。まあ利用者の立場から言えば、やはり値段は安ければ安い方が良いという事もありますが、今回事故を起こしたツアーでは、金沢~東京間で一席3,500円という価格設定であったそうです。今回のバスでは定員が53人であったそうなので、単純計算すると1回の運行による売上げは185,500円。距離は510キロと想定した場合、観光バスを動かす為に120円/キロの経費がかかるという事ですので、61,200円となりますので、結果1運行での利益は123,800円となりますが、ここから高速道路代などや、当然の事ですがバスのリースなどを差し引きすると、けして潤沢に利益の出るものではありません。

 ・賃金低下による労働環境の劣化
 本来であれば、あまり安すぎる仕事というのは断ればいいのでしょうが、先にもあった新規参入が多くあるという事は、仕事の取り合いが激化しているという事になります。この結果、どうなるかといえば当然の事、価格競争に突入し、多くの小規模事業者は例え原価割れしても、仕事が無いよりもマシとばかりに、形振り構わず仕事を取りに行く事でしょう。そしてそのしわ寄せは従業員である運転手にも直撃する事になります。

 ・そして発生した今回の事故
 会社として形振り構わず請けた仕事であっても、そこから利益を上げなければいけません。そうなると一番先に削減するモノとしてあがるのは「人件費」です。今回の事故においても、2人の運転手をつければ良かったのかもしれませんが、やはり経費削減の事もあって1人で乗務をさせてしまい、結果としては居眠り運転から事故が起こってしまった。

 今回の事故を受けて、国土交通省としてはバス事業者のあり方を再度検討しはじめるという話もありますが、一度値崩れしてしまった業界というのは、それを戻す事はなかなか難しいと思いますので、そう簡単にはいかないのでは無いでしょう。

 私の周囲の知人でも、東京から大阪に移動する手段としてこういったツアーバスを利用している人もいますが、やはり収入が減少している昨今の状況では、正直安いというのはありがたいものです。そういった事を考えてみても、やはりこの「安値路線」という状況を戻す事は大変困難なことだと思います。そうなると今の価格相場の中から利益を上げるモデルを考えない限り、この問題を根本的に解決する事は出来ないのでは無いかと思います。

 私の父親はバスの運転手をしていました。
 昔は「バスの運転手は一生安泰」と言われていたらしく、父親もそれなりの収入を得ていましたが、今から考えると隔世の観があります。

 こういった状況は何もバス業界に限定されている事ではなく、今や日本社会の全体に広がっている状況です。
 私のいるIT業界も構造的にはまったく同じ状況で、過去システムエンジニアやプログラマはそれなりに収入を得られる仕事でしたが、いまや仕事の厳しさと比較しても低賃金な業種の一つに数えられています。

 IT業界の賃金低下のきっかけは、私の知る限り技術の標準化があります。標準化により以前の様な「職人技」は必要なくなりました。

 以前では、システムを開発する時にはエンジニアの持っている技術力に依存する部分も大きく、エンジニア「腕を奮う」というシーンもあり、簡単に言えば技術力をもってエンジニアの価値を示す場面も多くありました。

 しかし最近では開発環境も整備され、エンジニアは提供されたパーツを、短時間に効果的に組み合わせる事がメインとなり、簡単に言えば「職人技」は必要なくなり、どちらかと言えば短期間に機能をコーディネートする能力が求められている様になっています。つまり「属人的」なものから「標準的」へとシフトをしたということでしょうか。

 この標準化をしたということで、つまりエンジニアは特殊な技能職では無くなったという事です。
 そしてシステム開発は、他の製造業とは違い、開発に要する費用の殆どは「人件費」ですが、この標準化された状況で海外から低廉な人件費で同様の開発を行えるエンジニアが国内にも流入したり、最近ではクラウドというキーワードで作業をする場所も国内に限られなくなり、容易に海外に案件も流出する状況が発生しています。

 こういった状況では、国内のSIerなども海外のベンダと同じ土俵で戦う場面も増えるので、結果としてエンジニアの賃金も低廉下してしましました。だから国内のシステム開発の会社も、海外(中国やインドもそうですが、最近ではベトナムも見えてきています)の会社と価格面で勝負する事を求められています。

 こういった「価格破壊」から、やはりシステムにおいても様々な実害が過去に表面化した事もありました。
 有名なところでは、以前にJR東日本で発生した改札システムの大規模なシステム障害で、この場合、原因は数ステップのコーディングミスが原因であったそうです。昔はシステムと言ってもコンパクトなものが多かったのですが、最近ではネットワークに接続するのは当たり前で、システムは高度化しより複雑化しています。
 以前であれば開発や評価試験でも、それなりに人件費をかけられたと思うのですが、やはり費用が絞られた結果の一つとして、こういった現象も起きているのではないでしょうか。

 そんな状況なので、もう過去の様に「人月ビジネス」だけで会社を以前の様に存続させることも困難になってきているのかもしれません。

 そうなると、日本のシステム業界はどの様に生き残りを掛けて行けば良いのでしょうか?
 この点について、明確な答えを持ち合わせている企業は、そう多く無いと思います。

 答えのない記事ですが、今後もIT業界を生業にしようと私は考えていますので、日々悩み続けていたりします。

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
 IT雑貨屋を、これからもよろしくお願いします。

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