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プロとアマチュアの違い ~私がプロカメラマンになった日~

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お金を稼いで写真や映像を撮る人のことをプロカメラマンと呼ぶとしたら、私はアマチュアカメラマンだったという経歴がなく、いきなりプロになりました。(もちろん足としてこき使われたことはあります)

写真の学校を出たわけでもなく、写真部でもなく、そもそも自分の一眼レフカメラすら持っていなかった大学卒業時の私は、たまたまカメラマンが絶対的に不足しているプロダクションに入社し、ディレクターをやるつもりがいきなりのコンバート対象にされてしまったのです。(たぶん同期の中でもっとも頭と態度が悪かったんだと思いますが・・)

ひょっとしたら随分と幸運だったのかもしれません。
が、なにせ写真のことなんか何も知らないド素人が、半年にも満たないアシスタント経験だけで、いきなりテレビ局の現場に放り出されたのですから、ずいぶんと方々に迷惑をかけました。
デビュー当時はスキル的には学校の写真部員程度か、もしくはそれ以下だったと思います。
勉強しておけばよかったのですが、当時の徒弟制度下では、アシスタント時代は寝る時間を確保するだけがやっと。
現場でも隙間があれば寝てました。

そんなわけで、最初の2,3年はとにかく視聴率の高い番組でカメラをふらせてもらうことだけが目標で、そのために綺麗な映像を撮ろうと、毎日いい写真を100枚見て何がいいのか考えるとか、そういうことをしながら構図や色配列を覚え、照明は現場で見て覚えして、一応その会社の大事な仕事(と、逆にいろんな意味でひどい現場)に呼ばれるカメラマンになったわけです。
当時は、ディレクターが好きそうな映像、そして視聴者が「おおっ!」と思ってくれる映像を撮ることだけ考えていました。

そもそもディレクター志望として入社した私は実はドキュメンタリーが作りたかったので、カメラマンとしてもやっぱりドキュメンタリーが好きでした。実際にはドキュメンタリーの現場なんてそうそうはなくて、撮り方だけは似ているけど精神性は正反対のワイドショーで指名が多かったのですが・・。

ある日、短いドキュメンタリーを撮る機会に恵まれました。
その番組は、子供を持つ親に向けた教育色の強い番組で、番組の目的は子供の病気への理解を深め、偏見をなくすことを目的としたものです。

病名は小児糖尿病。情報がたくさんある今ではそれほど珍しい病気でも無くなって来ましたが、20年前の当時の私は「不摂生した子供がなるものか?」という番組のターゲットそのものと同程度のひどい認識でした。
撮影していくうちに、子供たちがそういう偏見で世の中から見られ、とてもつらい思いをしていることが次第に分かって来ました。
(ちなみに小児糖尿病は生活習慣病ではなく、生来の体質やウィルスによるもので生活改善では治りません。今では生活習慣病の2型と区別して1型糖尿病と呼ばれます)

それとともに、だんだんカメラを向けるのが辛くなって来ました。

もちろん、病気や番組意図についてのインプットは撮影前にディレクターからもらうのですが、あくまでそれは例えば皇室関連取材をする場合の撮影緒注意事項と同列の感覚でした。

撮影は、子供たちの合宿の追っかけでした。二日間にわたって撮影するのですが、食事内容以外は普通にはしゃぎ、まじめに勉強している彼らが人と違うことをするのがインスリン注射です。そのときは確か一日2回だと思います。
番組の目的は病気への偏見をなくすことで、子供たちに注射は必要で、それは本人のせいでそうなったのではなく、また伝染したりする病気でもないということを伝えなければなりません。

なので、カットとしては必要です。
が、一回目の注射のシーンは全くカメラを向けることができませんでした。

アマチュアならやめればいいです。万が一撮ったとしてもそれを何万人も観ることはないでしょう。

ディレクターに指示を仰ぐと、「自分でコミュニケーションとってね。任せる!」でした。
一晩いろいろ考えました。撮られる子はどういう気持ちか、どう撮ったら納得するか、番組を観た人はどう思うか。
ローカル番組ですから、家族も友人も近所の人も観る可能性は高い。その場合どう思ってその子にどう接するか。

説明的に撮るのか、叙情的に撮るのか?サイズは?長さは?構図は?顔の入れ具合は?
随分考えたことだけは覚えています。どう撮ったのかは正直忘れました。
ただ、子供にはどういう目的で、どう撮るか一人ひとりに説明してから撮りました。


お金を取るのがプロかもしれませんし、技を持っているのがプロかもしれません。
だけど、私はプロカメラマンは、写真(映像)という手段を使って世の中を変えようとする人のことだと思います。
今から思い返すと、この日を境に自分はプロになったのではないかなと思ってます。

スキルが多少劣っても、経験が短くても、被写体と見る人のことを考えて、世の中への影響も考えて撮る人はプロだし、どんなにうまくても何のために撮るのかわからない人はアマチュアです。
プロがプロであることを忘れた時に、撮ってはいけないものを流したり、物議をかもしたリ、心ない撮影をしてしまうのだと思います。

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